俺達を取り巻く環境
「あら。お帰りなさい」
「ああ、ただいま。じゃ」
ウリスタニアに帰って来た。大体六十日離れていたな。
「待ちなさい」
ギルマスに顔見せだけして、食事処へ行こうとしたら何故かギルマスに止められた。
「何ですか? 久々にマスターの飯が食いたいんですが」
「あなたつまみしか頼まないでしょうが。こほん、それで用件ですが、リトさん今回は報告書をあげてください」
「うへぇ」
「うへえではありません。リトさんが受けた招集に端を発した依頼、途中で打ち切りとなって、人によってはそのまま参戦する運びになっていると聞いています。だから帰って来る人少なそうなんです。ですから帰って来た人には報告書の提出が強く求められています」
「へーい。ただ最初の方、日付け曖昧ですよ」
「そこまで期待していません。これは不当な報告のせいで、不当に低い報酬となる者を減らすために書かれる報告書ですから。ですから自分だけではなく周りの者の様子や仕事ぶりをただ淡々と書いていただければ十分です。脚色は要りません。あとでこちらが要約、清書し、提出して貰った報告書と一緒に連盟に送りますから」
「全く面倒なものだ」
「それはそうとリトさん、どうして帰って来たんですか?」
「何か胸の辺りにぐさりと来るセリフが聞こえたな」
「ああ、いえ、そう言う事では無くてですね。リトさんの事ですから参戦しないまでも帰って来るのはもっと先だと思ってました。なのに確か、依頼終了の通達が来たのが、・・・十日程前ですね。それ程で帰って来るなんて奇跡の様なものです。もしかして私の顔を早く見たいがため帰って来たんですか?」
「うん? あーはいはいそーだね」
「あっ、投げ遣りっ」
ギルマスとの話も終わり、食事処で久しぶりのここの魔水を味わい、アイリーンさんに報告書の書き方と必要事項の確認をし、再び食事処に入り、端っこの席で報告書を書き始めた。
戦争。
俺達が暮らすリーメイ公国は年に、もしくは数年に一度の頻度で戦争をしている。相手国は毎度お馴染みで、東にある『ピットヤーグ王国』。
そのピットヤーグ王国とボーグ山脈北側で接している。ヴィーゼヌ領東も接してはいるが、東部砦より東に広がる大森林によって分かたれているため行き来は困難。
だからボーグ山脈北側が戦場となる。
戦争の理由は・・・無い。
正確にはもちろんあるのだが、このリーメイ公国にある、というより、宗主国の『アーリア王国』の方にあるのだ。
アーリア王国はリーメイ公国と同じ言語や貨幣を持つ、公国の南にある大国だ。そしてこのアーリア王国はピットヤーグ王国の宗主国である大国『ファルクス帝国』と争っているのだ。
そしてボーグ山脈北側がこの二つの大国間の迂回路となるため、主戦場でアーリア王国とファルクス帝国が争っている間、ボーグ山脈北側で睨み合っているのだ。
つまり、リーメイ公国とピットヤーグ王国は宗主国の意向で戦争を行っているのだ。だからやる気なんてあるはずも無く、テキトーにわぁーってやってテキトーにわぁーってされてを何度か行って終わりだ。
下手に均衡を崩せないからな。均衡を崩したければ主戦場の方に参戦するのをお薦めする。
そしてアーリア王国とファルクス帝国が争っている理由は、主義の違いだ。
ファルクス帝国は【真人族】至上主義を掲げ、世界に覇を唱えるべく動いている迷惑な国で、周囲には敵対国と属国しかない。
真人族を第一国民とし、いくつかの種族を第二国民、その他を第三国民とし、第三国民を消耗品扱いする統治方法を執っている国だそうだ。
対してアーリア王国は人種皆大体平等主義を掲げる国で、大体真っ向から主義が異なるため争っているのだ。
俺はアーリア王国と主義を同じとするリーメイ公国生まれなので公平性に欠けるが、やはりファルクス帝国の統治方法には憤りを感じてしまう。
報告書を書きつつ、そんな事を考えていた。




