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『幽霊、オネストの話』

 話は決まった。

 それでも周りを取り囲まれていたのでは具合が悪いので、対面になって話すことになった。

「そんで? そちらはどちらさんが話してくれるわけ」

 エリックが話しかけると、一人の痩せた中年の幽霊が手を上げた。

「はい、どうぞ」

 手を差し向けると、中年の幽霊は、意外にもはっきりした声で話し始めた。

「私はこの辺りの霊を束ねるもので、オネスト(正直な)と呼ばれています。生前の名前はわかりません……というか、死ぬとみんな忘れてしまうのです」

「へぇ……そうなんだ。続けて続けて」

「はい。ここにいる者たちは、みんなここ数年で亡くなった者たちで、微かな記憶を寄せ集めると、全員カピトリヌスかエスクリヌスの出身であることがわかっています」

「なんだって? そいつはおかしい。記憶がなくなるってことは、銀霊鳥になって、一度はこの世とリセットされたってことだろ。なんでそれが解けるんだ。しかもカピトリヌスとエスクリヌスだけって、こいつは何かあるぜ」

「……」

 レンナもこれは初耳だった。

 頭の中で情報を洗ってみたが、有益な答えは導き出せなかった。

「銀霊鳥になりそこなった魂が、落ちるって話ならあったわよね」

「霊長砂漠に何かあるんでしょうか?」 

 リサとテリーの会話を聞きながら、エリックがオネストに問う。

「えっと、その現象について、思い当たることはありませんか」

「わかりません。ただ……あなた方が水晶に閉じ込めた、この黒い塊。これに私たちが捕まると、引きずり込まれて人の形が取れなくなります」

「うん。それはこの黒い塊——負のこごりって言うんだけど、こいつが悪の想念みたいなもんで、生きてる人間の正気を失わせる。……幽霊にとってどうなのかはわかってないと思うけど。ねぇ、レンナちゃん」

 振られたレンナは、言いにくそうに話した。

「はい、でも……負のこごりの原因は、人間の怨念ですよね。だから、そういう感情を持つと引き寄せられるんです。生きている人間はもとより、亡くなった方は……マイナスの感情を抱いているケースがほとんどなので」

「つまり……負のこごりの生餌になっちまうわけだ」

 ルイスが言葉にできない遠慮をあっさり超えた。

「ばっ、あんた何言ってんの?! せっかくエリックたちが濁した話を、何で核心に持ってくのよ」

「あのさ、この人たちは負のこごりがそういうもんだって、身に染みて知ってるんじゃねぇの。遠慮するより核心衝いたほうが話しやすいと思うぜ。この人たちにとっちゃ、死んでからもまとわりつく死活問題なんだから」

 すると、オネストは硬い表情をやっと和らげた。

「うまいことを仰る。でも、本当にその方の言う通りなんです。私たちは負のこごりに食われないように、身を寄せ合ってきました。特に夜になると、こごりは闇に乗じて巨大化します。私たちはこごりを遠ざける(まじな)いでやり過ごし、朝を待つのです」

「呪い?」

「ケテル・ホクマー・ネツァー・イエソド・ホド・ビナーよ。弾かれし我らが魂を守り給え。伏して奉らん、偉大なるその秘跡を……というのです。ご存知ですか?」

「さぁ……レンナちゃん、知ってる?」

「はい、六大精霊界の源の名称です。ケテルは光の精霊界の源、順にホクマーが風、ネツァーが水、イエソドが闇、ホドが地、ビナーが火になります」

「へぇ……俺たちでも知らないことを、あんたたちよく知ってたね」

「ちょうど私が負のこごりに捕まりそうになった時、助けてくれた人があったのです。その人もこんなふうに負のこごりを水晶に閉じ込めていましたが、私たちにこの呪いを教えてくれました」

「ふむふむ。で、その人は?」

「はい。あの大樹海の向こうに去られました。その人はこうも言ってました。いずれ助けが来る。それまでこの呪いで耐え忍べと」

「うーん、さっぱりわからん。エターナリストだったとして……なんでほっといて往っちゃったんだか」

「その助けって僕らのことなんでしょうか?」

「だろうな。あんたたちがここに来たのって、この水晶を見たからなんだろ?」

「そうですが、皆さんのお仲間なんでしょうか。次々と負のこごりを取り除いてくださって。各地で身を潜めていた私たちの仲間も喜んでいることでしょう」

「ちょっと待った! 仲間って他にもいるの?!」

「はい。やはりみんなカピトリヌスかエスクリヌスの出身で、この日が来るのを待ち侘びてました」

「どんだけいるって? 人数は?!」

「千人近くいますが……」

「千人……!!」

 ルイスたちがサァーッと青ざめる。













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