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王城を追放されし守護者、神となる~あれ、神である俺が王都守った方がいいんじゃないですか?~

作者: Hoshi



「お前と言うやつは、何度言ったらわかるんだ!」

王城中に響き渡ったのは第七代大王 カルト・レナイアの罵声であった。まったく、今年で七十にもなるのによくあんな罵声を出すことができるもんだ。「申し訳ございません。以後、気をつけ致しますので。どうかお許しを。」ドガッ。王は俺の頭を蹴った後、部屋を出ていった。


家系の仕事上、王に仕えて守護者を務めていた俺は毎日のように王から体罰を食らっていた。そんな俺の唯一の趣味は窓から王都を眺めることである。王都の景色は非常に絶景で、景色に浸っている時は王都を守るためにこのジジイの元に配属されたことなんぞ脳からすっぽりと抜かすことができる。


そんなある日、俺の部屋に入ってきたのはいつものジジイ....だけではなかった。ガチャリガチャリ。その男が歩いてくる度鎧が摩れる音が響く。その守護神とでも言わざるをえない圧倒的な迫力に俺は息を飲んだ。


「 この男が今日から王城の守護者となる。つまり、どういうことかわかるな?」俺は背筋が凍ることを実感した。顔が青ざめる。「お前はもう王城には必要ない、出ていけ。」


視界が暗い。まるで霧がかかったように。王城を出て賑わう王都の雑音は全て自分に対する罵声にすら聞こえる。道際に生える雑草の緑は日が暮れて薄暗くなると同時に強調されている。まるで王城の中とは比べようのないほどに平凡な光景。これからの道のない人生を考えると非常に息苦しくなる。


俺はどこかも分からない街の傍らの草の中に身を潜めている。目前に広がるのは美しい夜空だ。王城にいる時はずっと部屋の天井を見ていたものだからこうして夜空が映るのは非常に新鮮である。徐々に視界が暗くなる。


うげっ、頬に非常に大きい痛覚を感じた俺は目を覚ました。ヒラリ、ヒラリ。視界に見えたのは空を舞う小さな妖精であった。空を飛ぶ度に神秘的なマントらしきものが目をチカチカさせる。なんだっ? その妖精が身を寄せて来る。そして、俺の身体を透き通って、入ってくる。何やら非常に心地よい感覚だ。それと同時にまたもや気は遠のいていく。


「こんちには。マスター。今日からあなたはこの世界の神、サワード・ヘルとして新たな人生を歩むこととなるでしょう。」脳内に直接語りかけてくるこの感覚をなんと言うべきだろうか。言葉に表せない感覚と同時に言葉は続いて脳に入ってくる。


水たまりに映った自分を見た時には正直驚いた。ギラギラリ。ギラリ。俺が動くたびに、体の関節を取り巻く銀河模様の物体が光る。その異様な雰囲気に街中を歩いた時には大衆の視線を集めた。


あまり目立つのは性にあわないので、上からコートを羽織り、モブ冒険者としてこの街で過ごすこととした。そうして人脈を人並みに広げて、人並みにクエストを攻略する、そんな生活を送っていた。


「よくやったぞ!今日は祝福だぁ!」目の前にいる中年のおっさんは酒を片手に叫んだ。パーティーリーダーである彼、マウロはガツガツと酒を飲んだ。


「そんなに酒を飲んだら病気になりますよ?程々にするべきです。」魔法使いのアリスは少しムスッとした表情でそういった。


「ったく。あんたはまだベイビーだから酒の気持ちよさがわかんないだけよ?」そういったのは剣士のオルティネスだ。そのセクシーなボディは相変わらずギルド内の男の視線をかき集めている。


「べ、ベベ、ベイビーじゃないですし。もう今年で14歳ですし。」顔を赤らめたアリスは思わず抱きしめたくなるほどに愛嬌があった。


「な、なんだ?!」ギルド内に警報が鳴り響いた。このような事があったのは初めてである。大衆は慌てふためいて平静を保ってはいなかった。


「皆さん。落ち着いて聞いてください。たった今魔王軍第三皇帝の火炎龍、グエルディアリボースの王都侵略が伝えられました。私たち、駆け出し冒険者にできることは数少ないですが、王城に龍が侵入しないように全力で食い止めます。勇気ある冒険者の皆さんは直ちに広場へ集まってください。」


ドンッ。背中を激しく押され、前へと倒れそうになる。次々と大衆が水流のごとく流れていく。皆が流れて言ってる方向は広場の方向ではなかった。「そんなの倒せるわけない!」「に、逃げろぉ!」「命なんて掛けれるわけねぇだろうが!」雑音が耳に障る。


「おい、お前はどうするんだ?!」マウロは強ばった表情で問いかけてきた。「お前らは...逃げろ...俺が行く。」少しカッコつけすぎたろうか。しかし、こんな時ぐらいカッコつけさせてくれよ。生涯、まともにカッコつけれたことなんてねぇんだからよ。


「お願いだから...死なないでね...」頬に水を垂らし、アリスは心配してくれた。「ボーイなら大丈夫よ。だってボーイは..」いつもは大人びたオルティネスの声が震えていることには正直驚いた。


外に出ると辺りは熱気としていて火花も散っていた。家屋は崩れ、雑草は黒く、濁っていた。グラァァァッ!王都全域に響き渡る叫び声は火炎竜グエルディアリボースのものであった。パキリ。パキリ。グエルが動く度に、彼の身をまとう大きな鱗は擦れる。その迫力には神になる前の俺では身を震わしていたはずだ。しかし、今となっては怖さは微塵ともなかった。俺が考えていたのはこの龍をどうロマンチックに倒すか、だ。


炎龍は火の玉のようなものを無数に吐いてきた。----熱いな。少し汗をかきつつも俺は攻撃を開始する。この龍をよりロマンチックに倒すためにはやはりカウンターだ。そのためにこいつからより強力な攻撃を繰り出させる! 炎龍は鳴き声を轟かせて大きな爪を光らせてこちらへ振りかざしてきた。危ねぇ!爪は厄介だと思い、俺は背中からゴッドソードを取り、炎龍の腕を切り落とした。炎龍は酷く鳴きわめく。その大きな鳴き声に鼓膜が破れそうだ。しかし、俺は少し動揺した、切り落としたはずの炎龍の腕は瞬く間に生えてきたのである。そうなればこいつを倒す方法は一つ、再生できなくなる程小さい分子レベルまで粉々にする。俺は炎龍を切って、切って、切りまくった。その時、とうとう炎龍は表した。これまでの攻撃とは桁違いらしき攻撃。龍の口には不死鳥が集まる。そして、その炎はこちらに放たれる、今だ!俺はゴッドスキル「全反射(オーバーカウンター)」で炎を跳ね返す。炎龍は粉々になった。まるで灰のように。


王都の冒険者街に戻った時には大勢の大衆がで迎えているのが見えた。


「よくやったぞ!」「まさかこんな勇者が急に現れるなんてありがとうございます!」


「お前が生きていて、本当に良かった...」魔王軍を倒したことより先に俺の心配をしてくれたマウロ達には少し目を潤わされ、恥ずかしかった。そして何より、神の姿をしている俺に気づいたマウロ達には心底驚いた。


そして、第七代大王であるカルトものこのこと足を運んできた。王都に現れたその圧倒的な人物にみなは驚き、本能的に道を空けていた。


「この王都を守って頂き、本当にありがとうございます。どうか、王城に仕え、私を守っていただけないでしょうか。」そう深々と頭を下げたカルトは滑稽以外の何者でもなかった。そして、俺は神の姿からいつもの姿へと戻り、皆が驚愕している中、王にこう言った。「王都を守ったのはお前が追い出した一つ前の守護者だ。お前はそんな平凡なやつに守られたんだ。もう王に使えるわけもない、ざまぁみろ。」と。








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