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ホロビタセカイデバケモノノタビ  作者: ウラエヴスト=ナルギウ(のペンギン)
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其の二十四 蝗害 四

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


……と言うか文句はペンギンに言って下さい。

 エルマーは、鉄の扉を背に、雪が降る外で仁王立ちで立ち塞がっていた。


 彼の後ろには、特殊な変異体の銀の羽根を目当てに集まった精鋭と、エルマーが引き連れた親衛部隊が各々の武器を構えていた。


 エルマーはくるりと振り返り、後ろにいる者達に語り掛けた。


「この場で武器を持ち、雪が降る中、ここに立っていること感謝する。……もう、皆にも知れ渡っているだろう。大型の変異体が、こちらへ急速に接近中、今日中には訪れる予想をメルトスノウ司令官が立てた。先遣隊を作り、様子を見ることは間に合わない可能性が高く、無駄な犠牲を増やすだけと判断し、皆に集まって貰ったと言う訳だ」


 エルマーは両腕を大きく広げ、雄弁に語り掛けた。


「ここゲッセマネは、こんな世界でも豊かな土地である。鉱物資源も豊富であり、野生動物の群れが周辺地域に良く通る。野菜も多く実り、オリーブの木も育てられる。ここでは魔法技術も発展し、こんなに過酷な場所だと言うのに、大きく発展している。この場にいる何千人の命は、君達にかかっている。君達は英雄となり、そしてその賞賛と礼賛と報奨を受け取ると良い。死力を尽くし、力を振り絞り、共に戦おう。この場にいる友の為に、同胞の為に、やり遂げよう」


 エルマーの声は、王に相応しい物であった。そのゆったりとした声には確かな威厳があり、聞いた者に高ぶりを感じさせた。


 そこにいるだけで、声をかけるだけで、手を広げるだけで、士気は大きく昂り、ある者は命を賭け、ある者は覚悟を決めた。


「さあ、剣を握れ。力を込めろ。目を見開き、一挙手一投足を人の為に使ってくれ。そして、その技量を存分に発揮したまえ。この場には、王がいるのだ」


 人々の喉から獣の様な叫び声を発した。そして、その場で変異体の大群を待ち構えた。


 そんな中、混乱しているゲッセマネの中で、ナナシは目を開けた。


 ゲッセマネに帰還して既に六時間を経過している。意識だけがはっきりと覚醒し、痛みで動かない体を僅かに痙攣させている。


 ナナシの残った手をレトはしっかりと握り、優しく微笑みかけた。


「……あぁ……お目覚めですか……?」

「……れ……。…………ち」

「ええ、分かっております」


 レトは手首を噛み千切り、ナナシに溢れ出る血を捧げた。口に入り、力を与え、それでナナシの体を少しずつ癒やしていった。


 やがて、戦闘に特化した魔法技術が組み込まれた装備を着けているフラマが、ナナシが安置されている場所へ訪れた。


「……容態は、どうだ?」

「……目は……覚ましています……」

「そうか。……なら良かった」


 ナナシは視線をフラマに向け、僅かに左手を動かした。声を僅かにしか出せない中、痛む体を動かし、ナナシは必死に何かを訴えていた。


「……どうした、ナナシ」


 フラマはナナシに歩み寄った。


「何か伝えようとしているのか?」


 ナナシは金色の瞳を動かし、フラマに言葉を伝えようとしていた。


「……い……た…………く……れ」

「……まだ声を出すのは辞めた方が良い。喉が裂けるぞ。筆でも持って来ようか」


 フラマは紙と筆を持って来て、その筆をナナシの左手に握らせた。


 弱々しく動かし、何度も筆が倒れた所為で、文字には見えない記号の羅列となってしまった。しかしフラマはその特徴から読み取り、何とか単語の意味を考えた。


「……『殺す』……か。あの変異体をか?」


 ナナシは僅かな頷きを見せた。


「無理がある。その体でどうやる気だ。実際、君は手も足も出ずに敗走した。状況が良くなるとは思えない」


 ナナシの目線はフラマから外れ、隣にいるレトと、扉の横で直立不動で佇んでいるテミスに向いた。


「……何がしたいのかは分からないが……何処へ行けば良い」


 ナナシは上を向いた。


「分かった。上だな。……君には驚かされてばかりだ。信じられないことも多い。だからこそ、信じよう」


 そんな中、フィリップがこの部屋の中に入って来た。


「おいフラマ! そろそろ行くぞ! 普通の変異体がちらほら見え始めた! やっぱりお前の予想通り、あのバカでかい変異体も来そうだぞ!」

「フィリップ、協力しろ。ナナシを上まで運ぶ」

「上って……何処だよ」

「上だ、上。ゲッセマネで上と言ったらあそこしか無いだろ馬鹿」

「……上ってーと……ひょっとして……?」


 フィリップの顔は徐々に青くなって、何度も首を横に振った。


「いーやいや、あそこどんだけ高い所にあると思ってんだお前!? まず繋がる道がねぇだろ!?」

「ならテミスにでも頼め。ほら、行くぞ」

「いやほら……大型の変異体の対処で俺も国王に呼ばれてるんだが……」

「緊急事態だ。使える物は全て使う。勿論、ナナシも」


 一時間後、群れをなした変異体がゲッセマネに向かって空を駆けていた。その数は前年の蝗害とは比較にならない程の群れをなし、一直線に空を駆けていた。


 何を目指しているのか、変異体達はゲッセマネへ向かう。理由は分からない。彼等も覚えていない。もう、誰も覚えていない。


 エルマーと、ジークリンデ以外は、もう誰も覚えていない。


 エルマーは背中に腕を回し、寒さを凌ぐ上着の中に手を入れた。その手を抜き出すと、ぬらりとその身を超える巨剣が現れた。


 遥か上空を浮かんでいるその群れに、エルマーは剣を振り上げた。


「ここは我等が守り、そして育んだ土地! 百年近く前の様には、もうしないと誓ったのだ! 見よ!! 明けの明星すらも霞む、黄金の輝きを!!」


 エルマーはその見た目よりも若々しい笑みを浮かべ、力強く叫んだ。


 すると、剣の先に太陽さえも暗く見える程の光が集まり、放たれた。それは何処かナナシが使った星の輝きと似通っていた。


 光は空を裂き、それは無数に枝を別け、それは変異体の体を容易に貫いた。


 無数の光は数百の変異体を撃ち落とし、空を黄金に輝かせた。


「全てを撃ち落とせ! 全てを潰せ! 切れ! 捻り潰し肉塊を雪にばら撒け! それがせめてもの、我々が出来る弔いだ!!」


 ゲッセマネの鉄の扉から覗く魔法技術が存分に使われた二十の砲塔が空へと向くと、その砲口から熱が押し固められた岩石が発射された。


 次々と変異体の群れを撃墜させて行き、羽根を失くした変異体は続々と空から落ちて行った。


 落ちて来た変異体一体につき、最低でも三人で囲み殺す。これが最も安全である。しかし今は緊急事態。


 数は多く、その三分の一程度はエルマーによって迎撃されたが、半分程度はゲッセマネに作られている魔法技術の結晶の兵器によって撃ち落とされても、その軍団は行進を続ける。


 一人一体で動いたとしても、何十匹も鉄の扉に到達する変異体が現れる。各個撃破が強制される地獄の光景に、エルマーは焦燥感を抱いていた。


 現在、偶然にも死者は出ていない。あくまで偶然、運が良いだけだ。これはまだ前触れの群れであり、これから本陣の群れが襲って来るだろう。


 流石のエルマーもここまでの群れが来るとは思ってもみなかった。


 その大剣を振るい、果敢に殺していったが、殺害はまだ間に合っていない。徐々に負傷者が増え始め、それに伴い陣形は崩壊一歩手前にまで追い込めれている。


「……仕方が無い……!! やるしか無いか……!!」


 彼は、王である。その責務はより多くの民を守り、より素晴らしき時代にする。


 彼は王になった。王となる責務を与えられた。世界の王となり、この雪の時代を終わらせる為に、彼は動き続ける。


 エルマーは巨剣を地面に突き刺し、まるで祈る様に手を合わせた。


「……"□□□□""□□□□□□□□""□□、□□□□□□□□□□□"」


 その言葉は、雪が降る世界においては、実に珍しく、そして中々見れない物だった。


 彼の両手の隙間には、黄金の太陽に見間違う程の輝きが発せられた。エルマーは両手を開き、それを空を飛ぶ群れに向けた。


 エルマーは両手を握り締め、左手をまるで弓の弦を引くかの様に下げた。黄金の輝きは、正しく弓の様な形状へと変わり、白金に輝く矢が引かれていた。


 左手をぱっと離すと、白金の矢が空へと打ち上げられた。その矢はぐんぐんと空を進み、やがて黒く厚い雲の中に隠れた。


 黒い雲が白金に輝いたかと思えば、雲を貫き数千の白金の光線が降り注いだ。その全てが変異体を影すらも消し飛ばし、地面へと落ちそれでもゲッセマネに行進を続けている変異体にも降り注いだ。


 変異体を消し去った光線は地面に小規模な爆発跡を残し、静かに消え去った。


 エルマーは剣を両手で握り、ぐったりと体中の力を抜いた。息は荒く、白く染まった空気を大きき吐き出していた。


「……まだ、終わらないか」


 エルマーは変異体がやって来た方角の空を朧気ながらに見詰めた。


 巨大な影、その後を着いて行く通常の変異体の群れ。しかし先程まで来ていた変異体の群れの数倍の数を連れ、外にいる彼等に絶望も共に齎した。


 空を隠す程の巨大な蝗。それは胴体に並んでいる無数の人の右腕を揺らめかせ、首の辺りにある多くの触手の先にある感覚器官で、エルマーを見付けた。


 それは頭をエルマーに向け、体を傾けた。


「……来るか。……そうか、私が、分かるのか、破壊者(アバドン)よ」


 変異体は羽根を大きく開き、何よりも速く空を駆けた。その巨体と、見合わない速度から繰り出される突進はエルマーに向かった。


 地面を砕き、風を置き去りにして、その巨体はエルマーに激突した。最前にいたエルマーは両足をしっかりと地面に踏み込み、両腕を広げ変異体の頭部をがっちりと鷲掴みにした。


 地面に足跡が深く刻まれる程の衝撃がエルマーの体を通って押し付けられたが、背にいる彼等の為にその力を存分に振るい、その変異体を押し留めた。


「久し振りだぞ! ここまで昂ぶる相手は! しっかり噛み締めろ!! 王の力を!!」


 エルマーは更に力を込め、腰を低く据えた。そのまま突進の力の向きを流し、変異体の頭を地面に叩き付けた。


 左腕を横に突き出すと、エルマーの剣は主人の手へと帰って来た。


 その巨剣を思い切り薙ぎ払えば、黄金の輝きと共に変異体の羽根を切り裂いた。


 しかし変異体は高く飛び上がった。胴体にある無数の腕を広げ、その右手の五指の間の全てに赤い光が灯ると、そこから無数に枝分かれする光線が放たれた。


 赤い光線の全てはエルマーに向かったが、彼はその巨剣の裏に身を隠した。


 光線はそのまま巨剣に導かれる様に直撃したが、巨剣は砕けること無くエルマーの盾となった。


 そのままエルマーは巨剣を薙ぎ払い、疲れ切った体を奮い立たせ走り出した。


 変異体は撒き散らしている黒い灰を一点に集め、向かって来るエルマーに投げ飛ばした。集められた熱は瞬時に爆発したが、エルマーはその爆炎の中を巨剣で切って進んだ。


 先程よりも圧縮され、更に数を増やした黒い灰をエルマーに投げ飛ばすと、彼は姿勢を低くさせ、勢い良く跳躍した。


 そのまま右腕を後ろに向けると、その五指の間が勢い良く爆ぜた。その爆発によってエルマーは空中を勢い良く移動し、変異体の背に飛び乗った。


 勢いのまま巨剣を突き刺し、その巨体を剣を肉に刺したまま引き摺り走り出した。


 真っ赤な鮮血を撒き散らしながら、そしてエルマーはそれに染まりながら巨剣を引き抜き、隣にある羽根の付け根を切り付けた。


 容易に切断された羽根を地面へと投げ飛ばし、エルマーはもう一度巨剣を突き刺した。先程よりも深く、そして強く、更に肉に深く突き刺す。


 すると、その巨剣に黄金の輝きが集まると、その場所が一気に爆ぜた。肉は抉れて、エルマーはその中を更に切り進んだ。


 しかし変異体は赤い光線を再度放ち、自らの体すらも貫きエルマーに向かわせた。


 エルマーはすぐにその場から離れると、変異体は大きく体を動かしエルマーを落とした。


 彼は剣を先に地面へと投げ付け、そのまま両足で着地した。大きな衝撃に体を震わせ、彼はすぐに変異体が覆う空を見た。


 大型の変異体の傷に、通常の変異体が集ると、その体が溶け合い傷を治していった。


「怪物め……!!」

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


いいねや評価をお願いします……ペンギンの自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒…

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