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『水浪と創世の女王』

 上昇していく水浪に、レンナは話しかけた。

「水浪様と仰るのですね、聞いたことがございます。創世の時代、最果ての王国エスペラントにあって、有史以来初の女王に、よく天の運行を教示された水龍様がいらしたとか……」

「——さても修法者ともなると、敏いものだな」

「では、やはりそうなのですね」

「創世の御世にあって、人の子は領地争いに明け暮れ、因果界、降霊界の存在に気づいていなかった。女王カプリチオ・エスペラードは、西の国々を戦争ではなく、交渉によって平定した偉人であり、同時に天より降霊界に召し上げられた、初めての人間であった」

「はい……」

「——天は、天の運行の他、生命の樹の軌道線・六大精霊界・神界暦などの世界の仕組みの教示を私に命じられた。女王がそれを元に編纂した書物は創世記と呼ばれ、七大神器の一つとして降霊界ラトナに納められている」

「……」

「女王は創世記を編纂した直後、辛苦を共にした臣下の裏切りに遭い、非業の死を遂げた。しかし、その魂は世界の安泰のために、今でも民を導いている」

「……万世の占術師様」

 すごい、とレンナは息を吞んだ。

 古代エスペラント王国の女王、カプリチオ・エスペラード。

 西の大地を長きに渡る領土争いから解放した、伝説の女王である。

 元々は東の小国出身の没落貴族だったが、旅をしてエスペラント王国に辿り着き、当時の王に見初められて妃に迎えられた。

 武の王の政をよく補佐し、国を調え、民に慈悲深かったために、王亡きあと女王に推される。

 そして、エスペラント王国のみならず、隣国の民にも慕われ、他国の王の不興を買うところを、へりくだって和を結び、ついに西の大地を安寧に導いたという。

 この立身出世には、神々の助力があったとも、霊格の高い偉人の魂——銀霊鳥——の導きがあったとも伝えられている。

 とにかくも、世界を初めて平和をもたらした女王の存在は、レンナたち万世の秘法に携わる者たちの良い手本である。何よりその魂を、現在も長と崇められることは、幸せなことであった。

 今日だけで何度感激したかわからないが、レンナは万世の占術師に導かれる幸運を、胸の十字架を握りしめて感謝した。

 水浪はそんなレンナに粛然と言った。

「……おまえはなかなか見所がある。万世の占術師殿がその利発さに舌を巻いておられた。水の王、風の王も然り。課せられた役目を立派に果たすがいい。働きによっては天も味方するだろう」

「はい、お役目は重く厳しいですが、ご期待にそえるよう奮励努力します」

 評価にたがわぬ、立派な誓いだった。

 その行く手には西の大地とパラティングス大樹海が広がっていた。




















  

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