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空浮ぶ請負人が過ごす日々  作者: チカさん
第四章 今夏は水枯れのもよう
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水枯れを救え3

 俺達ヴィーゼヌ領救援隊二十五班は、カザヴェル領領都ハウンより北にある村、『ネネン』に派遣される事になり現在向かっている。


ネネンは海沿いの村で主な産業は製塩だそうだ。

もっとも、この地方全体の主産業が製塩業なのだが。途中の村でも救援受ける傍ら製塩風景を何度も見た。

この地方は国境があるから作られた歴史があり、本来住みやすい場所ではないのだ。塩だけがこの地方の拠り所で、他の地方で取れる塩にはバカ高い関税が掛けられている。西隣の『リーダス地方』も海に面しているが、そういう理由もあって塩はここのほぼ専売品となっている。

そうまでして守っているのがこの地方だ。国境向こうの国とこの国の主義は相容れないからな。



 昼にはネネンに到着し、十六班とこの地に派遣されているここの領軍とその領軍に雇われている請負人達と合流した。海は既に視界に収めているが今居る辺りは畑区画のため海から離れている。海沿いにはこの地方の海沿いならどこでも見られる塩田も広がっていた。


ネネンの様子はまぁぶっちゃけあまり良くない。だから俺達が応援に派遣されたんだがな。

既に干害が出始め、枯れた畑が幾つか散見した。救えるところは絞っているのか。


班長が先に派遣されていた者達の指揮官等との話し合いに行っているため、しばらく待機する事になりより詳しく眺めていると、村の現実が目に入った。


端的にいうと村内順位。有力者、一般人、爪弾き者。見た感じどうも領軍や十六班は有力者を優先した救援方式を取っているようだ。

それが分かるのはこの地方、特にボーグ山脈北側は何気に区画整理がきっちりかっちりしているからだ。だから立派な家の近くの畑は水が撒かれている畑が、貧相な家の近くの畑は枯れている畑が多いという具合だ。もちろん完全では無いが、海沿いにずらーーっと並んでいる塩田同様に家や畑までずらーーっと海沿いに沿って区画整理されているのだ。

ここまで村が区画整理されている地方は珍しい。国境があるために作られたという歴史は嘘や法螺の類では無いという訳だ。




「二十五班の皆聞いてくれ」


班長が話し合いから帰って来て話し始めた。


「我々二十五班はこの村西側の『ノカ』集落に向かう事になった。移動準備を始めてくれ」


ノカ。という集落が西のどのあたりに当たるのかは知らんが、この地方の海沿いの村は海沿いゆえに細長い形をしているため幾つかの集落や区に分けて村の体をなしているのだ。



 ここの兵士に案内され着いたネネン村ノカ集落は、


「こりゃあある意味楽そうだ」


ハンクスがこの辺り一帯を眺めそう呟いた。

はっきり言うとネネン村中央辺りに比べると救援の手が届いていなかった。


うーん。家々の見た目から集落順位自体が低いっぽいな。

寂れてる。こう表現にしておこう。


いきなりこういう所に派遣されるとは、班長嫌われてるのかな?

とりあえず班長には憐みの目を向けておこう。



 俺達が少しだけ開けた場所に拠点を設営する事になり、班長がこの集落の区長と話を行っているのを遠くに見つつ設営を開始した。


領軍のテントももう慣れたものと手早く設営を終え、支援職の兵士達は竈を組んだり雑務を始めると、班長が戻って来た。


「請負人の皆、仕事だ」


漸く俺達の仕事の時間となったようだ。今まで移動移動移動移動だったからな。


「クズサ班長。内容は?」


俺達二十五班の請負人達のリーダーを務めているボアさんが班長に問うた。

ボアさんは四人の中で最年長で薄毛を気にしている中年の請負人だ。ただ、ボアさんはモズラリメ族で、モズラリメ族は年を取ると大概の者は禿げるため詮無き事だと思っている。本人は諦め切れて無い様だが。ちなみにモズラリメ族の女性は他の種族と変わらん。


「見ての通りこの辺りは川から遠いため畑の状態が・・あまり芳しいとは言えない畑が多い。だから徹底的にやってくれ」

「徹底的。つまり」

「ああ。あまり芳しくない畑に遠慮する必要はない。後日種蒔きとなるが、今はとりあえず水だ。水さえ撒ければ問題ない」


少々表現はぼかしたが。思い切ったな。

この辺乾燥が進んでひび割れが始まっている所もある。一刻も無い深刻な状況だ。

だから今はとりあえず水を撒いて地面に水を含ませる事にしたのか。



「聞いての通りだ。繁っている畑は避け、あとは好きにしろ」

「よっしゃーー!移動ばっかで溜まってんだ。ド派手のいくぞ!」



 俺達請負人は一人一人好き勝手に動き始めた。


「さて、どうしようか?」


俺は他三人とは違い水自体は自前で用意できない。もちろん水生成の魔法は使える。しかも一般人よりは随分多く。だが所詮数家庭分の飲み水程度しか出せず、ここに呼ばれたレベルの使い手に遠く及ばない。


だから川まで向かわないといけないのだが、徒歩では面倒な程遠い。

村の区画整備に比べ水路整理が杜撰。この一言に尽きる。

灌漑工事は金が掛かるとはいえもう少ししようぜと思うレベルである。一応枯れ果てているのは野菜ばかりで、この国の主食であるアト麦は元々あまり水がいらない作物なため影響をあまり受けていない事から工事の優先度が低いのかもしれん。

まぁ国境に近いゆえの政策かもしれんが。その辺は分からん。



「班長」

「どうしたリト殿?」

「俺は川まで戻りますが、あの川って領主が水利権者ですよね?」

「ううむ。確認はしてないが多分そうだ。それがどうした?」

「今から川の水を大量に使いますから川辺の集落から文句が来ないかと」

「ふむ。・・懸念は分かった。ヤヅ!こっちへ来てくれ」


班長が拠点の方を向き、兵士の一人ヤヅを呼んだ。


「はっ。班長何でしょうか」

「命令を伝える。………」




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