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0次元からの呼び声  作者: 山本セバスチャン
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第5.2章: 失敗

第5.2章: 失敗


3時42分。

O-Call第3次干渉テスト直後、世界中の複数地点で異常現象が発生した。


・南米チリの天文台:観測装置に未知のノイズが混入。

・フランスの大気モニターで局地的な電子スパイク。

・東京23区では一部の個人スマートデバイスに、未登録の2進パターンが表示される。


《00100011 01001100 01000001》

“C-LA”――Cross Layer Alert(層間干渉警報)


アリスが即座に解析を行い、言った。


「これは“次元間の重なり”が外部に漏れ出たサインです。

 ゼロ次元の情報場が、一時的に現実空間へ浸透したのかもしれません」



国内のニュースは沸騰し、O-Callに対する賛否は世論を二分し始めた。

だが、事態の本質は――水面下で進行していた。


【国連安保理・臨時非公開会合】


東京時間18:00。

日本、アメリカ、中国、ロシア、フランス、イギリスが緊急招集された。


国連安全保障理事会 特別非公開会合 ――


灰色のカーテンが引かれた会議室には、時計の秒針すら聞こえるほどの沈黙が支配していた。その空気を最初に破ったのは、中国代表、李季元リー・ジーユエンだった。


■中国代表・李季元


眉間に深い皺を寄せながら、手元の資料を閉じる。口調は冷静だが、言葉には棘があった。

「O-Call計画によって引き起こされたと思われる“次元不安定現象”は、地域的被害に止まらず、全地球的な安全保障問題に直結します」

その目は、日本代表に向けられているというより、その背後にある「国際世論」に向けて突き刺していた。

「本件は、明確な科学的根拠が提示されない限り、“計画の一時停止”を強く要求する」

──狙いは明白だった。“科学”の名を盾に、計画を止めさせる。だがその裏には、「ゼロ次元交信技術の独占は絶対に許さない」という、中国独自の国家戦略が見え隠れしていた。



静まり返った空気を破るように、隣席の男が椅子を軋ませた。ロシア代表、セルゲイ・マリューチン。顎鬚を撫でながら、皮肉げな笑みを浮かべていた。


■ロシア代表・セルゲイ・マリューチン


「我々は、モノリスという物理的現象の背後に“情報兵器”の存在すら疑っている」

声は抑揚を欠いていたが、その奥底には火薬の匂いが漂っていた。

「この研究が軍事応用に転用された場合、グローバルな“次元覇権”競争が始まることを警告する」

彼の視線はまっすぐ日本の席を射抜いていた。氷のような青い瞳が、“お前たちは何を始めたか分かっているのか”と無言で問いかけていた。

ロシアの狙いは、技術の軍事利用の芽を早期に摘むことに見せかけて、逆にその情報を引き出すこと。彼らはすでに、計画にスパイを送り込んでいるという噂もあった。



対照的に、アメリカ代表団は控えめだった。だがその沈黙の裏側には、綿密な計算があった。


米国務省次官補オフレコ


会議後、記者団に囲まれた補佐官は、苦笑を浮かべながらこう語ったという。

「我々としては、日本の研究は現時点で純粋な科学的試みに留まると理解している」

──その笑みは、表向きの“理解”を示す一方で、裏では“監視対象”として注視していることを示唆していた。

「だが“もし”交信が、国家的に秘匿されるものであるならば――話は別だ」

目は笑っていなかった。

アメリカの狙いは、「観察者」としての立場を維持しつつ、最終的には情報共有を前提とした“技術提携”に持ち込むこと。カードはまだ切らない。ただ、日本が“秘密”を選ぶ瞬間を、彼らは待っている。

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