02『入学試験』
「改めて言っておくが魔物を刺激するというのはとても危険な行為だ。
大声で叫んだり、石を投げたり、暴力なんてもってのほかだ。
まぁとりあえず命は無いとだけ言っておく」
命は無いってのを強調すんなし。怖いわこの人
「では次に、試験のやり方について説明する。
諸君には簡易スキャナと護身用の武器、緊急用の発煙筒を支給する。
それでは手順だが、まずは森の決められた範囲内を探索し、魔物を探せ。
範囲は入り口から1キロまでとする。
魔物を発見したらスキャナで情報を読み取るんだ」
「こんな風にな」と言って萩原先生は手のひら大の機械を使い魔の狼に向けると
あっという間に機械が空中に文字を打ち出した。
種族 :魔獣族
名称 :牙狼 ♀ Lv678
契約者:萩原京子
新入生たちが歓声を上げる中、萩原先生は咳払いし、再び説明を開始する。
「とにかく、スキャナでどのような魔物か調べろ。
もし極端にレベルが高かったり、凶暴な魔物に出くわしたときには発煙筒を打ち上げろ。
リタイアするときも同様だ」
なかなか本格的な試験みたいだな……発煙筒って何?
「幸い森の入り口付近に生息している魔物は人懐こく、温厚な魔物だ。
出会いがしらに取って喰われるようなことはないだろう」
なるほど……それ程難しい試験じゃなさそうだ。
注意事項さえしっかり守れば危険もないだろうし。
「向こうから話しかけてくる場合もあるが……
基本的には諸君が魔物に話しかけ、親睦を深めろ。
そしてある程度仲良くなったら契約の話を持ち出せ。
契約の条件は千差万別だが、割と簡単に条件を満たすことができるはずだ。
制限時間は1時間。森は校門を出てすぐの場所にある。
そして諸君には男女二人組のペアを作ってもらう。
二人ならば互いの過ちを正してやれるし、薄暗い森の中では心細い者もいるだろう」
新入生が男女ともにざわめく。まぁ当然だな。
知らない男子と二人っきりで森を探索するなんて女子からすれば嫌にもほどがある。
……優しくていい感じな男子と二人っきりとなれば話は別だが。
毎年入学試験でくっつくカップルがいるってのはこのせいか。
なんとも羨まし……いやめでたいことだ。
「これから諸君にはリボンを支給する。
同じ色のリボンを持つ男女がペアとなる。リボンの交換は禁止だ
ペアを作った者から試験開始だ。健闘を祈る」
~
俺には赤いリボンが支給された。同じ色のリボンを持つ娘を探せばいいんだよな。
別に美人じゃなくてもいいけど、それなりに真面目な娘の方がいいなぁ……
グラウンドではカラフルなリボンを持った男女が同じ色を探して歩き回っている。
すでにペアを作って、仲良く森へ駆けていく奴らもちらほら居る。
にしても……可愛い子だらけだ。全体的に見て美少女が多い。
そして人数も多い。ペア見つかったやつスゲーな
出来ることならさっさとペア作って森に行きたいんだが……もう少し様子見るか。
あわあわオロオロしながら走り回ってる娘もいるが、無駄な体力は使いたくない。
そうこうしてる間にも、新入生たちは次々とペアを作っていき
あっという間に数えるほどしかいなくなってしまった。
そんな中、女の子が一人。不安そうに辺りを見渡している
長い黒髪を赤いリボンで結んだ娘だ。
まさかとは思うが……あの娘が俺のペアか?
「あの……もしかして……」
向こうも俺に気づいたらしく、不安げな瞳で見つめている。
心なしか縮こまった尻尾と垂れた犬耳が見える気がする。ぶっちゃけ可愛い
「えっと……とりあえずよろしく。かな?」
「あ、はい……よろしくお願いします……っ」
俺の口下手っぷりが憎い。
結局軽く自己紹介だけして、それっきりお互い無言のまま森までたどり着いてしまった
てか……無言ってこんなに気まずかったっけ……?