放浪の日常3
『メンス』。それがこの村の名前だ。
人口は約三十人の小さな村で、主な産業は漁業。
そしてその村は現在、存亡の危機に瀕している。
原因は唯一道が繋がっている東に歩いて約一日の距離にある村。そこがメイザーによって占拠されてしまったことだ。
人々は逃げ場も無く、日々その東の村を占拠したメイザーが襲ってこないかとびくびくしながら暮らし、襲撃に備えて人を割けば漁業に割ける人員も減りさらに生活が苦しくなると負のスパイラル状態に陥っている。
「なるほど」
村長宅で村長に聞いた話を端的に変換すればこんなところだ。
「だから旅人殿。ゼニスを送り届けてくれた事には感謝するが、即刻離れる事をお薦めする」
亡骸はゼニスという名の青年で、いつまでたっても救援が来ない状況に村で集めた金を持って舟で下流にある町まで依頼に向かったという者だったそうだ。ちなみに二人組だったということだ。
村の防衛は領主の義務だが小さな村だ、見捨てたのだろう。
だから金をかき集め、請負人ギルドを頼ったと言う訳だ。あの三人組も出所が似たような金で仕事を請け負ったのだろう。
「ご忠告感謝します。ですがここで会ったのも何かの縁、少々干し肉を持っているんですが何かと交換しませんか」
「それは助かります。最近魚以外ご無沙汰でして」
大きな荷物入れの中を漁り、完成済みの干し肉を入れている袋を出した。大きな荷物入れはあと討伐証明部位と塩が占めている。皮はかさ張るので長期放浪中は廃棄している。道具類は小さな荷物入れに入れている。
「こちらです」
村長に袋を渡した。
「・・・どうしました?」
村長と周囲にいた者達が止まっていた。
「まさか、これ全部が干し肉ですか」
「ええ」
まぁ、普通一人が持ってる干し肉なんて微々たる量だからな。期待してなかったのだろう。
だが俺は露店で販売することもあるほど所持している。てか作ってる。
「これ全てお譲り頂けるので」
「ええ、ですから交換の品を見繕ってください」
「お前達。何かあるか」
そう村長が言うと、村長以外の全員が村長宅から走って出て行った。
しばらくして戻って来た彼らの手には日用雑貨品や小さな家具が。
袋や籠いいとして流石に家具は普通に困る。
結局、袋数枚と魚数匹、亡骸が持っていた金(返した)の一部と交換した。
翌日。昨日はあの後何度も引き留められたが村から出ていつも通りポクーの上で眠り、地上に下り身支度を整えてから再びポクーに乗ってメイザーの村の方へ向かった。
昨日見た多分請負人の三人組は今日襲撃を行うと踏んでいる。昨日の夕方から攻めるのはメイザーに有利に働くためだ。
メイザーの村の上空までやって来た。
どうやらまだ始まってないようだ。請負人の方は村近くの森にでも潜んでいるのか見付からない。
メイザーもその森で狩りをしているみたいだからオスの成体だけ先に各個撃破の可能性も十分考えられる。
昼になった。まだ状況が動いたようには見えない。・・・もしかして彼等は村の依頼では無かったのか?
だが帰って行っている姿も見ていない。来るとき街道を使ってたから帰りも似たような経路で帰るだろ普通は。
うーん、彼等が来た村の方に今日はお邪魔するか。
メイザーに占拠された村から東に歩いて二日で着く村に到着した。
時刻は夕方前といったところだ。
あの三人組は昨日あの時間にあそこなら徒歩では今日はまず帰って来ていないはずだ。
「お前は何もんだ」
今日も誰何された。
こっちも少し遠いが隣村にモンスターの村が出来ていること変わりないからな。
「旅人かな?」
「何故疑問形なんだ」
「うーん、本業は持ってるけど今は半休暇中。さてさてその場合本業の身分を名乗るべきか迷うんだよね」
「よく分からん事を言う奴だな。それでこの村に何の用だ」
「あっちへふらふらこっちへふらふらの旅人?ですよ。目的は特にありません。それと何かあったんですか?何やらこの村殺気立っている風に感じるんですが」
「知らんのか。あの道をずっと行った先の村がモンスター共に占拠されてんだ」
「・・・なるほど。兵士は既に呼んでいるんですか?」
「小さな村だ、取り合ってくれんよ。今は請負人がこの先に行ってくれている」
「そうなんですか」
あの三人組はほぼ間違いなく依頼を受けた請負人だと決定した。
次の日。村で一泊し再びメイザーの村上空までやって来た。
「おかしい」
まだメイザーが暮らしていた。
「いや、微妙に減ってないか」
若干だが、メイザーの数が変わった気がする。奴等の個体差の判別は困難なため具体的にどの個体がいなくなったかは分からんが。
メイザーも強いモンスターではないから狩りに出て逆に狩られる事もよくある。
狩ったのがモンスターなら何も問題は無いがもし請負人なら話は別だ。
こういう依頼は日当ではなく出来高なので早く狩れば狩る程利益が出る。
つまりあの三人組は逆に狩られてしまった可能性が高いと言う訳だ。メイザーに狩られたかは分からんが。
「明日まで様子を見るか」
明日朝狩られていなければ俺が狩っておこう。それなら横取り等の面倒事に巻き込まれる事も無いだろう。
さて、昨日はいろいろ消費しちゃったし今日は干し肉を作って過ーごそ。




