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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
序章【出会い】
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05『破られた封印』

最悪の目覚め。


今の状況を表すのに最も適した言葉でしょう。

久しぶりに目が覚めたかと思いきや

私の体は箱ごと揺られ、あちこちぶつかって痛いのです。

……まさに最悪の目覚めです。


どうやら私を縛っていた鎖が破壊され、私は自由になったらしいのですが…

こうも揺られたんじゃあ二度寝も出来やしない。

こんな箱の中では動き回ることもできませんし……

何より自慢の毛並みが乱れちゃうじゃないですか!

なんてハタ迷惑な……


―――ゴンッ

「…痛…っ」


……私にどうしろって言うんですか!

身動きのできない私に何をしろと!?


下から思いっきり突き上げられてる気分です。

……こんなに激しくされちゃあ失神しちゃいますよ……


それになんだか気持ち悪くなってきました。

このままでは狭い箱の中に体液をぶちまけてしまうかも知れません。


白っぽい液体が体中にべたべたと……考えただけでも気持ち悪いです。

私から言わせてもらえば気持ち悪いの一言です。もうそれに尽きます。

全く……私をここまで不快にさせるとはいい度胸です


……どうやら私は人間に運ばれているらしいですね。

揺られているのはそのせいでしょう。

私の優れた聴覚と嗅覚をもってすれば、辺りの状況を知るなど容易いことです。


とりあえず箱ごと私を運んでいるのは人間なのです。

少し汗臭い……オス、いや男性ですね。加齢臭がないだけマシです


私を勝手に持ち出したくせに息を切らすなんて失礼な……

しかもすぐそばにもう一人の人間がいるようですね。

こちらはほんのり甘い匂いがします。こっちは♀ですかね


『……』


さらにもう一人、不思議な匂いがします……

これは人ではありませんね。植物のような匂いです。

この集団はいったい何なんでしょう……

まさかの三角ですか? ますます罪な男です。


ふと気が付くと、揺れが収まっていました。


……どうやら目的地に到着したらしいですね。

土やコンクリート……成人女性の匂いもします。

なんだか変なところに連れてこられちゃいました……

これから私はどうやってしまうのでしょうか。

……このまま黙って見て(聞いて)いるのは少々癪ですが

もう少しだけ大人しくしておきましょう。








「圭一君……ひどいです……」


桜が使い魔の女の子をぬいぐるみのように抱きしめ、さめざめとしている。

……俺何かまずいことしたか?

とりあえず学校に帰還した俺たちは、先生に報告するべくグラウンドにいた。

桜の様子が少し気がかりだが……


「ふむ……お前たちかなり早いな。まだ30分も経っていないぞ」


萩原先生が落ち着いた口調で吟味する。

ちなみに使い魔の狼はグラウンドにボールを転がして駆け回っている。

……自由だなオイ。


「さて、それでは使い魔を見せてもらおうか」


「はいっ」


桜は抱いていた女の子を。そして俺はとりあえず持ってきた箱を差し出す。

ってか早く箱のこと先生に伝えないとまずいんじゃ……

使い魔として先生に提出してる場合じゃないだろ俺!


「……フォレストの子供か。なかなかいい魔物を捕まえたな」


萩原先生は「よくやったぞ」と桜の頭を優しくなでる。

それから俺の持ってきた箱に視線を移し……そっと目をそらす。


「あのー萩原センセ?何故に見て見ぬふりをするんですか」


「……山背 桜。植物科に合格だ。おめでとう。

B棟の温室に向かって次の指示を待て」


「え……あ、はいっ!ありがとうございます」


桜が少し俺のことを気にしながらも、女の子を抱き上げてぺこりと会釈し

Bと書かれた校舎に向かって走っていく。


ちょっと待って。なんで無視するんですか先生!

……ってか、俺は?


「……杉原圭一」


「……はい」


「えー……お前は、だな……うぅむ、どうするべきか……」


萩原先生が言いにくそうに頭をかきながら、眉間にしわを寄せている


何この雰囲気。何かやばそうだ。

もしかしなくても俺は不合格だよな……

だって俺が連れて帰ってきたのは使い魔どころか

魔物であるかどうかもいまいちわかんない箱。だからなぁ

……これはやっちまったか?


「……とりあえずお前も合格だ。よくやった、とは言えないな。

A棟二階の北校舎突き当りにある購買部に向かえ」


「……へ?」


予想外です。まさかの合格通知キタコレ

なんとなく喜ぶ気になれないのはなぜだろうか。ってか封印はどうなった。封印は。

それより合格ってことはこの箱、俺の使い魔なのか? それ以前に魔物なのか?

しかも購買部ってどういうこと? もはやワケが分からないよ。


「ちなみに、私への質問は無しだ」


俺の心を見透かしたような一言で、何となく吹っ切れた俺は

考えることをやめ、箱を抱えて校舎へ向かう。

今の俺にできるのは購買部に向かうことだけだというのか……


「一体……どうしてこうなった」


一言呟いてみる。答えるものは、いない。


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