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ホロビタセカイデバケモノノタビ  作者: ウラエヴスト=ナルギウ(のペンギン)
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其の二十五 ジークリンデ行方不明

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


……と言うか文句はペンギンに言って下さい。

 メルトスノウにて安静に療養をしていたナナシに、レトが囁いた。


「……やはり……ジークリンデ様は……」

「……そうか……」


 彼の体は想定以上に酷い物で、その内側すらも焼け焦げ、ここまで運べたことすらも奇跡と言えるだろう。


 そして、ナナシはそんな自分の体よりもジークリンデの安否を心配していた。


 もう既に、あの戦いから数日が経っている。捜索はフィリップが率先している為詳しいことはナナシの耳には中々入らない。


「ジーク……あの野郎……」


 ナナシは未だに痛む体を起こし、レトの手を掴んだ。


「……レト、少し、頼みがある」

「……ええ……何でしょうか……」

「ナツヒの様子を見に行ってくれ……何だか……胸騒ぎがする」

「……分かりました……。確か……ナツヒ様は……」

「今も病棟だ」


 レトはナナシの言葉を受け、病棟の方へ行った。


 レトの中には、やはりジークリンデに対する心配もある。しかしそれと同じか、ひょっとしたらそれ以上の、不信感が広がっているのも事実。


 まだ、彼女は誰にも話していない。自らの王である彼にだけは話すべきかとうじうじと悩んでいるのが現状だ。


 彼女は見ていたのだ。ジークリンデと、この世界の王が戦っている姿を。交わしていた言葉ははっきりと聞き取れなかったが、確かにそれはナナシのことで言い争っていたことだけは辛うじて耳に入った。


 そうすると今度は、エルマーに対しても不信感を募らせる。彼は、ナナシのことを知っていたのだ。少なくとも、自分が忘れ去ってしまった遥か遠い過去のことを。


 にも関わらず、エルマーはナナシと初対面の様に振る舞う。彼は何者なのだろうか。


 レトはそこまで頭脳明晰と言う訳では無い。思慮深くも無く、ナナシの言われた通りに動く方が随分と心地が良く、性に合っているのだと自負している。


 故に彼女は、思考を放棄するのが癖となっていた。しかし今回ばかりはそうはいかない。ようやく、確かな手掛かりを目にしたのだ。


 しかし、そんなこんな考えていれば、自然と時間は過ぎる物で、彼女はもう病棟に足を入れていた。


 ナツヒがいる病室を聞き、彼女はその部屋に入った。他に怪我人も数人いるその病室で、レトはカーテンで遮られた一つのベッドを覗いた。


 そこに、ナツヒはいた。しかし眠っていない。上体を起こし、窓の外に広がる雪だけが降る景色を寂しそうに眺めていた。


 やがてレトの視線に気付いたのか、彼女の方へ頭を動かした。すると、待ち焦がれている太陽の光の様な笑みを浮かべ、レトに話し掛けた。


「久し振り、レトちゃん」


 その声に、レトは聞き覚えがあった。遥か遠い過去に、確かにこの声を聞いたことがある。


「何だか、大変だったみたいだね」

「……知って……おられるのですか……?」

「うん、ずっと見てたから」


 ナツヒは不思議な雰囲気を持っていた。自らの王の妹だから、だろうか。それとももっと別の要因だろうか。


 少なくともレトが分かることは、このナツヒと言う少女は、自分達の様にこの世界からしてみても、異質な存在なのだと言うことくらいだろう。


「ジークリンデちゃんのことは、責めないであげて」


 ナツヒは突然そんなことを言い出した。


「あの人はね、大変なの。何も言い残さずに出て行っちゃうのも、仕方が無いくらいには。私達じゃ出来ないことをしてるの。だから責めないであげて」


 何を突発的に言うのか、レトはそう思った。しかし、これでナツヒの発言は確実に信憑性を帯びたのだ。


 レトはまだジークリンデのことを言っていない。本当に、ずっと見ていたのだ。


「……貴方は……」

「んー? あー……私は、今産まれた。だから私は、母親の胎内での出来事を薄っすらとしか覚えていない。だからレトちゃんなら分かると思うんだけど……。……私は、殆ど覚えていない。覚えているジークリンデちゃんが特殊なだけ。私はあくまで伝言者、けれどその伝言は既に意味を亡くしている」

「……そう、ですか……」


 レトは、ナツヒの要望でナナシと出会ってから覚えている記憶の限りを、まるで子供をあやす様に言葉を紡いだ。


 ナツヒはそれを楽しいのか興味も無いのか、何処か意味が深そうな笑みを浮かべたままうんともすんとも言わない。


 やがてナツヒは隠れてレトと共に病棟を抜け出し、他の聖母達に出会いに行った。


 ナナシの杞憂を想像していない爛漫な彼女は、ここメルトスノウにて、自由に駆け回った――。


 ――ジークリンデは、ジギスムントと共に雪が降る世界を歩いていた。


 そんな二人の表情は、相変わらずの薄ら笑い。無表情の聖女達よりかは表情豊かだが、ある意味においては表情筋が死んでいると言って良いだろう。


「何と言うか……相変わらず急だね」


 ジークリンデはそう不満を零した。


「仕方無いさ。これは僕達にとっても重要なことになる。作戦は許されないし、今後あるかどうかすらも怪しい。今回が最初で最後になる可能性だって充分にあり得るんだ。あの方は気紛れで、予定なんて作らないからね」

「僕達にとっては、正しく最強同士の戦い、ってところかな?」

「残念だが、最強では無い」

「分かってるよ。何せあっちの■□■=□■□■□■□は……えーと、何だっけ? ■□だったっけ? そいつが最も近いのだからね。それの意思の執行者である□□もまた、最も□□□□□君に近い」

「こちらも充分な準備は進めたと□■□■□は伝えて来たが、それでもまだ不明瞭な点はあるのだろう」


 やがて二人はその足を止め、遠い遠い宇宙の彼方を見詰めた。


「けれど、灰色の王もまた、最も近い。いや、灰色の奴隷?」

「そこはさして問題では無いよ、ジークリンデ。しかしその灰色の王でさえも、□□と互角と言った所さ。勿論彼、そして彼女が全力を出せることが最低条件だが……」

「そこは勝っても負けてもこちらにとっては都合が良い。しかしより問題なのは、あの四人組……彼女達は警戒すべきだ。何かおかしい。何か……あの□■□=■□■□■□■は他の、■□■=□■□■□■□とは違う。なるべき者がなっていないし、なってはならない者がそれになっている」

「なった者は、本来存在しない者だ。異常が起こっているのはこちらでも察知している」

「……彼の、仕業かい?」

「一概には言えない。しかし原因の一端ではあると思われる。しかしそうだとするとまた分からないことがある。それが産まれた場所では、今まで痕跡が見付からなかった。恐らくジークムントが察知したそれが初めてのはずだ」

「彼は、()()()()()()()=()()()()は正しく悪意の根源だ。彼はその全てを破壊しようとしている。……彼も、ルーラッツ=ゲブニーもその悪意に見付かり、全てを失った。そしてそれに連なる聖母達も……」


 ジークリンデは初めて表情を暗くした。


「……理解した者は例外無くその悪意を感じ取り、そして全てを消し去る。幸運だったのはエルマー君がそれを断片的にしか理解していなかったことくらいかな……。思い出せば悪意はもう一度その魔の手を――」

「ジークリンデ」


 ジギスムントは冷たくそう言い放った。


「それ以上は辞めた方が良い。忌々しい眼が僕達を見ている」

「ああ、本当だね。何時まで経っても慣れない。全く、これじゃあナナシ君といちゃつけない」

「……本当に、八人目になったんだね」

「僕は初めからそうだった。たったそれだけの話さ」


 二人は遥か遠くを見詰め、その腕を伸ばした。それは祈りすらも届かないが故に、大いなる意思の御心を少しでも集めようとする嘆きの子羊の姿に良く似ていた。


 しかし、二人は子羊では無い。二人は執行人、そして自由意志へと導く糸に括られた哀れな人形でもある。しかしジークリンデの糸は既に燃やし尽くされている。黄金の焔によってそれは既に灰となっている。


 ここは、硝子の天球に閉じ込められている。そしてその外側には、知性と、意思がある。虚無であるが故に、その虚無を証明する為の知性と意思がそこには存在しているのだ。


 二人は、そして獣の王とその伴侶達である聖母はそこで産まれた。星々が集まる場から流星となってこの世界に舞い降りたのだ。


 二人は声無き声を発し、その硝子を壊したのだ。そして硝子の向こう側、もう一枚の薄い硝子さえも、手に持った自由意志で叩き壊した。


 硝子は破片を散らしながら大きく割れ、その先に星々が輝く星の皇帝が支配するあちら側に続く抜け道が出来た。


 あちら側から流れて来るそれは、本来こちらにあってはならない物。それだけで世界が崩壊する恐れすらあるのだが、その点はジギスムントが事前に策を講じている。


「頑張ってくれ。僕も場合によっては参戦する」

「多分その必要は無いさ」


 ジークリンデは背中に白と黒の翼を生やし、空へと羽撃いた。


「ナナシ君には悪いことをしてしまったね。僕がいない間に、ナナシ君のことを守ってあげてくれ」

「ああ、滞り無く」

「……それと、ナツヒ君が目覚めた。恐らく硝子が割れたことが原因だろう。硝子が割れ、恐らくルミエール君も反応した。仮に、あちらにウナルバウティ=ゲルゼがいた場合、こちらに逆流して来る可能性すらある。もう動き出してしまった。今存在する全てが動き出そうとしている。個人の都合だけでここだけ停滞するのは、あんまりだ」

「気を付けてくれよ? 失敗すらも成功ではあるけどね」

「任せてくれよ。僕はあくまで切り札だ」


 そう言ってジークリンデは硝子が割れた夜空の更に向こう側、そしてその反対側の更に深淵の先、始まりにして終わりが例外無く存在する流星が生まれる場所に作られた穴に飛び込んだ。


「ああ、故に僕達は叫ばなくてはならない」


 ジークリンデは薄ら笑いを貼り付けた。


「僕達は自由だ」

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


いいねや評価をお願いします……ペンギンの自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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