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0次元からの呼び声  作者: 山本セバスチャン
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第4. 7章:科学者Ⅹ

第4. 7章:科学者Ⅹ


東京・六本木、深夜の高層ビル。最上階の応接室には、重厚なガラス越しに都心の夜景が広がっていた。


「……随分と遅くまで、付き合ってもらって申し訳ない」


黒須京介――クロノス社のCEOは、琥珀色の液体が揺れるグラスを傾けながら、対面の科学者をじっと見つめた。


「あなたの論文、拝見しました。正直、驚きましたよ。ゼロ次元理論の実証に、ここまで迫っていたとはね」


科学者――Xは、目を伏せたまま応じない。


「しかし田所は、あなたの貢献に気づいていない。いや、気づいていても、あえて光を当てないつもりなのかもしれない。独占欲の強い男だから」


科学者Ⅹの手がわずかに動く。グラスに伸びた指先が止まり、黒須の言葉の意味を噛みしめているようだった。


「あなたの理論を正当に評価する者が、ここにいます。資金も、設備も、研究チームも……すべて提供できる。我々となら、世界はあなたの名を記憶するでしょう」


「……だが、あなたたちの目的は”真理”ではないでしょう?」


静かだが、芯のある声だった。


黒須は微笑を崩さず言う。


「真理は利用するものです。崇めるものではない。……それが、私の哲学です。あなたが”理想”に生きるのなら、どうぞこのまま見過ごしても構いません。ただ、その間に誰かが、あなたの理論を盗み、歪め、歴史を書き換えるかもしれませんが」


沈黙が流れる。


やがて、Xは立ち上がった。


「考えさせて。……ただ一つだけ言っておく。私は、科学者」


黒須は立ち上がらず、その背を見送った。


「ええ、先生。あなたが“科学者”である限り……いずれこちら側に来るはずです」


夜景に背を向け、部屋のドアが静かに閉まった。


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