水枯れを救え5
「かぁ、やられたぜ。あんな隠し玉があったとは」
ノカ到着初日の散水活動を終え、今は夕食前の一時。
「うん?特に隠してた訳じゃないよ。来る途中に皆の前で披露したじゃん」
「あんな規模で出来ると誰も思ってなかったんだよ。なんだよ。あれじゃあ俺達いらねえじゃん」
「ははは。ハンクス達は川が枯れて来てからが本番だろ。俺は川の水が無くなってきたら出番もお仕舞いさ」
「・・そういう事にしといてやるよ。ただ・・・」
「ただ?」
「明日からどうなる事か」
「・・・ああ」
少々やり過ぎたかもしれん。
あの付いて来た他集落の村人の目、あまり良くない気がする。何事も無く過ぎ去ればいいが。
「しっかし、場所も良いし俺達にあつらえ向きな依頼だと踏んでたんだけどなぁ」
ハンクスがぼやく様に呟いた。
「場所が良いって、前、潮の匂い好きになれんって言ってなかったか」
「そういう意味じゃねぇよ。魔法的な話さ」
「ふーん。そうなんだ」
「そうなんだ。って、お前は物知りだと思ってたが、そうでも無いみたいだな」
「魔的な力についてはね。基礎分野が三つもあるだろ、だから触りしか知らん」
「魔法、魔術、魔陣か。勿体ねぇ、いろいろ知ってればここほどあつらえ向きな場所はそうはねぇんだけどな」
「へーー。この場所がどうあつらえ向きなのさ?」
「そりゃあ、水がちけぇ事と風がつえぇ事さ。水を使う魔法の基礎として水生成の魔法があるだろ。あれって生成とついているが、無から出してる訳じゃ無くて、空気中の水分を集めてるだけなんだ。ここまではいいか?」
「ああ。習った当時は良く分からんかったが、今はそれ位の知識はある」
「じゃあ続けるぞ。俺達が周囲から水分を集めるには元から近くに水がある方が良い。乾燥しきった砂漠じゃこの魔法も大して役に立たんからな。
それと風の方は、俺達が周囲から奪った水分は何処からか補填しないといけないんだが、その時風が強ければ強い程早く補填が終わるんだ。閉め切った部屋で使ってみろよ、バカみてぇに生成が遅いから」
「へー。前者は何となく分かるが、後者がよく分からんな」
「ふん、微風さえ吹いてればお前達様な奴には違いが分からんさ。俺に言わせれば全く違うんだけどな」
「戦闘時の話か」
「そう言う事だ。・・・・しかし」
ハンクスが一度言葉を切って、再び話し始めた。
「しかし、何でお前だけが選ばれたんだ?」
「うん?どういう事だ?」
魔法の講釈から今度は意味が分からない事を聞いてきた。
「うん?って知らばっくれるなよ。ほら、お前の他にもそんなの連れてる奴いるじゃん。でもお前以外見掛けてねぇ。何か他にも隠してる事があるんじゃないかぁ~?」
「連れてるって。これ?」
頭の上のポクーを指差すと、ハンクスが頷いた。
「はぁ。ハンクスは魔法バカだったか。感心して損しちゃった」
「はあ、何だとっ」
「その連れてる奴って、ウリスタニアにも居た?」
「ああ居たさ、何人か」
「うん、じゃあ間違いない。あれは【ポルク・ルト】っていう全く別のモンスターだよ。見た目だけは似てるけど、ポルク・ルトはミニメソと違って、あの大きさのモンスターで、小さいけど目があるのが特徴だよ。手触りも違うし」
「め、目~」
「そう、その目だよ。くりくりの一つ目があって、主に偵察用さ。マイナーだけど保有している領軍もあるんだよ」
「ほぇぇ。たまげたな。・・・まっ、これでお相子か」
「そうだね。俺達はまた一つ賢くなったって事さ」
夕食前の談笑も終わり、夕食が始まった。
今日の夕食はいつもより豪勢なメニューが出された。
場所も定まった事により、移動中よりしっかり周辺を整備し、腰を据えた拠点となった事とこの集落の者が歓待してくれたおかげだ。
この集落の長である区長を皮切りに有力者からお礼の言葉を貰い、今の彼等にとっては少なくない品を持ち寄っての宴会となった。
ただ、この地への移住や娘を嫁に薦めて来るのは止めて貰いたかった。
ノカ到着二日目早朝。
いつもの様に支度をしていると、二十五班が敷いた拠点に来客が来訪した。
確かあれはナルキ集落の者だったはずだ。と記憶から呼び起こし班長と共に天幕へ入って行くのを見届けると、今度はここノカ集落の区長や有力者が走ってやって来た。
うーん、良くない気がする。
来客皆が天幕に入って行ったが、しばらくもせず天幕から怒号が聞こえて来た。
出来るだけ干渉したくないので音だけ耳に入れて内容は理解しないことにした。
「ふふん。早速厄介事みたいだな」
天幕から離れた位置で朝の日課の訓練をしているとハンクスが話し掛けてきた。
「そうだな。まぁ俺達は雇われ、雇い主の命令を聞くだけさ」
「淡泊だな~。そこまで割り切れるとはいっそ尊敬するぜ」
「割り切れてないのか?」
「そりゃあんな歓待受けたんだ。俺は報いるべきだと思っている」
「そうか。手が早いのはお前なのか村なのか」
「さてどうかな?」
結局この日はナルキから来た者が捨てゼリフを吐いて帰って行った。
何だか疲れた顔をした班長の号令で二日目の作業が始まった。
俺は四名の戦闘職の兵士に囲まれ昨日と同じ川辺へ徒歩で向かった。流石にこの地から川へ触手の様なものを伸ばすのは難しい。
「では、後は」
「はっ」
集落に入るとあまり良くない視線を幾つか感じたが、気にせず、昨日同様触手の様なものを川に挿し込み、その川辺に二名の兵士を置いてノカ集落に帰投した。
兵士を残す。班長も危惧している様だ。




