表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
序章【出会い】
11/114

10『人ならざる者たち』



「……聞いているのですか杉原君っ!

原則として生徒は使い魔と行動を共にすること。

これは我が校の校則第一条です! 入学初夜から決まりを破るなんてダメですよ」


「……はい。すいません」


暁先生は細長い尻尾をパタパタさせて、お説教モードだ。

ぶっちゃけ全然怖くは無いが、これ以上いじめると流石に可哀相だ。

それに、生徒は使い魔と一緒に云々。的な事は部屋にあった紙に書いてあった。

……あの箱を持ち歩けと? いや持ち歩くのはあの刀か。

いくら小さいとはいえ、刀持ち歩くってのはかなり痛い人だ。侍じゃあるまいし


「置いて行かれて、かなりご立腹だと思うんですけどねぇ」


「ぇ……」


「ここに来る前、部屋に『誰か』居たんじゃないですか?」


「……なんで、それ知って……」


「ふふ……ただの勘ですよぅ

……もしかして当たりましたか?」


暁先生がくすりと微笑む。読心術でも持ってんのかこの人。

相変わらずよく分からない人である。

確かに部屋にはケモ娘がいたけど……


「全くもう……ダメじゃないですか。

女の子を部屋に一人置いてくるなんて……可哀相ですよ」


「もはや勘とかそんなレベルじゃないですよね!? 完璧に心読んでますよね」


「…私はただ『見抜く』ことができるだけですよ。

どんなことであろうと、手に取るように分かります。私に嘘は通じませんよ」


「今さらっとめちゃくちゃすごい事言いましたよね!?

色んな意味で物理的に不可能だと思うんですけど」


「…『私たち』に常識を求めてはいけませんよ?」


……暁先生の微笑みに、一瞬だけドス黒い何かが混ざった気がする。

俺は思わず、背筋に冷たいものを感じた。何だろう……この感じ。

ざわざわと身の毛がよだち、嫌な汗がにじむ。


俺は直感的に理解した。これは人ならざる気配だ。

やっぱりこの人は魔物なのか……?


「部屋には女の子がいたんですよね?

それで貴方が持ち帰った箱に入っていたのは、小さな刀だと思うんです」


「(何でもお見通しかよ……!)」


「さて、ここで一つ質問です

部屋にいた女の子と箱の中に入っていた刀。

この二つに共通点はありませんでしたか? よくよく考えてみてください」


「……?」


俺はハッと息をのんだ。


―――白い毛皮。

―――凍るような冷気。


……まさか……


「……気が付いたようですね。

今回は見逃してあげますけど、これからは二人一緒に行動するようにしてくださいね」


にこやかに微笑んでいるであろう暁先生の顔を、俺は直視できなかった




それから後の事は、よく覚えていない。




人が住まう世界とは違う場所。


魔界と呼ばれるその場所には、人間との共存を拒否する魔物たちが住んでいる。

そして、魔界の奥地にはそれら魔物たちの中でも別格の力を持つ邪龍族と、

とある皇族が住まう城が建っている。


その城の事を魔物たちは畏怖と尊敬の念を込めて、こう呼ぶ



―――降魔城と。



~降魔城・玉座の間~



「ご主人様ぁ~……っ! 玲紀様よりお手紙です~」


黄色いメイド服を着込んだ女性が、封書を手にとてとて走る。

決して早いとは言えないその走りは何とも微笑ましいと言える。

風に揺れる、ゆるふわカールの髪は琥珀色。

その顔立ちは美女と呼ぶに相応しく、街を歩けば誰もが振り返るだろう。


…彼女が目指す先には立派な玉座。

そこには大きな翼を持ち

禍々しい黒い鎧を身に纏う男性が堂々と腰かけていた。



「玲紀が手紙ィ? 怪しいな。それ本物か?」


「はひ、直筆のサインと黒魔女の判子……間違いありませんっ」


「何だってんだ、こんな時期に……」


男性は深々とため息をつき、手紙を受け取る。

そして、手紙を見てさらに深いため息をつく。


「パンドラを開けた新入生だと?ふざけやがって……」


「玲紀様が手紙なんて珍しいですねぇ~」


「チッ……面倒だな……」


男性はパチン、と指を鳴らす。

すると、待ってましたと言わんばかりに一組の男女が現れた。

屈強な男性と、豊満な肢体を持つ女性。

二人ともグレーの髪と、大きな翼。そして血のように紅い瞳をもっている。


「お呼びですか? 龍皇様」


「待ってましたぁ 我が君♪」


「おう、白帝が復活したらしい。お前たちは各地に連絡を回せ」


「はーいっ」「了解」


「ご主人様ぁ、私は如何なさいましょう」


「橘、お前はノワールを呼んで来い」


「畏まりました! 頑張りますっ」


「頑張らなくていいから普通に呼んで来い」





橘と呼ばれた黄色いメイドさんに連れられて、玉座の間に現れたのは

黒いワンピースを着た少女。

艶のある黒髪と雪のように白い肌。燃える様な朱色の瞳。

そして他の者と比べるとかなり小さな翼を持つ美少女である。


「お父様、私に何か用……?」


「来たかノワール。お前に頼みたいことがある

奴の名は『銀狼牙凍刃《神威》』だ。

奴とその契約者に接触し、あわよくば始末しろ」



「……汚れ役を娘に押し付けるとは……姫様が可哀相です龍皇様」


「優しい姫っちに頼むってのは酷ってもんだよ、我が君」


呼び出された男女が龍皇に軽蔑の眼差しを向ける。

それに対し龍皇は二人を睨みつけ、無言の圧力を与えた。


「やだぁ、そんなに見つめないでよぅ我が君♡」


「龍皇様……そういや今月の給料まだ貰ってないです」


「あっ私もー! 半分くらい割増して欲しいなっ♪」


「じゃあ俺は1.5倍でお願いします」




「……お前らちょっと黙ってろ」


すると、しばらくあごに手を当て、何かを考えていたノワールがぽそりと呟いた


目標ターゲットは……武器。なの?」


「……おう。だが奴は人間に近い姿をしているはずだ」


「姫様! まさかやる気に……っ!?」


「ダメだよ姫っち! こんな人の口車に乗せられちゃあ」


「おいコラ。こんな人って何だ」



「私……お父様の役に、立ちたいの。それが、どんな事だとしても……」


「「……っ」」


思わずその場にいた全員が硬直する。

二人組は涙を流すそぶりを見せ、橘は健気な姫様に感動し、

そして龍皇は無意識のうちに立ち上がり、ノワールを撫でていた。


ノワールは気持ちよさそうに目を細め、固い鎧をぎゅっと抱きしめる。


「くうぅ……っ 汚れた私にゃ眩しいよぅ……」


「姫様ぁ……そんな貴女が魔族だなんて、俺は認めません……っ」




「……ノワール。やってくれるか?」



……魔族の姫君、ノワールは黙って頷いた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ