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空浮ぶ請負人が過ごす日々  作者: チカさん
第三章 ダンジョンと呼ばれるもの
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冬までの

「お帰りなさい。今回は少し短かったですね」


・・・・・・何という事だ。

第九出入り口の事件も終わりそのあと微々たる報酬を貰って、しばらく放浪し帰って来たのだが。・・・ギルマスの対応がすごく普通だ。

こ、これは。


「げ、元気出してくださいピリアンさん。医者の余命宣告なんて当てになりません。気を、気をしっかり持つことが大切です。そうだ一緒に雄大な空へお散歩にでも行きませんか?良い気分転換なると思いますよ」

「・・・余命」


「!?・・・長く・・ないんですか」

「・・・最近はだましだましです」

「!?・・・この時間にアイリーンさんがいないのも」


ギルマスはゆっくり頷いた。

何という事だ。ギルドを畳むつもりなのか。

中小や零細ギルドは運営側は身内だけのところもあり、ここもギルマスは先代ギルマスの身内、一人娘だ。今代ギルマスは独り身だし継ぐ者がいるなんて話は聞いたことが無い。


「・・俺に手伝える事があれば言ってください。何でもとはいきませんが大概の事はやりますから」


今までお世話になった手向けだ。受け取ってくれ。


「あっ、そうですか。ではこの依頼達をお願いします」

「・・・えっ」


急にギルマスは元気になり、何枚もの依頼書を渡してきた。


「えっと、余命は?」

「ええ、誰かさんが依頼をちっとも受けてくれないのでギルドの余命が尽きかけようとしていました。ちなみにアイリーンは今営業に出ています」


経営難。


「今度は何でですか。状況が変わったんですか?例えばトビーさんが亡くなったとか」


あの人が一番ギルドに貢献している人だからな。


「違います。トビーさんは今日も依頼遂行中です」

「では何で」

「・・・実は、ライツさんのところが解散しました」

「・・・なるほど。でもなんで」


ライツさんのパーティーはこのギルドの稼ぎ頭だ。

理由は教えてくれるか微妙だが、聞くのはタダだ。


「・・・実は………………」




「なるほど」


理由は単純にパーティー内の不和。

ただし、その原因は俺だったとしても解散に踏み切る可能性も皆無では無い事だった。

原因はダンジョンに関するもろもろの値上げだ。


まず、短期間に二つのダンジョン鉱山が一時でも陥落した事で、人材派遣商がダンジョン内の危険度が上がったという事で鉱夫の日雇い料金を上げた。

そうなると借り渋るパーティーも出て来て潜る時間を伸ばしたりして対応していたが、それも長くは続かず利益減少、つまり減産。

先細りに不安を覚えパーティー内の雰囲気が悪くなる。

あとはただの根比べ。つまり閾値の問題だ。

その結果が余裕の無いパーティーから解散や分裂、借り手の更に減った人材派遣商の値上げへと続け、ループに入ってしまったのだ。一回一回のループは微々たる増額だがその増額がライツさんところにまで手を伸びてきたという事だ。

影響が少なかったのは自前の採掘従事者を用意していたパーティーだな。


「解散したパーティーのメンバーは一部が移籍もしくは引退しました」

「パッソルトギルド滅亡の危機か」

「はっきり言いますね。ただ、うちのダンジョン組は実質いなくなりましたのでそちらに割いていた時間や経費もいらなくなりましたので少しの間は持つでしょう」

「だましだましか・・・・くぅ、やられた」

「はい、頑張ってきてくださいね」


ギルマスにしてやられちゃい依頼を大量に捌くことになってしまった。



 はぁ、此度の原因は誰か。そう依頼場所へ向かいつつ考えた。

人材派遣商、領主、請負人。・・・どれもだな。


他の業種は分からんが同業者目線で言わせてもらうと、ダンジョン組は堪え性が無いんだよな。特に請負人始めて直ぐにダンジョンに潜り始めた連中は。


自分達でパーティーを作って、という組は初期の苦楽を共にした経験があるからそこまででは無いが、後からパーティーに入った新人は、パーティーに入るのは難関だが、その狭き門を潜り抜けたと自尊心が高い者が多いんだよ。


今回消えたのはそういう爆弾持ちのパーティーという訳だ。

ある意味爆弾の個数を減らす事が出来た訳だがその影響が俺にまで波及するとは。


はぁ、付いてない。





 ギルマスの詐欺に引っ掛かった俺は、泣く泣く依頼を捌き漸くギルドに帰って来て、とりあえず換金で得た金で食事処でポクーと飲んでいたところ、


「リト。横いいか」


ライツさんに話し掛けられた。久々に会うが息災の様だ。


「どうぞ」



「「かんぱい」」



「解散したって聞きましたが」

「まぁな。トルゲンも今回がいい機会だと引退しちまったしな」


ライツさんもトルゲンさんも先代ギルマス時代からいる古参の請負人だ。一生身を置ける業界じゃないからな、ここは。


「俺もしばらく潜るのは止める事にしたんだが、やっぱ冬がなぁ」

「トビーさんみたいに冬は休業にしては」

「ダンジョンが長いと地上じゃ稼げん。俺はまだしもな。だから冬には再合流しそうな奴もいそうなんだ」

「ダンジョン組は豪快でいらっしゃるってギルマスが泣くわけだ」

「幻体ばかり相手取ってるからな。素材の事が頭から抜けてるんだよ。・・・・ダンジョンばかり連れ回すべきじゃなかったか」

「元リーダーも大変ですね。」

「好きでリーダーやってたんだ。元メンバーの動向も気になるさ」


俺には分からんな。だからソロなんだろうけど。



「それでリト、冬の間一緒に潜らねぇか?」

「冬。俺もどうしようか迷ってたんですよねぇ。流石に寒くて野宿も厳しいし」

「おっ、脈ありか。言ってみるもんだな。そう言えば前潜りたがってたラムとカーサにダンジョンの話し振ると露骨に避けるられる様になったんだが何か知らんか?」

「前にライツさんが断ったからそれこそ二人で潜ろうとしてましたよ。俺経由で釘を刺しときました。まぁそのうち再燃するでしょうが」

「・・・そうか。冬に間に合えばいいが。そういやもう秋か。・・・・・人買いに行ってくるか」

「それは気の長い計画ですね」

「何人かは返って来ると思うが、移籍と引退分は最低限補充せんとな。かさ増しでも人員は確保しておくつもりだ。それに冬には鉱夫への賃金も落ち着くはずだしな」

「なるほど」


冬は近隣の村々から出稼ぎに来た村人が鉱夫をするから供給人数が上がり、必然的に賃金が下がる。それに地上組の請負人も冬だけダンジョンに潜ったりもするため冬がダンジョンにもっとも人が入る季節だ。



さて、誘っては貰ったが、次の冬はどう過ごそうかな?




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