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双銃使いの恋の法則  作者: 姫羅唯あやか
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第三章〜意外な一面〜

第三章〜意外な一面〜


空挺戦艦内の自分の座席でギンガは小さい欠伸をした。

本来なら既に隊を率いて出陣しているのだが……。現在、出陣できないでいた。

窓の外を眺めると、もの凄い勢いで進んでいるのが分かる。

隣では、上司であるダリアットが地団駄を踏んでいる。


「落ち着いたらどうですか? そんなにいらいらしていても何も変わりませんよ」


「まさか吹雪とはな……。最悪だ……」


現在、空挺戦艦は吹雪による足止めを受けていた。

サイキ大佐の情報通り、隣国ーーシャーン国に入国したのだが……そこで吹雪に遭ってしまった。

吹雪の中での捜索は不可能ということで、空挺戦艦は一時、シャーン国にある空港へと降り立っている。

何も出来ないことがそんなにも嫌なのか、ダリアットは数十分前から苛ついている。


「この国は雪国として有名ですからねぇ〜。俺たちの国とはまったくもって気候が違うというのが驚きです」


ギンガたちが所属している国ーーシャルン国は安定した気候だ。夏は暑く、冬は寒いという当たり前の気温。だがシャーン国は、春夏秋冬一年を通してずっと寒いという気候だ。最高気温で五度、最低気温でマイナス三十度。シャルン国とシャーン国の国境は恐ろしい程に気温で分かれている。簡単に言えば、国境は寒いか寒くないかといったところだ。隣同士にあるというのに、こんなに気候が異なることから、気候についてはシンライラ帝国での問題の一つになっている。


「うぅ〜、寒い……。やっぱりお言葉に甘えて暖房完備が整った建物の中に入れてもらえば良かったのだろうか……」


「他の皆をあったか〜い所に行かせておいて、自分は寒い空挺戦艦に残ると言ったのはどこの誰ですか?」


「僕だ……。だが、もし盗まれたりしたら懲戒処分を免れない……。 僕だけでなく、一緒に残っているお前も懲戒処分の対象だぞ?」


シャーン国の優しい空港の人々が、「寒いだろうから、是非とも建物内へとお越し下さい」とダリアットに進めたのだが、部下だけを行かせ、自分は残ると言い張った。もちろん、ギンガも行く様にダリアットに促されたが、行かなかった。

こんな寒い所に大切な上司――女の子を残しておくわけにはいかない。そう思ったギンガは断固として残った。だから今この空挺戦艦内にいるのはダリアットとギンガの二人のみ。


「ははははっ。そんなに震えて……。ダリアット様、歯がカチカチ言ってますよ?」


「き、気のせいだっ……! 寒くないぞ! 僕は寒くないぞ! むしろ暑い! 汗が出てくる程に暑い!」


現実逃避をしているのか、ダリアットは大声で暑いと連呼し始めた。そんな姿を見ていられなくて、ギンガは眉を寄せ、


「ほ〜ら、これ着ててください。あんまり変わらないと思いますけど、無いよりはマシです」

 

自分の羽織っていたジャケットをダリアットに着せる。ジャケットはサイズが合ってない、ぶかぶかだった。 


「これで指先とか暖まりますから。しばらく着ていてください」

 

シャツ一枚のギンガを見て、ダリアットは申し訳なさそうに頭を下げている。


「だ、だが……。それではお前が寒いのではないか?」


「俺の出身地は知っていますよね?」


ギンガの言葉にダリアットはこくりと頷いた。

ギンガの出身地はシャーン国と同じように、雪国だ。一年中寒い風が吹き荒れ、雪が降り積もる国だ。


「それに……一応、軍で寒暖耐久訓練を受けてますから……、まだ大丈夫です。今の気温がマイナス三度なので……、マイナス十度になったら流石にヤバいですけど……。ダリアット様は司令官ですけど、それ以前に一人の女の子なんですよ? それを自覚してください。冷やしたら体調も悪くなってしまいます」


ダリアットの体調を気遣ってギンガは言うが、ダリアットの顔がみるみる赤くなっていく。ぼふっという効果音があってもおかしくはない。


「ぼ、僕を女扱いするな……! 僕は司令官だっ! だからその……」


「そうですか……。でも、体調を崩したら仕事が出来なくなりますよ?」


「心配してくれたことに感謝してやる。僕の心配よりも自分の心配もしておけ。いつ気温が下がるか分からないぞ?」


「ご心配ありがとうございます。ダリアット様も気をつけてくださいね? あっ……でも風邪引いたら俺がつきっきりで看病を……あぁ何でもないです……! すみません! 俺が悪かったですから、その物騒な剣をしまってください!」


剣を抜きかけているダリアットをどうにかして止めると、ギンガはぐっと腕を上げて二の腕の筋肉を伸ばした。こうでもしていないと寒さで身体が動かなくなってしまうと思ったからだ。


「うぅ……。早く仕事を終わらせて、趣味に没頭したい……」


仕事中は何が何でも弱音を吐かないダリアットが弱音を吐いた。それほど寒いのだろう。


「この仕事が終わったら休暇を取るんですか?」


ダリアットはうーんと唸ると、


「それもいいかもしれないな……。だが……休暇は取らない! というか……取れない! 没頭するのは夜だ! 睡眠時間を削ってでも趣味に没頭する!!」


ダリアット率いる部隊は多忙だ。ギンガも忙しくて休暇を取ることは少ないが、ダリアットはほぼ無いに等しい。司令官として会議に出席したり、視察、戦での指揮……など数えきれないほど仕事が山積みだ。


「それで身体を壊さないでくださいね……」


「あぁ! 多分……大丈夫だ……」


二人はしばらくの間、こうして休暇について話していた。

その後はこれからどうするか、囚人の捕獲方法、移送方法……様々な可能性を想定し、完璧に囚人リナ・ファリスを捕らえられるようにパターンを話し合い、作戦を立てた。

そして――吹雪が止むこと二時間後……。

空挺戦艦は再びフライトを開始した。


                                         続

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