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ホロビタセカイデバケモノノタビ  作者: ウラエヴスト=ナルギウ(のペンギン)
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其の四 調査開始 三

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


……と言うか文句はペンギンに言って下さい。

「何処だここ」


 俺はただ歩き続けていた。レトを探して、歩いていた。


 青空は、今となってはとても珍しい。雪が僅かにでも降り続けるこの世界では、もう俺はこの青空を見ることも無いのだろう。あの雪を溶かせば、この青空も見える日が多くなるはずだ。


 それでも、隣にはレトを置きたい。レトと共にこの青空を見上げたい。


「それ位は、願っても良いだろ?」


 俺は目の前にいる女性にそう話し掛けた。


 誰かは分からない。ただ、白い髪に銀色の瞳、レトと同じだ。顔と服以外は。


「……初めまして、■■■君」

「誰だ。それとも、会ったことがあるのか?」

「……さあ? それは分からないよ」


 その女性はクスクスと笑っていた。


「ここは言わば、貴方の記憶の世界。失われた、いや、奥深くに眠っている貴方の記憶の世界。だから今喋っている私も貴方の記憶」

「嘘つけ。お前から、生物特有の雰囲気を感じる」

「おー流石。……記憶の世界なのは嘘じゃ無いよ。ただ、私が貴方の記憶って言うのは嘘。……その様子だと、もう充分かな」

「どう言う意味だ?」


 その女性はまたクスクスと笑っていた。


 そして、何処か懐かしそうな瞳で俺を見詰めた。


「貴方は自分を失った。それはある意味で赤子の様な物。赤子なら、成長しないとね」

「……答えてくれ。俺は、誰なんだ」

「貴方は……。……私は、貴方を愛している。何時までも。探したいならそれでも良い。ただ、絶対に私は見付からない。見付ければ、きっと貴方は全てを思い出す。貴方は大人になっている」


 まるで落とされるかの様な感覚に襲われると、俺の夢は、そこで終わった――。


 ――目が覚めてしまった。まだ夜は深い。それを証拠にレトはまだ眠っている。


 小さな寝息がレトの僅かに開いた唇から聞こえる。何時もより体温が高い気がするその体を抱き寄せた。


 ……やはり、レトの体温は安心出来る。


 ……あの女性は、誰だったのか。恐らく俺は、あの女性と出会ったことがある。それこそ失った記憶の何処かで、それがあるはずだ。


 妙な懐かしさ。それと不思議な高揚。あれが何かは分からないが、それでも俺はあの女性を知らないといけない。


 俺は、大人にならないといけない。


 レトはすやすやと寝ているだけ。


 ……俺も寝るか。……今度こそちゃんとした夢を見たいが……。


 レトは少しだけ唸っていた。


 ……少し時間が経った頃、レトの温かみでようやく眠気が襲って来た。


 瞼はようやく重くなった。そのまま、意識を落とした。


 起きたのは、レトの声だった。


「……起きて下さい……もう……朝です……」

「……ちょっと待ってくれ……もう少し……」

「……ああ……そんな顔を……しないで下さい……。私は……その顔に弱いです……から…………」

「じゃあ良いだろ。もう少しだけ眠らせてくれ」

「仕方……ありませんね……」


 レトは俺の上に乗り掛かった。……重い。


 そのまま顔を近付け、俺の耳元で囁いた。


「……怒られるまでは……一緒に……惰眠を貪りましょう……か」


 ……重い。


「もう……眠ってしまいましたか……?」

「……流石にまだ」

「……そう……ですか。……貴方は……私の体が……好きらしいので……」

「待て色々語弊がある」


 すると、部屋の扉が勢い良く開かれた。


「ナナシー! 朝だぞー! おーきーろー!」


 フィリップの大声が、嫌な程俺の耳に入り込んで来た。朝からこんな嫌な音は聞きたく無かった。朝っぱらから嫌な思いだ。


「……あ? またいちゃついてんのかお前等。仲良いな」


 ……クッソ。このまま惰眠を貪ろうと思ったのに。


 ……腹減った。


 上に乗っているレトの首筋に手を伸ばした。すると、レトは分かったのか俺の口に首筋を近付けた。牙を入れる包帯の隙間を作り、その首筋に噛み付いた。


 空腹を満たすにはレトの血が一番良い。


 ある程度啜り、俺は口を離した。そして仕方無くベットから降りた。


 あんな夜中に起きた所為で眠気がまだある。それでも俺達は先に進まなければいけない。この雪を溶かす為には、結局雪の中を歩かなければいけない。


 フラマとフィリップは何時も通り黒い金属のマスクを付けていた。やはり不便そうだ。


 人にだけ毒になる汚染、その恐ろしさをこの屋敷で思い知った。俺とレトがこの雪の汚染の効果が無くて良かったと、ここまで思ったことは無い。


 ……やはり、と言うか、俺達は人では無いのだろう。勿論今更では無いことは理解している。魔法技術でも無く、科学技術でも無く、俺達はまた別の方法で異質な力を使う。


 レトの仮説である、俺達は作られた存在だと言うのも案外的を射ているのだろう。それが一番納得出来る出生だ。だとすれば、まだ謎は多いが。


 例えば……。


「……あちら……ですね」


 レトのこれだ。周辺の温度を僅かに上げるあの木を見付けられる力。あの木もまだ謎が多い。


 結局分からないことが多いのだ。これ以上考えた所で俺程度の頭では答えを導き出すことは出来ない。そう言うのはフラマが一番向いているのだろう。フィリップは……まあ、うん。脳筋は脳筋なりの使い方がある。


「フラマ」

「どうしたナナシ」

「……お前の頭脳なら、俺とは違う答えを導き出せているはずだ。参考程度に教えてくれ」

「……あくまで、私の意見だ。それを理解してくれ」


 森の中を歩きながら、フラマの意見を聞いていた。


「まず、あの木の組織片を回収していた。もう調査も終えている」

「そうなのか!? 先に教えてくれ……」

「……私でも、受け入れたく無いんだ。……組織片を調べると、細胞壁が存在しなかった。ただ細胞膜があるだけだ。葉緑体も存在しない陸上植物では見られない特徴、にも関わらず、あの木は立っている。恐らくだが……細胞膜が細胞壁の様に固いのだろう」

「……待て、あれが植物じゃ無いのなら……」

「ああ。あれは……動物(・・)だ。いや、動くことが出来ないと言う点だけで話せば植物ではあるのだが……」


 それを呟いたフラマの顔は辛い物だった。フラマは動物とぼかしているが、もしかしたら……。……あまり、触れない方が良いのかも知れない。


 だが、それだと……レトは……。


「……あまり聞きたく無かったな」

「やはりそうか。私も同じ意見だ」

「その犠牲は、考えるのか?」

「……結局動かないなら植物と同じだ。それなら、私達がするべきことは、その源泉を見付けることだ」

「そうか。……そうだよな」


 その意思は変わらない。変える訳にはいかないのだ。


 こんなことで諦めてしまえば、雪を溶かすと言う人類のもっとも大きな野望が消えてしまう。悲願であり、願望であるそれが、無くなってしまえば、人類はこれ以上の発展をしないだろう。


 それならもう、俺達がするべきことはフラマの言う通り源泉を見付けることなのだろう。


 ……もう考えるのは辞めよう。心が擦り切れるだけだ。


 辺りの植物が全て凍っている場所までやって来た。あまりに異質なその場所でも、レトは表情を変えず前へ進んでいた。


 更にその先へ、その先へ向かった。地面も凍っている所為か何度も滑りそうになってしまった。


 ただ、フィリップはその地面の氷を軽い一歩で割りながら進んでいた。


 何だあれ……。普通に歩いているだけで氷割ってやがる……。


「ったく何だこの地面。歩き難い」

「……お前の場合はまた別の意味で歩き辛そうだな」

「そうか?」


 分かってないのかこいつ……。


 俺は森の木に掴みながら、進んでいた。レトはあの見た目で体幹が鍛えられているのか、姿勢を崩すこともせずに足を進めていた。


 むしろ転びそうになった俺を支えていた。


「……大丈夫ですか……?」

「レトのお陰でな」

「……んぅ……」


 レトの顔が少しだけ紅潮していた。表情は相変わらず変わらないのに僅かな紅潮だけは見せるらしい。それが何と言うか……。


「……どうにも私は…………あまり褒められる……ことに慣れていない……のです……。……貴方に褒められるのは……やはり良い気分には…………なるのですが。見返りは……始めから求めてなど……いないのですが……この時だけは……心が弾むのです……」


 レトはそう言って俺の手を握った。そのまま、何とか口角を上げようと表情筋をぴくぴくと動かし、微笑もうとしていた。


 俺はもう片方の手の親指と人差指で、その口角を上げさせた。


「……やはり、表情を作るのは……難しいですね……。……何度か貴方に見せようと……しているのですが……。……泣くことは……出来るのですが」

「あまり見たくない表情だけどな」

「そうですか……。……それでは……これからは……貴方の前では……泣きません」

「いやそう言うことじゃ無くてな? まず泣かない方が良いって意味で言ったんだ」

「……? ……ああ、そう言う意味……でしたか……。……私が…………泣く様な出来事は……貴方が傷付いた時……だけです」

「……そうか。俺が頑張らないとな」

「……本当は……もう戦わずとも……良いのでしょうが……。……それが使命では……もう無くなったのですから…………」


 レトは偶に使命と口遊む。ただそれも、使命は無くなったと言っているだけ。その使命はもう遂行したのか、それともする意味を失くしたのか。それは分からない。


 ただ、レトは使命があると言うことだけは理解していた。その使命はもう果たさなくて良いと言うことも理解していた。


 それが何なのか、レトは言っていた。「……ただ……使命に囚われ……戦を求め続ける……それが使命なのです……」


 ……戦を求め続けることが使命と言うのなら、俺はまだ使命に囚われている。


 それともこれは、俺の無意識的な使命に沿った行動では無く、記憶を失った俺の、ナナシとしての自由意志なのだろうか。


 自由意志で戦に身を置くのなら、確かに使命には囚われていない。俺の自由意志なのだから。


 俺達は更に前へ進んだ。謎を、記憶を、探し求めていた。


 植物は生命力が高い。何故ならこんな雪が振り続ける世界であっても繁殖を辞めないのだから。植物は根を伸ばし、枝を伸ばし、葉を実らせ、果実を実らせ、そして種子を飛ばす。それを何度も繰り返し、ここまでの繁殖を見せたのだろう。


 何故そう思ったのか、それは目の前の景色に由来する。


 そこには廃れたビル群があった。あまりにも唐突過ぎて目を見開いたが、思えば納得出来る部分もある。


 今まで通っていた場所はあの屋敷に元々住んでいた人の所有地なのだろう。わざわざ人がいない土地であそこまでの屋敷を作る意味も見られない。


 そう考えると、ビル群が近くにあるのは納得出来るはずだ。


 ……と、フラマが言っていた。俺の考えでは無い。


「……私の考えが誰かに盗作された様な感覚に襲われたんだが……」

「……気の所為じゃ無いかアハハ」

「……まあ良い。この辺りが都市部なのは分かっていた。もう九十年前の地図なんて残っていない。その所為でそれを確かめる術はこの目で見るしか方法は無いがな」


 フィリップが先陣を切りながら、何か叫んでいた。


「こんな場所だから変異体は大量にいるはずだ! 気を付けて進めよ!」

「今更言われなくても分かっている」


 フラマの冷静な答えに、フィリップは少しだけ不貞腐れていた。


 雪が吹雪いていた頃、日が落ちたのか辺りが暗くなっている。あの雪雲の所為で真艫に日が見えるのは数時間に一度だけだ。


 ある程度雪が吹雪くタイミングはもう分かっている。


 昼に一番雪が少なくなり、夜に行くに連れて雪が強まる。ただそれも毎日では無い。一日中雪が少ない日もあれば、逆に一日中ホワイトアウトする日もある。


 今日は落ち着いている。昼に一番雪が少なくなり、時間が経つに連れて雪が多くなる。この通りになれば、落ち着いている。ホワイトアウトになるよりかも落ち着いているはずだ。むしろ雪が少ない日の次は極端に雪が強まる。それならこのサイクルは一番落ち着いている。


 ただ、何かおかしい。植物以外は全て凍っている。植物は後から生えたならまだ理解は出来るが、それ以外が凍っているのは何故か分からない。……いや確かに雪が降る温度で一定の世界なら凍ってしまうのは当たり前だが。


「……済みません。ここから詳しい場所が……分からないのです……」


 レトがそう呟いた。


「ま、この近くにあるだけって言う情報だけなら充分さ。ありがとな」

「フィリップ様に……称賛されても……特に……」

「ひでぇ……。ナナシ、ひでぇよレトが!」


 フィリップがそう言っているが、俺とフラマは無視していた。レトは何時の間にか俺の体に引っ付いていた。何時も通り俺の体を温めようとしているのだろう。


 ……少しだけフィリップが哀れに思ってしまった。


 凍ったビル群を歩き、俺達はその木を探していた。それさえ見付ければ俺達のこの調査は一旦は終わる。終わらせたい。


 雪はまだまだ降り積もる。


 大通りらしき場所を歩いていると、高く聳え立っていたはずのビルが横に倒れていた。ガラスが砕かれ、倒れている中の物が外にまで溢れ出している。


「……あー。ナナシ、レト抱えろ。俺はフラマ抱えるから」

「いらない。時間はお前達よりも時間は掛かるだろうが一人で登れる」

「……フラマもひでぇ……ひでぇよ!」


 フィリップは大鎚を背負いながらその倒れたビルを攀じ登っていた。やはり力技だ。


「さて、レト。ちゃんと掴まっててくれよ?」

「……分かり……ました」


 レトの体を横に抱き抱えると、レトは自分から俺の首に腕を回した。密着する体はやはり柔らかく温かい。


 辺りに散乱している大きな瓦礫の上に飛び乗り、ビルから突き抜けている鉄骨に飛び乗ってその倒れたビルの上まであっという間に登り切った。


 フラマは俺が通った場所を参考に無茶もせずに登り切った。


「あー! フラマてめぇ! そんな便利な方法があるなら教えろよ!」

「勝手に登ろうとしたのはフィリップだ。もうそこまで登っているならそのまま登った方が速いぞ」

「何で俺ばっかりこんな……」


 何かぶつぶつと言っているが、倒れたビルをあんな方法で登ろうとしたのはフィリップだ。


「……あの……そろそろ……降ろしてはくれませんか……」


 腕の中にいたレトがそう言っていた。


「ここから降りたらな」

「……分かりました……。……ただ……少し……近いと言うか……いえ……何でもありません……」

「近いのは今更だろ」

「それはそう……なのですが…………違うと言いますか……何と言いますか……違いを説明出来る訳では……無いのですが……」


 最近レトの精神が変わっていっている気がする。それが良い物なのかはまた別の話だろうが、まあ、俺から見た判断だけだと良い方向に変わっていっているはず。多分。


 フラマが先にビルの先へ降りた。俺はその降り方を参考に、レトに傷が付かない様に丁寧に降りた。


 抱えていたレトを降ろし、フィリップが来るのを待った。


 少し待つと、フィリップがそのビルの上から飛び降りた。着地の音は一種の爆発の様だったが、フィリップには全く傷が付いていなかった。


「頑丈だなぁ……」


 言葉として漏れてしまった。


 フィリップの異常性と言うか、あまりに人間離れしていると言うか。その異常性も俺とレトの物と比べればまだ人間味を帯びているのだろうが。


 俺達はその先へ進んだ。


 すると、ホワイトアウトした視界が襲われた。だが、少しだけフラマは高揚している様に声を出した。


「あの木があった所と同じだ。恐らくこの先にあるはずだ。行くぞ」

「……待ってくれフラマ」

「……どうしたナナシ」


 懐中時計で見ると、一旦休憩するべきなのも、呼び止めた理由はある。


「こんなことをお前に言っても意味が無いとは思うが……。……嫌な予感がする」

「……嫌な予感……例えば」

「それが説明出来ないから嫌な予感って言うんだが……。……あの時と、大型の変異体と出会う前にあった胸騒ぎがある。何かこう……嫌な予感が、する」

「……そうか。……分かった。ここを突破するには体力が必要だ。少し休憩しよう」


 案外納得してくれた。


 ビルの中にまだ残っていた椅子を引っ張り出し、俺達はその場で休憩をしていた。


 何故かレトが俺の膝の上に座っていた。距離感が近いのが嫌なのか良いのか分かり難い……何が良くて何が駄目なんだ……。


 ……腹減った。


 何時も通りレトの首筋の包帯に牙を入れられる隙間を作り、噛み付いた。


「……話がしたかったのだが」

「ふぁ、ふふけてふれ」

「……分かった」


 フラマはため息を一つ吐いた。そのまま、真面目な顔にまた戻った。


「まず、ナナシの予感が正しいのなら、この先には大型の変異体がいるはずだ。だとすると……まあ、苦戦はするだろう」

「ナナシがいるだろ。何でメルトスノウが変異体になる可能性のあるこいつら二人を救ったと思ってるんだ」

「ナナシが大型の変異体を倒した時の状況には黒い剣がある。その剣があれば、倒せる可能性はあるが、今はまだ分からない」

「あーそう言えばそんな話も聞いたな」

「報告書はきちんと頭に叩き込んでおけと言っていただろう……」

「何だと」

「まあ、とにかくだ。武器の手入は丁寧にな」


 ある程度血を啜ると、空腹感も満たされた。レトが傍にいないと食欲を満たせないのは少し不便だとは思うが、まあ仕方無い。


 数十分程ここで過ごすと、俺達は先へ行くことを決意した。


 ホワイトアウトしたその景色の先へ、俺達は向かった。


 何かが呻く声と、嫌な予感は更に跳ね上がる。嫌な予感はレトも感じているのかは分からないが、少しだけ顔が青い。


「……大丈夫か?」

「……はい」

「……レトは来なくても良かったんだぞ」

「いえ……私は……この先へ行かなければ……」


 すると、突然フィリップが大鎚の柄を握った。


「フラマ、ナナシ、こっちに誰かが近付いて来ている」


 その冷静な声は、先程の様子とはまた違う真剣さが垣間見える。


 フラマは槍を片手で構え、俺は剣を鞘から抜いた。それだけで、俺達の意識はがらりと変わった。戦闘態勢に入ることはとても簡単だった。


 ホワイトアウトした白い景色から現れたのは、銃を背中に抱えたあの時の女性だった。


「……久し振り。いや、久し振りって言う程でも無いか。……次にここに来るとは思っていた。……気を付けてね」


 その目に敵意は無かった。むしろ……。……いや、分からない。


「何が目的なんだお前は……」

「……この世界を、救いたいだけ。その為に今まで現状維持をして来た。たった、それだけ」


 その女性は、背を向けた。そのまま白い景色の中に溶ける様に消え去った。


「……進むか」

「そうだな」


 俺達は進むことを続けた。


 すると、雪が一番強く吹き荒れている場所に、何かが佇んでいた。


 両手に俺の身長を超える大きさの錆付き刃毀れている剣を持ち、もう一対生えている腕には無数の腕輪が付けられていながら合掌していた。

 白い肌の上には無数の口の様な器官が付いており、それは別々に動いていた。一つ一つが全く別の言葉を喋っている。

 見上げれば、まだ建っているビルの三分の一程の高さを持っているその大型の変異体は、此方を複眼で見詰めた。

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


いいねや評価をお願いします……ペンギンの自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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