入札依頼1
「護衛依頼?」
「はい。受けてみませんか?」
そろそろ放浪に戻ろうかと考えていた矢先、ギルドに顔を出すとギルマスに捉まった。今日はただ食事処の方だけに用があったのだが。解せぬ。
「護衛は余り得意では無いの知ってるでしょう?」
俺が得意なのは荷物運びや送迎だ。もちろん空を進む。それをギルマス達は知っているから本来送迎も護衛依頼と一括りにされるところを別々に呼んでくれている。だから今回は本来の意味での護衛依頼なのだろう。
「はい。ただこの依頼は半分護衛半分送迎といったところでして」
ギルマスが依頼書では無い紙を渡してきた。
「ああ、まだ依頼確定じゃなくて情報だけか」
「はい。入札はまだでして」
依頼には幾つか出所がある。
その一つが請負人ギルド連盟が開く入札によって依頼を手に入れる方法だ。
公共性が高く、規模の大きな依頼はこの入札によって落札された依頼が多い。このギルドは零細なので入札自体に参加する事はまず無く、落札したギルドから一部業務委託を受ける下請けが多い。昨年のエジンバギルド主催の定期討伐依頼もその口だ。
つまり今は意思確認だけで、受諾の意思があれば、これから落としそうなギルドに媚売って回してもらうという訳だ。
「へー。何処が落としそうなの?」
書かれた情報を読み進めつつ、ギルマスに尋ねた。
「うちです」
「はいはい」
ギルマスの冗談を流しつつ読み進め、ふと顔を上げると、そこにはむすっとした顔のギルマスがいた。
「・・・何処が落としそうなの?」
「うちですっ!」
「・・・・・・・うーーん。まだまだ若いと思ってたけど自己診断の精度なんてこんなもんか。ピリアンさん、俺そろそろ引退しようと
「あなたの耳は正常です」
「・・・・・マジかよ。信じらんねぇ。ここ零細じゃん」
「む~。リトさん、もしかして入札は大きな依頼しかないと思ってません」
「違うの?」
「数だけ見ると大きな依頼なんて微々たるもんです。大半は個人で持ち込まれた依頼が自分のところで対処できず、知り合いのギルドも、といった時に連盟に持ち込まれます」
「・・つまりあれか。変わり種の依頼は連盟経由が多いという事か」
「否定はできません」
知識を更新し、文章を読み終り情報の吟味を始めた。
今回の依頼はある人物達を『グレンテール』という町まで送迎、その町で護衛として随伴して、その後ウリスタニアまで帰って来る。という依頼だ。確かに大きいとは言えない依頼だな。
グレンテールというのはここから北西にある有名な避暑地だ。まだ避暑地に行くには時期ではないが、標準獣車で片道十日近く掛かる程遠い場所あるため今から準備を始めてもおかしくは無い。開始予定日はまだ先だ。
「それでどうしますか。この依頼はリトさん次第で入札に参加するか決まりますが」
「うーん。不透明な部分が多すぎるな。期間とか」
「場所から分かる通り避暑目的ですからざっくりなんですよ」
「じゃあパスで。行きだけならまだしも護衛や帰りは面倒だ」
期間とかざっくりだと他の予定が立たんだろうが。放浪とか。
「まあ待ってください。別に一人でする必要はありません。護衛は誰かに任せて、その間はあちらのギルドで厄介になってはいかかですか?」
「・・・そう言えば外部協力員制度とかあったな」
「はい。外部協力員制度は所属ギルドと同盟ギルド以外のギルドでも活動出来る様に制定された制度です。あちらで受けられる依頼に一部制限が掛かりますが、リトさんのランクです。申請すれば無為に扱われる事は無いでしょう」
同盟ギルドっていうのは連盟よりそのギルドにとってより深い関係のギルドを指し、資金や依頼を融通し合う関係にある。例えば片道の護衛依頼の場合、到着先に所属ギルドが支部を置いていなければ請負人は何処から達成報酬を受け取ればいいの?という事になる。その答えの一つが同盟ギルドだ。帰りもその同盟ギルドに来た護衛依頼でも受けて帰ってくればいい。
ちなみに、支部も同盟も無い場所へ片道護衛する者はその場所自体に目的がある者かギルドの仕組みを理解してない馬鹿だけだ。
このパッソルトギルドにも国内に幾つか同盟ギルドがある。だが今度行くグレンテールには無いという訳さ。
だから審査がある外部協力員制度を使う。まぁ人となりやランクを見るだけだ。ギルドによって審査基準は多少違うがグレンテールの中にある何処かのギルドには審査を通過するだろうと思われる。伊達に総合ランク2じゃないし。
総合ランク2はランク1基準で上位二割に含まれているそこそこ上位者だ。討伐ランクも2だが、こちらは上位四割程度だ。その辺が個別ランクと総合ランクの取得難度の違いだな。
ランク1基準というのは、ランク0は人数が多く時期によっても変動が大きいため統計を取りづらく、ランク1を基準としている請負人ギルドでは一般的な統計方法である。
「ふむ。・・・じゃあ送迎のみの報酬額計算しといて。それと後は護衛か。人数と荷物の量から二人が限度かなぁ」
「二人。・・・ラムちゃん達でどうでしょうか?」
「・・二人の護衛ランクは知らんが、ピリアンさんが押すなら十分なんだろう。うん、それで良いよ」
「今度二人にも伝えておきます。多分受けてくれると思いますが、他にも選定しておきますね」
その後も幾つか話し合い、本来の目的だった食事処へ向かった。




