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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
序章【出会い】
12/114

11『cherryblossom』



「ねぇ桜ちゃん。そろそろ食堂行こっ? 案内したげるからさ」


「あ、はいっ! ありがとうございます蓮華れんげ先輩」


「ここめちゃくちゃ広いから、新入生は皆迷っちゃうの

だから同じ科の先輩が案内してあげるんだよ」


「そう……なんですか?」


植物科の三年生、蓮華先輩は「恒例行事だからね」と言って微笑む。

桜は使い魔の女の子(命名、プラム)を抱きかかえ、小首をかしげる


「使い魔も連れて行くんですか……?」


「もちろんだよ、使い魔は大切なパートナーだもん」


二人は部屋を出て、長い廊下を歩き始める


「……でも、先輩の使い魔って……?」


「あぁ、私の使い魔は『ここ』だよ」


と言って蓮華先輩は自分の頭を指差す。

そこには綺麗な茶髪に良く映える、落ち着いた色合いの花飾りがついていた。


「もしかして、その花飾りですか……?」


「そう。この子、かなりシャイな子だからねぇ

知らない人が近くにいると、こうして『擬態』するの」


「擬態……なんですか?花飾りにしか見えないです……」


「そういう桜ちゃんの使い魔もパッと見、女の子にしか見えないよ。

フォレストの子供なんだって? すごいよねぇ」


「あの……フォレストって……」


「フォレストっていうのは『護る』魔物でね

植物科のカリスマ、柳先輩の使い魔だった魔物なんだよ。

今は降魔の森の奥で次元の境界を護ってるとか、枯れちゃったとかいう噂」


「……柳先輩?」


「柳先輩は、植物科で初めて首席卒業した人でね。

決して強力ではない植物系の魔物だったのに

優秀な獣人科や悪魔科の生徒を蹴散らして、学園のトップに上り詰めた人なんだよ」


「ほへー……凄いですねぇ……」


「柳先輩は私が入学する何年も前に卒業した先輩なんだけど

今でも後輩たちの憧れの的なんだよ。

聞いた話だと……春の陽光みたいに穏やかで優しくて、

学園中の男子を虜にするほど綺麗な人で、魔物達からも大人気だったんだって。

今じゃSクラステイマーになって各地を飛び回ってるとかいう噂」


「……もはや何も言えないです」


「とにかく凄い人なんだよ。

……さて、ついたよ桜ちゃん。ココが食堂」


蓮華先輩は桜の手を引いて、食堂と書かれた大きなフロアに足を踏み入れる。

食堂の中には沢山の椅子と長机。奥には広い厨房も見える。

すでに生徒も集まり始めていて、和気藹々と夕食を楽しんでいた。


「広いですねぇ……」


「そりゃそうだよ、この学校は生徒多いし

それはそうと桜ちゃん何食べたい? 基本的に何でも作ってもらえるよ」


「あ、私は蕎麦とか食べてみたいです」


「蕎麦かぁ……渋いね。注文はこっち」


蓮華先輩は桜を連れて厨房へ歩いていく

……厨房にはエプロンをつけた赤髪の女性がいた。


女性は高速で作業をしながらも、営業スマイルはバッチリだ


「お、蓮華ちゃん! らっしゃあせぇ♪」


「こんちわ、佐々木さん。カツ丼大盛りと蕎麦一つお願いね」


「はいはいっと。それよりそっちの子は新入生かい?」


「私の後輩だよ、控えめな子だからあんまりいじめないであげてね」


「あの……山背 桜ですっ えぇと、よろしくお願いします」


「配膳の佐々木だ、よろしく頼むよ。

出来るまでほんのちょっとだけ待っててくれるかい?」


「は、はいっ ありがとうございます!」


桜は深々とお辞儀し、蓮華先輩と共に席に向かう。

お辞儀したとき、後ろにいた男子が数名ガッツポーズをしたことには気づいていない。


「白か……」「白だったな」

「いいもん見たぜ」「ってかあの娘可愛くね?」

「明日も頑張ろう」「やべぇ萌える」

「はためく神秘」「これは布教すべき」


周りでひそひそと呟く男子たちの事など知る由もなく、

桜はプラムと名付けた使い魔をなでなでしている。


「そういえば、使い魔はご飯食べないんですか?」


「食べるのもいるけど、私たちの使い魔みたいな植物系の魔物は水さえあれば大丈夫」


「じゃあ私、水を汲んできます。コップ一杯で足りますかね……?」


「大丈夫だよ。ついでに私の分も汲んできてくれない?」


「わかりました! 行ってきますっ」




桜はコポコポと冷水をコップに注ぐ

その少し離れた背後では……


(おい、お前声かけろよ)

(ハァ!? いやお前行けよ)

(なんで俺なんだよ!お前が声かけようって言ったんだろ)

(もう誰でもいいから声かけてこい)

(簡単に言うな! あの娘かなり美少女だぞ)

(これだから童貞は)

(ぶっ殺すぞコラ)

(声かけたやつに100円やるよ)

(マジで!?)


「―――うん、このくらいでいいかな?」


冷水の入ったコップを三つ抱えて、桜は席へ戻る


(おい! あの娘行っちゃうぞ)

(お前がモタモタしてるからだよ)

(人のせいにすんな。んで結局誰も声かけないのかよ)

(かけられたら苦労しねぇっての)

(ってこっち来るんじゃないのか!?)

(ちょ、まっ押すなって!)


「「おわぁぁああ!」」


「っひゃあぁ!?」


―――バシャッ


もつれた男子たちと、冷水の入ったコップを抱えた桜。

男子たちはお互いの重みで床に倒れ、驚いた桜は尻餅をついてしまった

空になったコップがカラン、と床に転がる。






「いてて……」









……男子たちの前に現れたのは、ずぶ濡れになったミニスカ美少女。

濡れた制服は透けてぺったりと肌にくっつき、桜の豊満な曲線を浮かび上がらせる


男子たちはお互いの重みすら忘れて見惚れてしまっていた



「あぅ……冷たいです……」



桜は自分の体に視線を落とし、瞬時に顔を赤く染める

そして自分の体を隠すように手で覆い、恥ずかしげに俯いてしまった。


当然、男子たちの視線は釘付けである。



「あ、あのぅ……タオル、ありませんか……?」








「桜ちゃん、遅いなぁ……」


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