合同依頼6
侵攻開始三日目昼頃。今日は一パーティーほぼ丸ごと怪我人が出たため一パーティーをポクーに乗せて本陣に帰投し、少し休んで消耗品の補充をし、荷物入れに詰めていると、
「おい、でたぞ!」
儀式場に詰めていたシンバエアさんの護衛兼連絡要員が天幕から出て来た。
シンバエアさんはパペットとのリンクが切れるためその間は儀式場から出れんらしいからな。
本陣に居た主だった者達が本部天蓋に入り報告に耳を傾けた。
「「「うーーん」」」
報告を聞いた殆どの者が首を捻った。俺もその一人だ。
「つまり、右腕が異常に発達した第一進化種だったと」
「はい。そう言ってました」
「マルイル、聞いたことあるか」
「ありませんな。全体的に筋肉質ならディメイザーだが。確認例が少ない特化種かそれとも特異種か。・・・・・一度東部砦とその向こうのポッテリアの者と連絡を取ってた方が良さそうじゃな。もしかしたら知っとる者がいるかもしれん」
「いやまだ早い。今はほとんど出払っているからその者達に聞いたら知ってる者がいるかもしれん」
「しかしモーテルよ。………
何やら総指揮と副官が揉めだした。
それにしても右腕が異常に発達したメイザーか。
メイザーの第一、第二進化種の違いは背丈で分かる。
メイザーが俺の半分程ならゼイメイザーが首程、バゼイメイザーなら大男といったところで多少進化種の違いと個体差があるが第一と第二は間違わん。
例外はあるがな。
それは特異種の存在だ。特異種は型にはまらん進化種でメイザー程しか背丈が無いが、第二進化種程の戦闘能力を持った個体も過去には発見されているそうだ。付けられた名前は覚えていないが。
この右腕が発達したメイザーは果たしてレアな第一特化進化種かそれとも第何かも分からん特異進化種か。それの如何によって対応が変わる。
そして二人の言い争いはどうやら面子との板挟みの様だ。
聞きに行って、もし他のところが知っていれば、
何じゃそんな事も知らんのかお前等は。みたいな対応をされる事請け合いだろうからだ。
聞いた話、エジンバギルドはけっこう無理をしてこの仕事取ったみたいだから、ケチが付けば領主という超大口依頼主からしばらくお声が掛からん可能性もある。下手すりゃ他の依頼主も依頼を控える可能性もある。それほど領主というのは都市にあるギルドにとって影響を与える存在なのだ。
俺は偵察要員。直接対峙することは無いので気楽なもので、天幕から出て再び荷物整理を始め、そろそろ行くかと立ち上がろうとしたとき、
「リト」
うん?誰かが俺を小声で呼んだな。
何故小声?っと声のした方を向くと、そこには副官のマルイルさんが近くのテントに身を隠すようにして手招きしていた。
何かな?
荷物を置いてその天蓋の袂まで歩を進めた。
「何ですか?」
「リト、お主にはこれをエジンバのギルドマスターまで運んで欲しいんじゃが」
そう言って取り出したのは手紙だった。配達か?
「配達は偵察の仕事でしたっけ?」
「分かっとる分かっとる追加報酬を払うから大急ぎで頼む返信もな」
「大急ぎって。急ぐんだったら領軍の伝書鳥借りたらどうですか?直ぐそこじゃないですか」
「一身上の都合で無理じゃ。頼んだぞ、くれぐれも大急ぎでの」
そう言うとテントの陰に隠れながら去って行った。
配達依頼、大急ぎ、副官が隠れてコソコソ、か。
何となく読めるが俺は雇われ、仕事を完遂するのみ。
「ポクー、全力でウリスタニアへ」
大きな方の荷物入れをパッソルトに割り当てられたテントに放り込み、ポクーに魔水を与えながら言った。
この魔水、いつもの等級2を希釈したものでは無く等級3の原液だ。
そうするとポクーの体が俺が寝転ぶスペース位しかない大きさになり、形も鋭角的、いや、そうでもない形になった。
そのポクーに最低限の装備、道具を持って乗り込み、ウリスタニアへ発進した。
上空に上がりながらもどんどん加速し、いつもは相当な高度でしか感じないような肌寒い思いをしながら進み、来るときには三日掛けた行路を、
「ちょっとー待ってーー!!」
「うん?ぎりぎりだな。今度からはもっと余裕を持って行動しろよ」
と、何とかその日の門が閉まる前に帰って来れた。
ここは閉まってからだと滅多な事では開けてくれないのだ。
だから間に合わなかったら都市外で一夜を過ごさないといけない。
「ポクー助かったよ。ありがとう」
ポクーにお礼を言い、足早にエジンバギルドに向かった。




