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0次元からの呼び声  作者: 山本セバスチャン
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第4.2章:安全保障

第4.2章:安全保障


【東シナ海・上空 06:40 JST】


日本のEEZ(排他的経済水域)付近で、中国の空母「遼寧」が艦載機を多数発艦。

同時に、ロシアの戦略爆撃機「Tu-95」2機が北海道上空に接近。日本のF-15Jが緊急発進する。


「これは“示威行動”ではない。明確な圧力だ」

自衛隊幕僚監部の会議で、防衛大臣が唇を噛んだ。


東シナ海上空――


東京にモノリスが出現してから、ちょうど96時間が経過した。


だが、その“異常”が起きたのは空だけではない。

世界は――すでに“臨界”を迎えつつあった。


水平線の向こうに、巨大な鋼鉄の群れが浮かんでいる。


日本海上自衛隊護衛艦群

米海軍第七艦隊 空母ロナルド・レーガン

その対峙線の先に構えるのは、

中国海軍空母 遼寧

ロシア海軍空母 アドミラル・クズネツォフを中心とした連合艦隊。


午前11時45分。

艦橋に緊張が走る。


「各艦、戦闘配備完了。射撃管制、パッシブモードへ移行」


「敵艦隊、我が艦隊と平行航行中。距離1万2千ヤードで接近継続」


曇天の空。重苦しい風が艦橋を撫でるように吹き抜けた。



上空。防空識別圏・南縁。


「こちらブルーフライト01。中国機J-15およびロシアSu-33、計4機が並走中。

レーダーロックオンはしていないが、至近距離でのフライトを継続」


「高度、推定7500フィート。フレア弾確認。明確な挑発行為と見られる」


「ちょっとでもトリガー引いたら、世界が終わるぞ……」

米軍パイロットの苦い独白が、密閉されたコックピットの中に漏れる。


その横で、自衛隊パイロットは冷静に応答。


「こちら赤鷲01、警告飛行を開始する。通信維持せよ」


二国間の静かな空中戦が、音もなく進行していた。



水面下、深度200メートル。


「敵潜、水中音探知。北北西からロシア原潜“アクラ型”が接近中。距離6000ヤード」


「音響ステルスモード維持。雷撃回避行動はまだ取るな」

海上自衛隊「そうりゅう型」艦長の声が、圧縮された空気の中で響く。


ここでは、沈黙こそが最大の武器だった。


海中に響くのは、魚雷の発射音でも、爆発音でもない。

緊張で軋む筋肉と、操作卓に置かれた冷えた手の音だけだった。



横須賀統合幕僚監部


巨大スクリーンに映し出される艦艇と航空機の配置図。

指令席に座る真田智子は、通信ヘッドセットに低く指示を出す。


「日本政府より通達。先制攻撃は厳禁。

ただし、挑発には断固たる態度で臨め。これは“抑止”の戦いだ」


隣では米軍司令官が腕を組みながら唸るように呟いた。


「……ここまで距離が詰まったら、もう抑止じゃない。

“事故”が戦争を始めるぞ」



そして――午後12時17分。


その“事故”が、現実になりかけた。


敵機の一機が急旋回。F-35に接近し、レーダー照準を一時的に照射。


「ロックオンされた!!カウンターメジャー展開!」


警報が機体内に鳴り響く。


F-35の機体からは自動的にフレア弾が発射され、

同時に護衛艦「いずも」のCIWS(近接防御火器)が旋回を開始――


艦橋内は、誰一人として息をしていないかのように静かだった。


モニターの中で、敵機は――急角度で旋回。

海面すれすれに機体を滑らせ、飛び去っていった。


「……ふぅ。危なかった」


誰かが小さく息をついた。

だが、その空気が解けることはなかった。



なぜ、この異様な緊張が続いているのか――


その中心には、“モノリス”という未知があった。


中国・ロシアは、日本が極秘裏に開発した“量子次元兵器”ではないかと疑い、

アメリカも本音では「情報を全て開示していない」と見ていた。


日本政府は、真実を語ることができなかった。

ゼロ次元との交信、ALICEの存在、陽平の共鳴――

いずれも、理解も説明も容易ではないからだ。


だから、世界は――引き金に指をかけたまま、“誰かの説明”を待っていた。


この軍事対峙が終わるのは、

プロジェクトO-Callが“交信の成果”を世界に示す時だけ。


それまでは、海も空も、地図にない“臨界のライン”の上で、踊り続けるしかなかった。


同時刻、日米共同通信線が設置される。

しかし、米国の対応は慎重だった。


「モノリスに関して軍事的判断はしない。科学的見地からの対話を日本に委ねる」

――ホワイトハウス報道官(非公式コメント)


中国・ロシアは、表向き“平和的対応”を主張しつつも、裏では激しい外交圧力を日本にかけていた。

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