Shutter:16 初村人遭遇!
陽も暮れかけ、空がピンクを帯びた紫になっている。
そんな中、車のヘッドライトを付けて、池を出て南に向かっていく。
いつも通り、お気に入りの音楽をかける。
「ふんふふふ、ふん〜♪ ふんふふふ、ふん〜♪」
「にゃ〜にゃにゃにゃ、にゃにゃにゃ〜♪」
前回の移動で歌詞やリズムを覚えたミューも、歌に合わせて鼻歌を歌っていた。
「なにこの儀式……。どんな神様を降ろそうとしてるの……?」
「リズは別の世界から来たのにゃ。その国のポピュラーな音楽らしいのにゃ」
「ポピュラーというか、ある意味伝統芸の領域よ。キラッキラアイドルしか勝たん」
ミューやセルと話していると、ヘッドライトの先に光が反射する。
……なんだ?
車を降りて確認すると、山の斜面を利用して作られた、棚田が広がっていた。
「風の月の半ばだから、川から水を引っ張って、この状態なんだ」
「そっかぁ。そろそろ田植えの季節なんだね」
「……あっ、そこに道があるから、まっすぐ行って。いつもケムを分けてくけるおじいちゃんの家があるんだ」
セルがお世話になっているのなら挨拶せねば。
改めて車に乗りこみ、あぜ道をガタガタと進んでいくと、煙がのぼる掘っ立て小屋が見えてくる。
それとともに、飯ごうで米を炊いている時のような、甘くて香ばしい香りが漂ってきた。
小屋の前に車をつけ、エンジンを止める。
車から降りると、セルはミューの首飾りの石に触れ、鳥の姿に戻った。
「こっちに来い」とでも言わんばかりに、セルがクルクルと飛び回る。
セルに導かれるまま、小屋の裏側に回ると、70歳くらいの男性がひとり、鍋に向かって何かを作っている。
セルがその肩に乗り、「ピチャア」と高く鳴く。
「こ…こんばんわ……」
人見知りを発動しながら挨拶をすると、こちらをゆっくりと向いて手を上げてくれた。
「こんな田舎によくきたなぁ。何の用だい」
「色々あって……。その鳥に案内してもらってここまで来たんです」
「そうだったのかい。こやつは毎日のように顔を見せてくる、ヘンな奴だ」
「ケムが目的みたいです……。私もそうなんですけど。もしお願いできれば、私たちにも一口分けていただけませんか? もちろん、獣の肉と引き換えでお願いします」
「獣の肉か……。歳をとってから体が重くなって、余り捕らなくなったなぁ」
「ミューが焼くから安心してなのにゃ。食べやすく焼くのにゃ」
ミューがリズの肩からポンと降り、前にでて優雅に座る。
「たまげた! 喋るヌコとは、料理できるのかい」
「ヌコではなく幻獣なのにゃ。ミューは前世からずっと作ってきたのにゃ。まかせるにゃ」
ミューは胸を張りドヤ顔をした。




