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戦争への招待状

 露店を開いた翌日。ダンジョン潜りをし、ギルドに帰って来るとギルマスに捉まった。


「リトさん、指名依頼です」

「誰からですか?」


 相変わらず指名依頼が多いな。だが今回はギルマスの雰囲気からあまり良い感じはしないな。


「準二等軍爵コーラル・セテッシュ様名義で来てますが、実質領軍ですね」

「コーラル・セテッシュ。確か今回の領軍司令官だったか」

「はい」


 準二等軍爵コーラル・セテッシュ。領軍での階級は一等将。

 ここの領軍は一番が領主、二番が将軍、一等将は三番手に当たる。今代のここの領主はほとんど参戦した事が無く、大抵は将軍か一等将が戦争の指揮を執る。


 ちなみに、準二等軍爵の準は二等では無く軍爵に掛かっている。

 爵位には大きく二種類あって、公王が任命した爵位持ちと、その爵位持ちが任命した準爵位持ちがいるのだ。

 準爵位は爵位持ちの効力が及ぶ範囲内でしか効力が無いため、他の爵位持ちに比べ劣るが、任命した爵位持ちの格や力関係で変動するため参考程度。

そして爵位持ちが準爵位について自由に決める事が出来るため、人によっては金で買えたりもする。事故や災害、戦費に浪費癖。金の入り用はいくらでもあるからな。


 軍爵は君主や爵位持ちに対して軍事関係で特記な活躍をした者に与えられる爵位で、一代や世襲等もある。


「内容は?」

「直接指名です」

「うへぇ」


面倒な。

 指名依頼には直接と間接の二種類あって、俺が普段捌いているのは間接指名依頼に当たる。

 違いは端的にいうと依頼主と請負人の間にギルドが挟まるかどうか。挟んだ方が互いに面倒が少ないため安定する。


「うへえじゃありません。泣きたいのはこっちですっ!」

「俺に当たらないで、あっちに言ってくださいよ」


 直接指名依頼はギルドが挟まらない。つまり、ギルド側に落ちる金が殆ど無いのだ。だから、社会的上位者からか真の意味でギルドを通さない個々人間でしか直接指名依頼は成り立たないのだ。

 大きなギルドなら数人がそういう状況でも問題無いだろうが、ここは零細で、今回の依頼多分長期だろうしで泣きが入っているのだ。



 翌日指定された北区の駐屯地にやって来た。

ヴィーゼヌ領の大概の兵士はここで新兵となり、各詰所へ配属される領軍の心臓部である。頭は中央区にある。


 門番に取次ぎを願い、待っていると見覚えがある者が門番と共に歩いて来ていた。


「久しぶりだな」

「クズサ一等曹。ええ確かに久しぶりです」


先の依頼で二十五班班長だったクズサ一等曹は、どうやら帰還組だったようだ。


 クズサ一等曹に促されるがまま庁舎内を歩き、事情を聞くにどうやらこの人が俺を上層部に推薦したらしい。



 到着した応接室でしばらく待っていると、壮年の兵士が入って来た。肩マントの着用は確か三等佐以上。実質の依頼主か受けた場合の上司だろうか?



「パッソルト総合請負人ギルドのリト。依頼の用件を伺いに来ました」

「新準四等軍爵ゼーテッシュ・ラインバン二等佐である」


ほぉ、新進気鋭だな。

 領軍の上の方の席は世襲みたいなものだ。


 新は一代という意味で、つまり成り上がりを意味する。場所によって制度はまちまちだが、ここヴィーゼヌ軍だと三等佐以上は地爵家所縁の者か世襲の準軍爵家所縁の者で殆ど占められているため、それを押しのけて座るとは中々の傑物という事。それにまだ若いし、後々新がのくかもしれんな。


「仕事を依頼する。詳しい内容は受諾確認後に話すが、報酬は300ティカは約束しよう。無論物資についても面倒をみる」


300ティカ。この都市での単純肉体労働以外の一般的な勤め人の年収程度。それに食糧や道具の面倒までみてくれるという事はほぼ丸々利益か。


「期間を伺っても?」

「最大でも軍勢同士の衝突が終わる頃を見積もっている。推測になるが今日から四、五十日といったところだ」


期間は四、五十日。報酬からいって野戦前に殆ど役目が終わる敵対国への諜報や妨害に類する依頼だな。


「なるほど、つまり他の者とは別行動だと。では任務地については伺っても?」

「それは受諾後話す内容に含まれる」


「・・では、その任務中の同行者はいますか?」

「ふむ。・・もちろん部隊に所属して貰う事にはなるが、作戦行動中は一人で動いてもらう事になる」


同行者無し。つまり奇襲の類では無いという事か。


「最後に一つ。作戦行動中のやり方はこちらに一任してくれるんですよね」

「大まかな指示に従えばあとは好きにしてもらってかまわない」


「そうですか。ではその依頼受けます」


 室内に漂っていた微妙な緊張感が緩んだ。


「ほぉ即決か。中々思い切りが良いな。では今から依頼内容を話すが、口外無用だ」


そう言い、今回の依頼内容を語り始めた。




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