デルカ竜国という国
ウェリナスには大きな大陸と3つの小さな大陸がある。
この物語の「デルカ竜国」は大きな大陸の東側にあるドラン山脈という大陸で一番大きく、険しい山脈付近を統治している国である。
険しい山中を 人?のような姿をして、背中に翼を持ち、腰のあたりから少し長い尻尾を生やした種族「竜人」が200名程で隊列を組み低空を飛んでいた。
「進軍状況はどうだ?」
男性の低い声で赤い瞳、銀髪の短髪の竜人は言った。
「少し遅れていますが、作戦に支障はありません。」
少し無表情な女性の声で青い瞳、銀髪の長髪の竜人は答えた。
「少し急ぐぞ、間にあわなかったら俺らは笑いものだ」
赤い瞳の竜人はそう言った。
「了解、伝達します」
青い瞳の竜人が短く答え、部隊に伝達していった。
凄まじい速度で山中を飛翔して行き、山中を抜け、森を抜け、ひらけた平原に出た。
そこは戦場だった。
人間同士で争っていた。
黒服の軍1500人程と赤服の軍600人程が剣を手に、魔法を詠唱し、血を流しながら戦っていた。
赤服の軍が明らかに劣勢だった。
今にも総崩れになりそうだった。
「旗を掲げろ!全隊突撃だ!」
赤い瞳の竜人がそう叫ぶと突然ドラン山脈麓の森から竜人の部隊が突然現れた。
「竜人?!デルカ軍だと・・・!」
黒服の軍の兵士がそう言った。
「援軍か・・・?助かった!」
劣勢だった赤服の軍の兵士がそう言うと、赤服の軍から次々と歓声があがった。
そこからは圧倒的だった。
竜人の部隊は撤退して行く、黒服の軍を次々に蹂躙し、戦場からあっという間に一掃した。
黒服の軍はたった200人の部隊に抵抗しながら撤退するも400人以上の死者を出して戦場から撤退した。
この時、デルカの竜人の部隊は1人も死者を出すことはなかった。
「助かりました。さすがゼフィール将軍」
戦闘が終わり、赤服の軍の指揮官は赤い瞳の竜人にそう言った。
「いや、間にあってよかった。このフィルヴェール平原はデルカにとって も重要な土地だ、同盟国の領土ともなれば全力で救援するさ」
ゼフィールと呼ばれた赤い瞳の竜人の指揮官は答えた。
「しかし、こちらがこの程度の犠牲で済んだのはゼフィール将軍のお陰、
この恩義は必ず返しましょう」
赤服の軍の指揮官はそう言った。
「いやいや、貴国には資源の多大なる援助をいただいているからな、戦い でその恩を返しただけだ、では我等は撤退する、リリア!撤退するぞ」
ゼフィールはそう言った
「了解」
リリアと呼ばれた無表情な青い瞳の竜人はそう答えると、すばやく部隊に伝達した。
そして竜人の部隊はドラン山脈に飛んでいった。
「アンドラ王国への援軍ご苦労だった、アンドラ王国には多くの資源援助 を貰っているからな、それの折り合いだ。」
黒い瞳で赤い長髪の男性の竜人は響くような低い声でそう言った
「わかってるさ、グラヴィール。俺らは戦いを生業にしてる、それで国を 守り、豊かにできるならそれに越したことはないだろう」
ゼフィールはそう答えた。
「この痩せた土地ではなかなか、国民全員を賄うことができないからな、
それでもお前達を戦火に晒したくはないのも事実だ」
グラヴィールは真面目にそう言った。
「俺達は軍人であり戦士だ、戦いこそ俺らの本領だ、お前が気に病むこと はない」
ゼフィールが答えた。
デルカ竜国はドラン山脈全域を統治してはいるが、その殆どは生活のできない険しい山脈、作物や資源を十分に整えることができないため、同盟国のアンドラ王国から多大な支援を頂いている、そのかわりにデルカ竜国はアンドラ王国に何かがあったとき軍を持って全力で支援することで調印を結んでいる。
竜人というのはただでさえ人間を遥かに凌ぐ筋力、空を自由に飛べる翼、竜から受け継いだ竜気と呼ばれる特殊な魔法を駆使し、1人で人間の10人分以上の戦力になると言われている。軍隊の戦士ともなれば1人で人間の30~100人分の戦力になると言われている。
だが、竜人は極端に種族としての数が少なく、人口比は人間の2000分の1程度しかない、デルカ竜国の人口は7000人、アンドラ王国の人口はおよそ420000人と、デルカとアンドラでもこの差がある、その為デルカ竜国は同盟国から援助を貰う代わりに、その強大な軍力で派兵事業を展開している。
この険しい山に囲まれ、資源が乏しいデルカ竜国がウェリナス全土に名を馳せる事になる。