第2.3章:兆しの先に
20××年 東京上空 物体は既に浮かんでいた!?
第2.3章:兆しの先に
クロノス社・地下戦略室。
無機質な空間に浮かぶホログラムが、東京郊外の、ある施設を示していた。
そこに微細なエネルギーパターンの異常が検出されている。
黒須京介は椅子に深く身を預け、指先でデータを回転させながら静かに呟いた。
「……ようやく、始まったか」
背後で待機していた秘書官・氷川が口を開く。
「例の観測値、量子特異点の発生周期と一致します。外部干渉を疑いましたが、現場は厳重な軍の統制下にあります。おそらく……」
「田所だな」
黒須は即答した。目を細める。
「“あの男”の理論が形になりつつある。政府がようやく彼に賭ける気になったか。遅すぎたな」
「命令を」
「全ての情報を洗え。施設の構造、人員構成、特にAIの制御プロトコル。
“彼”の論理は美しいが、必ず“感情の綻び”を残す。そこに入り込め」
「かしこまりました。……田所直哉と旧知でいらしたと?」
黒須は一瞬、視線を止めた。
そして静かに笑う。
「“旧知”とは便利な言葉だな。……あいつは、星を見ていた。私は、影を見ていた。
似ていたからこそ、永遠に交わらない」
彼の脳裏に、白衣姿の田所が浮かぶ。
講義室の片隅、狂気と紙一重の理論を熱弁しながら、それでも目だけは真っ直ぐだった若き日の彼。
(あの男が、まだあの目をしているなら――)
黒須はゆっくりと立ち上がった。
「始めよう。これは対話ではない。――“決着”だ」




