Shutter:5 愛車を撮る〘カメラ回〙
カメラを具現化できたことだし、早速レベル上げだ。
レベル上げは、元の世界で得意中の得意だった。
何万匹もの銀色に光るスライムさんや、ハッピーさん、武将たちを狩ったことやら……。
この世界でも、カメラを通してそれに近いことができるのは、やりがいがある。
まずは記念に、愛車を撮影することにしよう。
「写ル○ですってさ、カメラと言ったらコレ! って一番身近に感じるカメラだよね〜」
「ミューはそれについてはさっき初めて知ったにゃ。でも、グルグルと回してから押せばいいのはすぐにわかったにゃ」
「ミューはカメラについては知らないんだね。そう、操作が簡単で軽いのよ! だから大人でも子供でも気軽に撮れる、そこがいいところなの!」
ちょうどいい具合に、日も傾いて来た。
辺りがうっすらと暗くなってきたので、フラッシュの出番だ。
ハ○ラーくんは、お目目がぱっちりとしていて、昔から愛される車のおもちゃのようなボディーが愛らしい。
なのでやっぱり、はじめはチャームポイントがたくさん詰まったお顔から撮ろうか。
ファインダーを覗き、お顔をアップに配置を決める。
ここだ! というタイミングでシャッターを何回か切ると、右上の経験値が少し増え、アルバムに新たな写真が追加された。
写真をタブレットに表示すると、ミューが肩に乗って一緒に覗き込んでくる。
す……、すこしおもいです……。
「リズは失礼なことを思ったにゃ? さっさと解説するにゃ」
ばれてたか!
気を取り直して、タブレットに表示された写真に目を向ける。
「写ルンですって、フィルムならではの風合いが最高なのよ。色味も淡くて、レトロ感満載」
「たしかに、アンティークのような青味や茶色味がかった雰囲気があるにゃ」
この猫、幻獣なだけあって目が肥えてるな……?
1枚目はピントがしっかりと合っており、フラッシュを焚いた時特有ののっぺり感がある、今流行している写真が撮れた。
タブレットを左にスライドすると、2枚目の写真が表示される。
今度はフラッシュが逆効果になり、白飛びしていて、ピントが合っていない。
「これはなんだにゃ。なんにも写っていないにゃ」
「これは失敗〜。撮り直しがきかないし、ピントも何処に合うかわからないこの感じ。ちょっとスリルがあって良いよねぇ〜」
「失敗してもやり直せないのがいいのは、よく分からないのにゃ」
しきりに首を傾げるミューを横目に、残りの写真も確認していく。
これはトリミングしたら使えそう……、ああ、これはだめだな。
この左前から全体を納めたやつは、パンフレットみたいでかわいいぞ。
写真とにらめっこしていると、本格的に日が落ち、光源がタブレットのみになる。
目がシパシパしてきて顔を上げると、寒気と空腹感が襲ってきた。
「今日はここまでにして、食べて寝るか。後のことは明日考えよ〜」
ハ○ラーくんの後部座席を倒し、なるべくフラットな状態にする。
そこにミューを降ろしてから自分も乗りこむと、チョコを追加で2つ具現化した。
「ミューもたべる?」
猫にチョコはあぶないかな?
「ミューは大気の中の魔力がごはんだから大丈夫にゃ」
そう言うとミューは隅っこに陣地をとると、あくびを1つしてから丸まった。
チョコを頬張ってから、私も眠ることにする。
……寒いからエアコンかけよう。
ミューがガソリンいらないって言ってたし、燃料代は気にしないでおけ。
バッテリーも上がらないよね?
異世界だから大丈夫だと信じよう。
うん。