■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■悪意■■■■
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
……と言うか文句はペンギンに言って下さい。
うーん……これは、あれだなぁ……。
俺は今、恐らく夢の中にいる。時々ルミエールや夏日と出会うあの夢。
つまりだ。これはルミエールの……いや、気配が違う。ここは光が届いていないのに、やけに煩い。
聞こえる音は、何処か悲しく、そして何より……いや、何だ? これ。
まず俺は、何をしてた? えーと、ジークリンデがいなくなって、レトにナツヒの様子を見て欲しいって頼んで、ナツヒが俺の前に現れて、あいつも確信的なことを忘れていることを教えてくれて?
その後? 寝たのか? 俺は?
いや、違う。何か、何かを思い付いたんだ。
「……俺達の記憶喪失は、人為的な物だったとか。確かそんなことを考えて……」
その後ぐっすり眠ったのか?
体が動く。少し重く感じるが、それ以外は問題無い。
音が鳴り止まないまま、体感的には一時間が経った。何時もなら、すぐに声が聞こえたり姿が見えたり……やっぱり何か、おかしい。
こんな暗い場所にずっといれば、気が狂いそうだ。俺の手も見えない程の暗闇でずっと座っている時点で、俺は既に狂っているのだろうか?
足は動く。見えないが。動かしていると言う感覚だけはある。歩いてみたが、前に進んでいるのかも分からない。足音もしない。
足下が見えない所為なのか、時々転びそうになる。重力だけはしっかりと働いている。しかしこれが無かったらそこでずっとぐるぐると回っている可能性だってあった。そう考えると恐ろしい物だ。
歩いても歩いても、この暗闇から抜け出せる気配が無い。もう何回転んだだろうか。二十を超えた辺りから、数えるのを辞めてしまった。
一向に光は差し込まない。しかしこの煩い音だけは強くなる。
だから分かった。この音は、人の声だ。何十何百の、性別も年齢も関係無い人間の声。
話している様にも、罵り合っている様にも、そして俺のことを笑っている様にも聞こえる。
今の俺にとって、その声だけが頼りだった。その声がより大きく聞こえる方向へ歩き、そんな自分の好奇心を呪っていた。
一人とは、こんなに恐ろしい物だっただろうか。
思い返してみれば、俺は目覚めた頃から一人では無かった。一人の時間が少ない……と言うか、必ず誰かが俺の傍にいる。
新鮮でありながら、しかし冷たく寒い。
やがて、声がぴたりと止んだ。どれだけ煩くとも、どれだけ俺を嘲笑っていようとも、この暗闇で唯一の道標であるそれが消えた。
向かうべき場所を見失った俺は、自然と涙が流れた。孤独が襲い掛かり、今まで感じて来なかった疲労がどっと脚に押し寄せた。
ふと思い浮かぶ誰かの笑顔。誰の、笑顔だっただろうか。レトのだろうか?
ただ笑みだけが思い浮かび、顔だけが見えない。しかし、この胸の大きさはレトだろうか。
……俺、今少しだけ気持ち悪いことを言わなかったか?
いや、口には出してないか。こんな場所だと、自分が声を出したのかも分からない。
「……はは」
何故か笑ってしまった。思い浮かんだ笑みの所為だろうか、それとも……遂に気が狂ったのだろうか。
「あははっは」
気が狂ったにしては、嫌に意識がはっきりとしている。この笑みが、おかしな物だと理解している。
「あっははは」
俺は、何を知ったんだ? 俺は何に気付いた?
誰かが俺を見ている。それは恐らく、目と言う名が付いている光を感じ取る受容器では無く、もっと……得体の知れない瞳。
恐らくそれは目では無く、瞳だ。目よりも瞳と言う表現が正しい。何故俺はそれに気付いた?
ああ、もう辞めてくれ。この好奇心が、今はとても恐ろしい。
しかし俺は、どうやら人間に相当感化されたらしく、先へ進んではならない方へ歩いてしまう。
それに瞳は四つある様に見える。それは、ただ黒い様に見える。それは、黒い角を十本生やし、その内の八つには何かを嵌め込んでいた跡と思われるくすんだ色が見える。
四つの両腕には、そこに一つずつ手枷が付けられ、鎖を引き摺っている。
「誰だ」
「■■、■■■■■■■=■■■」
「……ウナルバウティ=ゲルゼ……?」
「■■■……■■、■■■■■■■」
「……そんなことを聞かれても……俺も、知りたいんだ」
「……■■■」
それは俺の頭に手を置いた。
「私は悪意」
それは女性の声でそう言った。
「僕は殺意」
それは子供の声でそう言った。
「俺は害意」
それは老人の声でそう言った。
「お前は、何なんだ」
「「「「悪意の魔王、害意の魔隷」」」」
「辞めてくれ」
「「「「私は全てを憎む」」」」
「辞めろ」
「「「「俺はお前を憎む」」」」
「嫌だ」
「「「「故に、破壊する。救いは、既に失われたのだから」」」」
「嫌だ嫌だ嫌だ」
「「「「ルーラッツ=ゲブニー、獣の王。私は根源、僕はその果て」」」」
「あぁぁ」
『「哀れだな」「憐れだね」「哀れだな」「憐れだね」』
「やだ」
「「「「死ね」」」」
俺は耳を塞いだ。
「何故生きている」
「何故死なない」
「何故幸福でいる」
「何故お前だけが」
「何故お前等だけが」
「何故俺だけが」
「何故私だけが」
「何故僕だけが」
「「「「私は、ウナルバウティ=ゲルゼ。貴様を憎む者、全てを憎む者、そして全てを妬む者」」」」
瞳が、俺を見ている。目が逸らせない。声が、無数の声が俺を罵っている。
何故お前だけなのだと、何故お前だけなのだと、何故お前だけなのだと。
ああ、もう、疲れた。
もう、死んでしまいたい。
「それで良い」
「それで良い」
「それで良い」
「もう、辛かっただろう?」
「「「「終わりも見えない、敵も分からない。本当に倒すべき者が誰かも分からない」」」」
「「「「大丈夫、私はその全てを受け止めよう。私は悪意、俺は殺意、僕は害意」」」」
「「「「故にその全てを、私は貴方から切り離す」」」」
「「「「君に残るのは幸福感と素晴らしい善意だけ」」」」
「「「「故に、共に逝こう。君は、一人じゃ無い」」」」
黒よりも深い深淵が、深淵よりも暗いそれが、俺を包み込んだ。
金と、銀と、赤と、黒の瞳。とても、優しい目に見えた。
「私は全てを失わせる者」
「私は全てを失った者」
「私は全てを捨てさせる者」
「私は全てを手に入れられなかった者」
「「「「八人の聖女を受け止める者よ」」」」
「「「「八人の聖女を愛する者よ」」」」
「「「「八人の聖女に愛される者よ」」」」
「「「「八人の聖女に受け止められる者よ」」」」
俺は、泣いていた。
「私は、全てを憎む者。全てを恨む者。悪意の王、悪意の奴隷」
ゆっくりと、心臓の鼓動が消えていくのを感じた。だが不思議と苦しくない。ただ穏やかに、少しずつ睡魔が襲って来た。
俺は、誰かに囲まれている。それは八人いた。全員が俺を見て、そして手を取り、六人が俺に体を預けた。
しかし、残りの二人は、自ら光を放って暗いそれを退けた。
しかしその闇は、その悪意の坩堝は、まだそこに蠢いている。まだ俺を罵っている。
「「「「……ルミエール」」」」
『□□□□□、■■■■■■■=■■■』
そう言った一人は、白い輝きを発しながら、俺の耳を四つもある両手の一つで塞いだ。もう一つの両手は俺の手を優しく握って、もう一つの両手で俺を抱き締めた。
すると、俺に体を預けていた六人が立ち上がり、まるで神に祈る様に跪き、より一層白く輝いた。
俺を抱き締めている一人が、もう一つの両手で俺の目を隠すと、耳元で小さく囁いた。
『□□□、□□□、□□□、□□□□、□□□□、□□□。□□、□□□□□□□□。□□□、□□□、□□□、□□□□□、□□□、□□□、□□□□□□□□□□□□。□□□□□□□□□□』
もう一人が、聞き覚えのある声で喋った。
『こうやって出会うのは、初めてかな? ウナルバウティ=ゲルゼ君』
「「「「……もう、良いだろう。彼は充分に努力した」」」」
『君と同じにしないで貰おう』
心臓の鼓動が体中に駆け巡り、強く響いた。
『君は優しい。だが、君は逃げいているだけだ。全てを失い、何も得られなかった自分を憎悪した。恐らくそれが始まりだろう。君は、それから逃げているだけだ。結果として優しさとなり、そしてそれは汎ゆる世界に災厄を齎す、正しく最悪の存在へと成り代わった。全ては君の所為だ、いや、君のお陰と言うべきかな?』
徐々に、意識が遠退いて行く。
『彼はまだ駱駝だ。駱駝なら駱駝らしく、歩ませてみようと何故思わない』
「「「「その先には、等しく絶望があるからだ」」」」
『ああ、そうだろうね。君にはそれを言える権利がある。決して幸せとは言えない。必ず苦難が降り掛かり、決して小さく無い確率で不幸な結末へと辿り着く。絶望し、しかし君が諦めてしまった希望を必ず抱く』
「「「「……僕の、希望は一体何だ?」」」」
『君にも、託された物があるはずだ。だから君は、今もこうやって歩き続けているんだろう?』
「「「「……俺は……永遠に縛られたままだ。この王冠は既に意味を失った。……それでも良いと、思っている……。……だけど、僕も、私だって、幸せになりたかった。自由になりたかった」」」」
『……君は、もうなれない。だから、せめて抗おうと、こんなにも動いているんだろう?』
「「「「……それでも、良いと今は思える」」」」
『……そうかい。さようなら、もう二度と、会うことは無いだろう』
意識が遠退き、やがて目を瞑った。しかし、何故か彼の姿が見える。
彼は、泣いていた――。
「――様、旦那様?」
俺はリュノの声に誘われ目を覚ました。
右を見るとリュノ、左を見るとレトが俺の顔を覗いている。
体はまだ動かないが、やけに脂汗を浮かべていることが分かる。レトはそんな俺の体を拭いていた。
「……大丈夫ですか……?」
レトはそう聞いた。
「……泣いて……いますが……」
「……ああ、大丈夫だ」
「魘されていましたが……悪夢でも……見ましたか……?」
「何だか、嫌な夢を見た気がするんだが……」
俺は、それを思い起こそうともしなかった。
「もう、忘れた」
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
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