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0次元からの呼び声  作者: 山本セバスチャン
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第3章:交差する運命 第3.1章:観測者から共鳴者ヘ

第3章:交差する運命


第3.1章:観測者から共鳴者ヘ


プロジェクトルームの会議室は、息が詰まるような熱気に包まれていた。


白衣に身を包んだ科学者たちが、ホログラム投影された時空モデルを前に、それぞれの理論をぶつけ合っている。

量子物理、超ひも理論、ゲージ場、非局所性――議論は高度だが、どこか空転していた。


「ゼロ次元って何なんですか?実体がないものにどうやって接触するんですか?」

「情報波?そんなもの、観測できるのか?」

「意志?まさか宇宙に人格でもあると?」


質問は鋭く、しかし不安と疑念を隠しきれていなかった。


中心に立つ田所博士は、騒がしさにも動じず、ただ一つの公式をホワイトボードに書き込んでいた。


I(x) = Σ ϕ(p₁, p₂, …, pₙ)

(I:情報の重なり / ϕ:素数系列に沿った干渉波)


「この式が意味するのは、“すべての次元は情報の干渉によって生まれる”ということだ。

 そしてゼロ次元とは、情報がまだ展開されていない“純粋な可能性の場”に過ぎない」


博士の声は穏やかだが、言葉の一つ一つが深く刺さっていた。


「そして我々の任務は――この“場”と交信する方法を探ることにある。

 共鳴、重なり、そして“直感”。」


その言葉に、陽平は思わず身じろぎした。



会議の後、施設内のカフェテリアで陽平はひとり考え込んでいた。


――俺みたいな素人が、ここにおってええんやろか。

周りはみんな、論文何本も出してるような天才ばっかりや。


不意に、隣の席から声がかかった。


「さっきの会議、疲れたな。君が佐々木くんだね?」


振り向くと、明るい笑顔の青年が手を差し伸べてきた。


「神谷悠介。AI担当。ALICEの設計主任だよ」


「アリス……あの少女型のホログラムか?」


「そうそう。量子処理と感性モジュールを組み合わせた実験機。

 論理じゃ捉えきれない信号に“反応する”ための、未来の知性さ」


神谷は続けた。


「君の直感、博士は本気で期待してる。ALICEと君の感覚が融合すれば、

 人間にもAIにもできなかったことが起きるかもしれない。

 まさに“交差点”ってわけさ」


実験前夜――


田所博士は佐々木を呼び出し、静かに語りかける。


「佐々木くん、本当の事を言えば、君には“オブザーバー”以上の役割がある。

それは――共鳴実験で“共鳴者”として、宇宙のリズムを感じ取り、導くことだ」


「共鳴実験って、何を“共鳴”させるんですか??」


田所は一瞬考えてから、微笑みながら答えた。


「簡単に言えば、“この世界と、ゼロ次元(モノリス)との間の情報の振動数”を共鳴させる作業だ。

わたしたちが作ったパルス(佐々木の波長をAIが解析して作ったパルス)――あれは、ゼロ次元に向けた“問いかけ”」


「問いかけ?つまり……コンタクトってこと?」


「そう。でも普通の言葉じゃ通じない。だから私たちは数値パターン=共鳴コードを使う。

ゼロ次元では“言葉”じゃなく、“リズム”や“構造”だけが意味を持つから」


神谷が会話に加わった。


「正確には“情報密度の周期パターン”だな。

僕らはそれを光量子と重力波に乗せて、空間の基底振動に向けて打ち込む」


「そしたら、ゼロ次元がそれに反応して……揺れるんか?」


佐々木の質問に、田所博士がゆっくりと頷いた。


「その通り。ゼロ次元は、“何もない”わけじゃない。

全情報の潜在場――“静寂の海”だ。そこに、こちらから特定の波形で情報を落とすと、

一致する周波数の“記憶”や“意志”が浮上してくる。まるで水面に石を投げた時の波のようにな」


佐々木は眉をひそめた。


「それって……ゼロ次元って、記憶を持っとるってこと?」


「そう考えていい」田所は真剣な目で言った。

「私たちはこの宇宙を創った“最初の問い”を、もう一度問うている。

その応えが返ってくれば、それは単なる物理現象じゃない。宇宙そのものの声かもしれない」


「私たち科学者は、理論とデータに縛られている。

だが、君は違う。君の“直感”こそが、宇宙と繋がる鍵なんだ」


戸惑う佐々木に、田所博士はこう続ける。

「宇宙の声を聞き、チームを成功に導けるのは――君だけだ」



しばらく黙っていたが、佐々木は田所博士に向き直り、ぽつりと尋ねた。


「なあ田所博士。……俺は、結局、何をすればええんですか?」


「そこにいてくれ」


「……それだけ?」


「それだけで、すべてだ」


その答えに、また佐々木は黙った。

だが、納得できないまま、再び声を上げた。


「正直言うて、俺には、よくわからん。この実験、すごいんやろ?けど、俺は機械もデータも、知らヘんし、・・・ただ“共鳴”に必要って言われて呼ばれて……ほんまに、それでええんですか?」



「共鳴に必要なのは、理論でも装置でもない。意志だ」


「意志?」


田所は頷く。


「ゼロ次元との接点は、“情報”であり、“揺らぎ”であり――そして“生きた問い”だ。

佐々木君、君の“存在”は、そのまま宇宙への問いかけになっている 君は、万物が数で出来ているのか答えを求めてないか?」


「……俺が、宇宙への問いかけ?」


神谷が補足する。


「この実験装置は“場”を整えるだけ。

でも“共鳴”が起こるかどうかは、観測者――つまりお前の“意識の状態”がトリガーになる可能性が高い。

お前の中の“本当の問い”が、ゼロ次元に届く鍵なんだよ」


佐々木はゆっくりと視線を落とした。


「俺の中の問い、か……」


田所がようやく振り返り、まっすぐに佐々木を見た。


「思い出せ。君が“モノリス”に惹かれた理由を。

その時の君の心が――この宇宙が待ち望んでいた“問い”そのものだったんだよ」

「そして、“考えるな。感じろ!"だ。」


佐々木の心の奥で、何かが静かに鳴った。


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