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ライフ・ダイブ・オンライン  作者: 耳口王剣
第1章 月下の逆さ剣
9/25

9話 レベル・アップ ~強くなりたい~

「グオオオオオッ!」

獰猛な唸り声とともに、野犬型モンスター、ドッグが襲い掛かってくる。

「っ!」

シズは身を投げるようにして躱す。それが精一杯で、一撃を当てる余裕などなかった。

だが、それではいけない。攻撃の避けられたドッグは前進し、後衛を射程に納めてしまう。

だからこそ、避けるにしてももう少し動き方を考えなければいけなかったのに――!


瞬間、ドッグの体に矢が刺さった。見れば、弓を構える初老の男性……オーディンの姿がある。

「おおおりゃああ!」

そして、攻撃を受けてわずかにドッグが硬直した隙を見逃さず、もう一人の前衛、<戦士>ハイドが一撃を叩き込む。

「ギャン!」

弓矢の1発、今の1発、そして出会いざまにシズから食らっていた1発の計3発を受け、ついにドッグは倒れた。

茶色い犬の体を大地に横たえ、静かに消滅していく。ゲームの時と同じく、流血はない。

その後には、革袋が残されていた。それを拾いながら、ハイドがこちらを見てくる。


「おいおい、しっかりしろよ? 俺ら前衛が抜かれたら、後衛に攻撃いっちまうんだぜー?」

「ご、ごめん」

彼の言葉にそこまで責める調子はなかったが、シズは軽く頭を下げる。

少し前にリリに大層なことを言っておきながらこれでは、己の未熟さに腹が立つというものだ。

「まあまあ。シズくんとリリさんは、これが初めての戦闘なのですから」

と穏やかな顔で笑うのは、ドッグに弓矢を命中させたオーディンだ。ただし、それは彼の腕前が凄いというより、システム的な補正が大きい。

弓スキルを持っている者が弓矢を使えば、ある程度矢が目標から外れても、まるでミサイルのホーミングのように軌道が変わり、対象に命中するのだ。


「そうだな。初めての攻撃を避けられただけでも、大したものだよ」

後衛の位置まで下がって皆を見守る、ピュール教官が言う。

「ま、また次……がんばろ……?」

同じく後衛でサポートをしている、リリが続いた。

「……はい」

うなずいて、シズは体を立ち直らせた。


「今倒したのがドッグ。見ての通り犬型で、このゲームにおける最弱モンスターだ。攻撃手段は、タックル、前足での打撃、口を使っての噛み付きだ。噛み付きは強力だが、発動前に片足で軽く地を掻く動作があるから、見逃さないこと。いいな、リリくん?」

「は、はい!?」

「後衛は直接戦わない分、全体の戦況が見渡せるからな。可能な限り、味方をサポートしなければならない。今みたいに一体くらいならいいが、複数の敵を相手にする時は、後衛が全体を見回して指示を出すのが重要になるからな」

「わ、わかりました……」

「なぁ、ゲットしたアイテムとか金ってどうやってわけんの?」

ドッグがドロップした革袋を手に持って、ハイドが問う。

ピュールは、それを訝しげに見つめた。


「おかしいな……パーティーを組んだ時、初期のアイテム獲得設定は順番獲得になっているはずなんだ。順番獲得ってのは、例えば一体目を倒すとシズくんだけに見える革袋がドロップし、二体目を倒すとハイドくんだけに見える革袋がドロップして……と、それの繰り返しなんだ。だが、革袋は俺にも見える……シズくん、何か設定をいじったかい?」

問われ、ふるふるとシズは首を振る。特にいじった覚えはない。パーティーウインドウを開いて確認してみるが、設定はちゃんとアイテム順番獲得になっていた。

「ふむ……今まではシステム的に特定のプレイヤーしか見れなかったものが、全員に見れるようになっているということかな……。仕方がない。手動で順番獲得と行こう。最初はシズくん。次に革袋が出たらハイドくん。その次はオーディンさん。そしてリリくんだ。構わないかな?」

誰からも異論は出ず、シズは革袋を受け取った。紐を解くと革袋は消滅し、所持金がわずかに増えた。

「何入ってたー?」

好奇心からか尋ねてくるハイドに、所持金の増量を計算し、5ゴールドだよと答えた。


「よし、じゃあ次のモンスターを探そう。この森で他に出現するのは、フォックス、ディア、ウルフ、ベアーだ。どれも現実の動物と同じ姿だな。だが、シズくんやリリくんはまだレベル1だから、フォックスよりも上の相手は、見かけても無視するように。フォックスも、3体以上の群れでいたら避けるように。ノンアクティブのモンスターでも、仲間を攻撃されるとアクティブになるからな」

ピュールの注意に、はいと返事をし、シズたちは森の中を歩む。無論、キャンプ地点からはそう離れぬように。



すぐに、新しいモンスターは見つかった。3匹からなるドッグの群れだ。

「3匹……まあ、いけるか」

ピュールの許可を受け、シズとハイドは剣を構え、背後のオーディンも弓に矢をつがえた。リリのかけてくれた防御力上昇スキル<ホーリーアーマー>の効果時間は、まだ過ぎていない。

このままいこう、そうしようとした時。

ドッグたちがこちらに気づいたような素振りを見せ――襲いかかってきた。

「なっ!?」

それはこの中で一番レベルの高い、ピュールの声であった。

ベテランの彼であるからこその驚き。ノンアクティブモンスターが、向こうから襲ってくるという不条理。


だが、考えている余裕はない。もう、敵は目の前だ。

「っ――!」

牙を剥き、飛びかかってくるドッグの勢いに、思わずシズは剣を突き出した。

まずい、と思った時にはもう遅い。

<弾き飛ばし>が発生し、<青銅の長剣>がふっ飛ばされた。


ドッグはそのまま容赦なく、右腕に噛み付く。

痛みがくる。と言っても、無数の爪楊枝で少し刺された程度のものだ。だが、HPゲージが減っていく。0になったら……どうなる?

深く考えないようにしていた想像がよぎり、シズの体から血の気が引いた。

「シズ!」

ハイドが叫ぶも、彼にも残り2匹のドッグが襲いかかって行く。

「くぅっ……!」

シズがなんとかせんともがいた瞬間。

「<アークスラッシュ>!!」

巨大な真空波が、シズに噛み付いていたドッグ、そしてハイドに群がっていたものたちをぶった切り、一撃で消滅させた。

振り返れば、ピュールが剣を振りぬいた姿で立っている。

彼が今のスキルを放ったのだろう。自分たちと彼では、50レベルの差があるのだ。


「シっ、シズくんっ、怪我……っ!」

リリの声に我に返る。腕を見るが、特に血も穴も開いていなかった。ただ、HPだけが減少しており、ゲージが半分以下になったことを示す、黄色に点滅していた。

「<ホーリーヒール>!」

彼女が手をかざすと、緑の光がこちらを包み、HPが見る間に回復していく。あっという間に満タンだ。

「ハイドくんも、大丈夫ですか?」

オーディンの問いに、少し呆然としていたハイドはうなずく。そしてピュールを見る。

「ど、どういう事だよ? ドッグはノンアクティブモンスターじゃなかったのか?」

「そ、そのはずだ……」

ピュールは首をひねりながら、

「可能性としては、他のパーティーが攻撃したものの倒さずに去った場合だ……そうすると、そのモンスターはしばらくアクティブ状態になる……が……この周囲にそんなパーティーなどいないだろうし……」

場を沈黙が包む。


シズは少し考えていたが、不意に一つの仮説が浮かんだ。

「あの……それって、NPCと一緒じゃありません?」

「あん?」

ハイドが、きょとんとした目を向けてくる。

「ほら、あんなことが起きてから変わったのって、NPCもそうでしょ。機械的な反応しかしなかったのが、本物の人間みたいになって……」

「なるほど……それが、モンスターにも起きたというんだな……革袋は変わらず出現するのは、ゲーム的で奇妙だが……」

「モ、モンスターも……本物の生き物みたいに……なっちゃったって……事、ですか……?」

リリが眉根を寄せて困惑する。


ふと、シズの頭によぎるものがあった。ピュールに問う。

「あ、あの……この森の熊って、アクティブモンスターですか?」

「いや? この森は初心者エリアだ。熊がいるのは奥の方だが、いずれにしろすべてノンアクティブモンスターだ」

その返事に確信を得る。

「ボク、ここに来る前、熊に襲われたんです。やっぱり、モンスターも……」

「意志を持って行動しているというわけか……参ったな……全部アクティブモンスターみたいなもんか……」

一旦戻った方がいいかもしれんな、とピュールはつぶやく。

「俺は反対だ!」

だが、それに異を唱える者がいた。ハイドだ。


「だがハイドくん。今の通り、連中は見境なしだぞ」

「だからって帰ってどうすんだよ? ここのモンスターより弱い奴なんていないんだろ? だったら、俺らはここでレベル上げするしかないじゃんか。それなら、これ以上変なことが起きる前にさっさとやっといた方がいいだろ」

それも、ある意味では正しい。

ただし、様々なことが未知数の現状では、危険な賭けなのも事実だった。

ピュールは腕を組んで目をつむり、しばらくして、言う。

「……多数決を取る。戻るべきかこのまま狩りを続けるべきか、どちらかに手を上げてくれ」

戻るべき、に手を上げたのはピュールとリリだった。

狩りを続けるべき、にはハイド、そしてオーディンとシズが賛同した。


「オーディンさん、シズくん。続けようと思った理由は?」

「私としては、ハイドくんの意見と概ね同じですね。現状、モンスターには対処できていますし、仮にこのままキャンプに戻っても、低レベルの私達では特にやる事がないでしょう。頼もしいピュールさんがいる間に、レベルを上げておくのが効率的だと思いました」

オーディンの答えにシズも続く。

「ボクも同じ意見です。レベル上げは、多少のリスクを犯してでも、今やらなければいけないことです」

「よく言った!」

突然、ハイドに肩を抱かれる。

「お前なよなよしてるけど、言う時はちゃんと言うよな! いいぜ、そういうの!」

「ちょっ、ちょっと、やめてよっ!?」

どぎまぎして、シズはハイドを突き放す。

「なんだよー、ノリ悪りーなー」

ハイドは唇を尖らせた。

「……わかった。狩りを続行しよう。ただし、危険な状況になったらすぐ帰るぞ」

ため息混じりのピュールの言葉と共に、狩りは再開された。



そして、3度目の遭遇。

またもや3匹、しかし今度は一匹大きなドッグがいる。

「なんだあいつ!? ボスか!?」

「多分リーダー個体……ゲームの時、稀に出てくる強化モンスターだ。気をつけろ、ドッグが元だからそこまでずば抜けてはいないが……」

「わかってるよ。十分やばいオーラ出てるって……!」

ハイドが言った瞬間、3匹のドッグたちは唸り声とともに襲いかかってきた。左右にドッグ、中央に一回り大きなリーダードッグだ。

「リリさん! 左、普通のドッグからいきますよ!」

「は、ははい!」

オーディンとリリ、二人が左のドッグに狙いを合わせる。


「<アローショット>!」

スキル効果で威力と命中率の上がった矢が一撃を与え、

「<ホーリーフォース>!」

杖から放たれた白い光の玉が、更なる一撃を加える。僧侶の攻撃スキルは燃費が悪いそうだが、なりふり構っている場合ではないだろう。

それがトドメとなり、左のドッグは消滅した。

「おりゃあ! <フルスイング>!」

一方、右に迫っていたドッグも、出し惜しみをやめたハイドのスキル攻撃を受け、一撃で消え去った。

しかしその間に、中央のリーダードッグはシズに迫る。


「ゴアアアアアッ!!」

巨大な顎門を開き、よだれとともに牙を撒き散らす巨犬。

「ぐっ……!」

リアルと何ら変わらぬ……あるいはリアル以上の迫力に、怖いと思わぬはずがない。

だが落ち着け。さっきのように、剣をむやみに突き出してはダメだ。

最初の時のように避けること。そして、可能ならばすぐに反撃。

しかし、相手は今までのドッグよりも更に大きい。避けるには、前回以上に大きく飛ばなければならない。

……なんとか、避けられないか?

(――避ける?)


何を避ければいい? 

それは、敵の攻撃部位だ。

そして攻撃部位に剣が当たれば、<弾き飛ばし>が発生し、武器が吹き飛ばされる。

この世界はゲームと現実が交じり合ったような奇妙なところがあるが、少なくとも<弾き飛ばし>はゲーム通りに起きた。


ならば、逆に言えば、攻撃部位にさえ当てなければいいのか。


眼前、迫るリーダードッグを見る。

恐らく攻撃はその牙での一撃。ならば。

「うわああああああ!!」

敵が跳びかかる、その瞬間を狙い腰を落とす。

そして体を斜め前に投げれば、頭上の横を顎門が通りすぎていく。

リーダードッグの体と、シズの体。その二つが交差する瞬間。


肩に乗せた長剣で、無防備に広げられた足を、切り裂いた。

「ギャン!」

リーダードッグの鳴き声が、響き渡る。

「はぁっ、はぁっ!」

その声を聞きながら、背後を振り向く。触れるかギリギリの避け方をしたため、大きく体勢を崩すこともなかった。

「グウウウウウ!」

リーダードッグは仁王立ちし、こちらを睨みつけている。足に傷はないが、シズに切られた分、確かに消耗しているようだった。

そこへ。


「<アローショット>!」

「<ホーリーフォース>!」

弓と光弾の直撃を受け、リーダードッグの体が揺らぐ。

「<フルスイング>!!」

トドメとばかりにハイドのスキルが入り、見事そのHPを削りきった。

巨犬の姿が消滅し、後には革袋だけが残る。


「いよっしっ!」

「やった……!」

声の重なったハイドとシズは顔を見合わせ、どちらからともなく笑う。

「すっげぇじゃんシズ! 避けながら攻撃するなんて」

「まぐれだよ……上手い位置に、体が動いたんだ……」

「いや、見事だったぞシズくん」

全てを見守っていたピュールが、近寄ってくる。


「まさかこんなにも早く<カウンター>を成功させるとは、思ってもみなかったよ」

「<カウンター>……ですか……?」

「ああ。相手の攻撃を避けつつ反撃を入れる技術だ。威力が大きく上昇する。と言っても、攻撃部位に当ててしまうと勿論<弾き飛ばし>が発生してしまうから、リスクが大きい。突進のように、体の前面全てが攻撃部位となる技もあるからな。体さばきだけでなく、相手の攻撃部位を見極める観察力や知識も重要となる。さっきは、よく敵が噛み付き攻撃をしてくると判断し、体を動かせたね」

「まあ、一回喰らいましたし……」

「シズくん、おめでとう。ハイドくんも、鮮やかな手並みでした」

「あんがとよ、オーディンさん」

「そうだな、ハイドくんもよく的確にドッグを倒して――」

と、オーディンとピュールがハイドの戦闘について話し出した時、ちょこちょことリリがやってきた。


「あ、あの……シズくん……」

「え?」

「か……格好……良かったよ……」

シズは一瞬きょとんとしたが、すぐにニコリと笑い返した。

「ありがとう」

リリは照れたように、フードで顔を隠してしまった。



それから日暮れまで、シズたち一行は狩りを続けた。

シズ、そしてリリは初めての戦闘ということもあって前半は動きもぎこちなかったが、後半にはほぼハイドたち並の働きを見せられるようになっていた。

レベルは、ハイドとオーディンが12、シズとリリは10にまでなっていた。半日かけてこの成長速度は早いのか遅いのかわからないが、ピュールによると、低レベル時は割りとサクサクレベルアップするらしい。20レベルを過ぎた辺りから、その軽快さがなくなっていくのだとか。

ちなみに皆、格上の武器、そしてサブクラスを手に入れられるレベルになっているのだが、町に行けぬ以上どうしようもない。


「……よし、いい加減日も暮れる。ここまでにしておこう」

ピュールの号令で、狩りは終わった。皆、キャンプに向けて歩き出す。

「………………」

 シズは談笑する皆の、少し後ろを歩いていた。


「……シズくん、何か不満そうですね?」

「あ、いえ、その……」

俯いて歩いていると、同じように下がってきたオーディンに話しかけられた。シズは少し躊躇したが、正直に答えることにした。


「……<カウンター>、中々成功しなかったなって」

あの後も、何度かシズは戦闘で<カウンター>を放とうとしてみたが、そうそう上手くは行かなかった。<弾き飛ばし>を起こしパーティーに迷惑をかけてしまうこともあったので、後半はほぼ封印である。

そうですねぇ……と、オーディンは笑顔を浮かべたまま顎に手を当てる。

「シズくんの気持ちは良くわかります。初めて自分でできた技ですからね、またやってみたくなるでしょう。……その割りに、最後の方はあまり使おうとしませんでしたね?」

「失敗すると、武器が飛ばされて……皆に迷惑かけますから……」

「それは、そうですね。けれど、あまり一人でかしこまっても仕方ないですよ」

「え?」

彼は微笑んで、こちらに顔を向ける。


「<弾き飛ばし>が起きると危ないから、パーティーの時に<カウンター>の練習をするのはやめる……では、いつ練習するんです? 一人の時ですか? 一人の時に<弾き飛ばし>が起きたら、もっと危険じゃないですか?」

「それは……」

「こんな事になって、皆余裕がなくなっています。でも、だからこそ、役に立つ可能性のある力を得るための修練なら、もっと試してみるべきですね。時と場合にもよりますが、今の我々はレベルも上がり、この森での戦いも楽になってきています。君が多少の失敗をしたところで、十分フォローできるでしょう」

「で、でも、それで<カウンター>がものにならなかったら、ボク、皆に迷惑かけただけで……」

「失敗した場合の事を考慮にいれておくのと、失敗を恐れるのは違いますよ。体の動きが硬くなって、思うように動かなくなります。シズくん。行き過ぎもいけませんが、もう少し人に寄りかかっても良いと思いますよ。これだけ余裕のある状況が、いつまで続くかもわからないのです。時には、勇気をもって賭けに出るのも大事です。そうでない道を選び続ければ、表面上は何も失わないかもしれませんが、結果として、より多くのものを失うこともあります。見えない時間との鬼ごっこですから、人生は」

シズは、黙ってオーディンの言葉を受け止めた。


確かに、<カウンター>は今のところ成功率が低いし、失敗すれば窮地に陥る。だが、成功すれば回避と同時に敵へ傷を与え、後衛を危険にさらすことなく戦える。そのメリットは大きい。

余裕があるのなら、試してみるべきだ。仲間にも迷惑をかけることだから、そう気軽にはできない。だが、せめて相談くらいはするべきだろう。それから考えたって、まったく問題ないのだ。

「……ありがとうございます、オーディンさん。皆に相談してみて、明日からどうするか考えてみます」

「私も、前衛の方が頼もしくなれば、落ち着いて戦えますからね。楽しみにしています」

二人が笑顔を交わした、その時だった。


悲鳴が、森に響いた。


「今の……どこから!?」

「先……キャンプの方じゃないのか!!」

「急ぎましょう!!」

シズたちは、駆け出す。

草を蹴り、木々を抜け、視界内のマップに従い、目指すはキャンプ。

ゲームキャラクターとして強化された脚力はあっという間に森を走りぬけ、そう離れていなかったこともあり、すぐに目的地へたどり着く。


だが、すでにキャンプは壊滅していた。

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