骨休み2
何だかんだ骨休み?な日を二日過ごしムルバールを発った。
悔しい気もするが、俺にはいつもより豪勢な宿は合っていないみたいだ。
行先はとりあえず北、ボーグ山脈。
ワイバーンの干し肉作りのためだ。先の依頼中は全く干し肉が作れなかったからな。
ワイバーンは討伐ランク3に達し、本来なら格上なのだが俺とポクーは有翼大型飛行モンスターに対して相性が良いので、とりあえず逃走に関しては問題なく、多分一?対一なら何とかなると思っている。
セリーヌ湖を横断し森を北上しながら、双眼鏡を覗いた。
「流石の密度だな」
双眼鏡の先に見える光景は、まさに巣窟といってもよかろう個体数が山脈南の森林地帯で狩りをしていた。
ただ、俺がすることは至って簡単。あの集団の中から離れた個体を探し出し、隙を見付けて狩るだけだ。
「あれにするか」
集団の端の更に端に一匹のワイバーンが飛んでいた。ただその飛び方は獲物を狙う時の飛び方をしているので、運が良ければ更に集団から離れるだろう。
そこをやる。
ポクーに指示をだしそのワイバーンに近寄って行った。
そんな手順を三回続け四回目、良い感じに一匹のワイバーンが集団からどんどん離れていっている。
ワイバーンは基本的に獲物を狩ればその場で食べるため、そこを狙う。ただ、今は子育て時期で、子育て個体は獲物を巣に持って帰るので運が絡む。
運良くこの四匹目は獲物を仕留めた後食らい始めた。
ゆえにゆっくりとだが確実に近付き、ワイバーンの真上に到着すると、そこからポクーに落として貰った。俺は今さっきまでポクーの中に埋まって双眼鏡で辺りを探っていたのだ。今は槍を持ってるがな。だから上から見ても俺の存在は見えず、ただのミニメソにしか見えないという訳だ。
ポクーは乗せるも乗せないも、止めるも貫通させるも自由が利く不思議な体の持ち主なのだ。
「まっ、こんなもんか」
解体包丁片手の俺の目の前には、背中側の首の付け根から腹側にかけて貫通した槍と背中側の皮一枚で繋がっている首を持つワイバーンの亡骸が横たわっていた。
ランク3とはいえ飛行加味でのランクだから不意を突けばこんなもんだ。それにけっこう軟らかかったな。
「ポクー」
手早く翼を切落とし体部分に乗せ、ポクーを呼び寄せると、ポクーが下りてきてワイバーンの亡骸を覆いだした。
そして亡骸を覆い終わると、俺もポクーの中に潜り込むと帰投を命じた。
「さっ、帰るぞ」
流石にこの場で解体するのは難度が高すぎる。だからポクーで包んで危険地帯から離脱するのだ。
ワイバーンは俺の数倍の大きさを持つが、ポクーにしたら大した違いは無い。
包み込むと、ワイバーンの血でポクーが真っ赤になりそうと思うかもしれんが、実はそうはならない。
何というのか、ポクーは固形分は殆ど吸わないので、泥水等を吸わした場合も吸った表面にちょっと乾燥した泥が溜まり、その内泥が乾燥して風で飛んで行ってしまうのだ。だから血液も真っ赤なドロドロが表面に残り、ポクーの中には透明な水が吸われるっぽいのだ。だから包み込んでいる間は外から様子が見えない。
全く俺の相棒は不思議なもんだぜ。
狩りを終えた俺達は森林地帯を南下し、セリーヌ湖近辺まで帰って来た。
「あの漁村に下りようかな。流石にこいつを一人で解体するのは骨が折れる」
漁村に降り立つと、畑で作業をしていた村人に質問し、この村の村長宅を訪ねた。
「それで旅人殿。この村に何用かな?」
「はい。実は少々大物のモンスターを仕留めまして、誰かに解体を手伝って貰えないかと、この村を訪ねました。村長さん、誰か手の空いている者を紹介して頂けませんか?」
「ほぉ、大物ですか。この村に猟師はおらんが、幾人か見繕えるのぉ。して何を仕留めんじゃ」
「ワイバーンです」
「ほほ、ワイバーンかの。・・・・・ワイバーンっ!」
狩った獲物を聞き、驚いた村長の呼び掛けに、村中の者が集まりワイバーンの解体と相成った。こんなに大ごとにするつもりは無かったんだがな。
そして俺は、村人が寄ってたかって解体しているのを眺めつつ村長と話しをしていた。
「肉以外の半分を譲って頂けると」
「はい。手間賃としてお納めください。・・それと話は変わりますが、この辺は戦時体制に移行しましたか?」
「先日通達がありました。分かっていてもやり切れません」
「ふむ、なるほど。なら足一本もお譲りしましょう。徴兵される者に優先的に食べさせてやってください」
村人総出の解体が終わると、手早く肉を塩漬けし、村を後にした。




