水枯れを救え6
二日目も散水作業開始し、それなりの時が経った時、
「!?・・・切られただと」
ポクーがそう伝えて来た。
「・・・ポクー、何に切られた?」
あの川、実は何か大型の奴潜んでたのか?
「はぁ!?人だとっ!」
「リト殿どうした!?」
近くにいた兵士が俺に訊ねて来た。
「俺の相棒が誰かに切り付けられたみたいです」
この話は瞬く間に班長に伝わり、班長やその他数人が連れ立って切り付けられた場所。あの給水をしている川辺へ向かった。
川辺へ向かっているその途中、兵士の一人がこちらへ走って来ていた。
「班長~!」
「コアトか。一体何があった?」
あの川辺に配置してきた兵士の一人コアト二等士は俺達の前まで走って来ると、事の顛末を告げて来た。
顛末を告げられた班長は目頭を押さえうなり始めた。
俺もその内容に少し頭にきている。いくら俺の相棒がちょっとやそっと、体中矢で穴だらけになったり、まるで野菜の千切りの様にしても裕に生きている実は不死身何じゃないかと思う俺の相棒だとしてもだ。
その後班長がコアト二等士に拠点への伝言を告げ、俺達は川辺へ向け再び進み始めた。
「リト殿。私の配慮不足だった」
「いえ、班長のせいではありません。皆余裕が無いのは分かりきっていた事。少々目立ち過ぎたようです」
川辺に到着すると、その場には一人置いてきた兵士を始め、ここに居た十六班の兵士に請負人、ここの兵士と請負人、村人達がわんさか集って揉めていた。という訳では無く、人自体はあっているが代官が出て来ていて既に場は収まっていた。
そしてその代官の傍には三人の男達が兵士に引っ立てられていた。
「ふざけんなぁーー!!!あんな奴等に助けなんか必要ねぇ!ここはクリアディアの国だぞっ!!」
取り押さえられている男の中で一際体格がいい男が兵士に押さえつけられながらもそう代官に叫んでいるのが聞こえた。
そして集まった村人数人が賛同の声を上げ、収まっていた場が盛り上がり始めた。ここの領軍の者達は押さえているがあまり連れて来ていないのか数は村人が圧倒的に多く、押さえ切れていない。
「なんですかなぁ!これは!」
漸く件の場所に到着した俺達、そして班長がまるで役者の様な胡散臭い大声を上げ、集った者達の注目を集めた。
「おおー!!これはクズサ殿!良い所に!ささ、こちらに」
代官も追随する様に大声を上げ俺達を招き入れた。俺達の登場に場の盛り上がりは消え、一応の小康状態といった感じになった。
「カザヴェル殿。此度の事についてお伺いしても」
「うむ。私も最初から見ていた訳では無いが。ワベット、報告を最初から頼む」
「はっ」
皆がワベットと呼ばれた年配の兵士の報告に耳を傾けていたが、俺は話を聞きつつも横目で引っ立てられた三人を見ていた。
真ん中の一人はどうやら此度の一件の大元で、しかもこいつがポクーを切り付けた者らしい。その刃物は既に没収され兵士が預かっていた。
切り付けた者は判明したな。怒りは無い訳では無いが、この業界怪我なんてよくあるからあの程度で目くじらを立てるつもりも無い。
少し下がった脇の二人はこの真ん中の者の取り巻きで、この三人が二十五班の兵士二人と揉めていたというものだ。
理由は真ん中の者がここに来る前に叫んでいた人種差別。このナルキ集落はクリアディア族が主体だが、俺達が滞在中のノカ集落はポリテック族が主体の集落だった。
幾ら多人種に寛大なお国柄とはいえ、個人の主義までは強制できないからな。たまぁにこういう輩が出て来る。まぁ許される訳では無いが。この国の国是に楯突いたんだからな。
「うむ。報告ご苦労」
報告を聞き終え、二十五班班長、十六班班長、代官、代官補佐官の話し合いが始まった。
厄介な事に今回の事件は領を跨いでいる。
加害者は引っ立てられているカザヴェル領領民の三人。被害者はこの川辺に置いていたヴィーゼヌ軍の兵士一人とポクー。
どちらも軽傷だが何も無い訳にはいかない。怪我をした兵士、パガー一等士の名誉のために言っておくが、パガー一等士が一般人より弱い訳では無く、加害者側三人が他領の領民のため一切反撃の類は行っていないから一方的にやられただけだ。
火種なんかそこらじゅうに転がっている。だから努めて事を荒立てない理性がこういう場合大切なのだ。救援に来て、そこと戦争とか笑い話にしかならん。
「リト殿」
「はい」
「被害は実質パガー一等士とリト殿だけだから相殺金で話がついた。交渉は後日でいいな」
こんな事で事を荒立てるつもりは無いと。
「はい。ただ」
「ただ、何だ」
「俺の相棒を傷付けた相手の面、拝んでも?」
班長が代官の方を向き直り、代官が頷くと三人の顔が上げられた。真ん中の一人だけで良かったんだけど。まぁ、これを機会に三人共見とくか。
今は三人共猿轡を噛まされくぐもった声しか出せない状況となっている。
三人はやはりクリアディア族の男性で、特に真ん中の男は俺に何の恨みがあるのか睨みつけて来ていた。
三人の面をしっかり記憶し、
「ありがとうございます。もう結構です」
三人と人種差別発言に賛同した数人の村人の処遇は代官に任せ、他の村人達も強制的に解散させられ、この場には二十五班と十六班の者が残った。
「クズサ班長、災難でしたな」
「スミナ班長、パガーの救援に駆け付けて頂き感謝する」
その後再びポクーの一部を川に挿し込みノカへ向け歩き出しだ。




