其の二十四 蝗害 一
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
……と言うか文句はペンギンに言って下さい。
「物資が不足している」
「……はぁ」
フラマは深刻そうな顔でそう言った。
「大体バプテスマの所為だろ?」
「ああ、そうだ」
「……で、何でそれを俺に?」
「予算の為に、ナナシとフィリップに行って欲しい場所がある。丁度時期だ」
「いや、だから何なんだ」
「この国には、まあ国と言っても滅びた世界を統一しているから世界と言っても問題は無いか。この世界には首都以外にも栄えた都市がある。そこに、少々面倒臭い変異体が毎年襲って来てな」
「……はぁ」
「興味が無さそうだな」
「いや、そこが栄えてるってことは毎年何とかなってるんだろ?」
「ああ、そうだ。何とかなっている」
「話が見えないな。結局何が言いたいんだ」
フラマの悪い癖の一つに話が長いことがある。本来無駄なことでも長ったらしく説明する。まあ今は俺の所為でもあるが。
「毎年大軍で来るその変異体の羽根は、高価な宝飾、そして魔法技術の大きな発展を促した。その価値は未だに衰えずに、むしろ下がることを知らない」
「はぁー成程。それをちょっとせしめようってことだな?」
「違う、全て売却してくれ。むしろあの都市の繁栄の為だと思って。その資金で外部から物資を仕入れて、近く、また調査をしよう」
「……そうか、分かった」
「ああ、出来れば数枚せしめてくれ」
「結局せしめるんじゃ無いか!」
フラマの命令の場合、俺が逆らうことは出来ない。と言うかまず人間じゃ無いし。俺、人間程度の知能を持って訳分からない能力持って外をマスク無しで歩けるバケモノだし。
……こう考えると本当にバケモノだな、俺って――。
――都市ゲッセマネ。雪が降る前は緑豊かな土地ではあったのだが、今はそれさえも消え失せた。
それは豊かさの低迷を意味する。それと同時に、定期的に襲来して来る件の変異体の大軍によって、最も人が住めない土地の一つになってしまった。
そこを開拓したのが、滅びた世界を統一した国王である。彼は勇敢にもたった一人で変異体の大軍を退け、その栄華と名誉を記念し、その時期になれば祭りが開催される様になった。
故にその栄華と名誉、もしくは大欲と策謀を抱え込んだ者が、毎年襲撃するそれ等の退治に赴く。金が回れば豊かになる。
「それが資本主義ってことか」
「ええ、そうです。それは社会の掟です。これを崩壊させるのは、殺人を超える大罪になる可能性もあるのです」
俺の独り言にテミスが答えた。何だか気恥ずかしい。
「……詳しいな」
「ええ、何時でも貴方様の疑問にお答え出来る様に」
「……クロネッカーの青春の夢って何だ?」
「……何を仰っているのですか?」
「……そうか。……そうか」
数学方面はあまり得意では無いらしい。期待は特にしていなかったが。
フラマに言われた翌日。ゲッセマネにやって来たのは俺とフラマとフィリップとテミスとサラ、何故かレトも俺の右腕に引っ付いている。
ゲッセマネは首都の様に周囲に魔法技術の壁を張っている訳では無い。殆どの人々は、と言うか兵士以外の住民は全員天然の岩の天井の下で暮らしており、何とか雪を凌いでいる。
しかし、自然現象は恐ろしい。風やその他諸々の影響で雪が奥まで入り込んで来ることもある。その為に口を完全に塞ぐ鉄の扉が数十年掛けて作られた。当時の奴等は雪に一番近い場所なのに良く頑張ったな……。
その変異体の大軍は何時やって来るかは分からない。一応目撃情報はあるらしいが、本来外を長時間探索出来る程の戦力を揃えるのは厳しいのだろう。メルトスノウがおかしいだけだ。更に言うなら俺が来る前から二人で活動していたフラマとフィリップがおかしいだけだ。
今の俺達は、その奥にいる。俺は別に大丈夫だが、ああ、それとテミスとレトも。
「えーと、フラマから何処まで聞いたんだ?」
「何かいっぱい来る」
「ああそうだ。何かいっぱい来る。理由は未だに研究中だがな。えーと、全員同じ形でな、大体バッタみたいな形?」
「バッタか。飛ぶのか?」
「飛んで来る。いや、人を見付けたら落ちて来る」
「つまり?」
「飛んでいる所を?」
「叩き落とせば?」
「「がっぽがぽ?」」
「ナナシ、空飛べるか?」
「最近滅茶苦茶自由に飛べる様になった」
「……さて、分かるな?」
「分かってる分かってる」
さて、夜に忍び出て探しに行くか。
……さて、どうでも良いのだが、いややっぱりどうでも良くは無いのだが、俺の後ろに立っているテミスが目立つ。
俺より背が高い、と言うかここにいる誰よりも背が高い、そして白髪で目隠ししながら歩く。
しかも俺の腕には同じ容姿、まあ背は俺より低いが大体同じのレトがいる。悪目立ちと言う程では無いが、何と言うか、不愉快な程にじろじろと見られる。
……最近気が短くなったか? 何時もなら無視するだろ、ナナシ。
……まあ、別に良いか。
すると、何故か見知った顔が向こうから、多分同じ理由でこの都市にやって来た奴等にいっぱいの酒を売り歩いていた。
「どーぞどーぞ一杯1200!」
「……何やってるんだジーク」
「おやおやこれはこれは僕の親友のナナシ君。一杯1200!」
「……酒飲めないんだよ」
「そうだったっけ?」
ジークは酒樽を背負って、何十個かのコップを小脇に抱えて売り歩いていた。
「まあまあ、一杯どうだい?」
「1200は高い。500だ」
「いやいや、それは適正価格の話だろう? ここはゲッセマネ。皆、金の為にやって来ているんだ。つまりここだとこれ位が普通と言うことさ」
「それでも1200は高い。せめて1000だ」
「いーや1200」
「……なら1100」
「無理無理、1200」
「……分かった、1150だ」
「うー……ん……まあ、良いか1150なら」
酒は一度飲んだことがある。フラマに実験と称してがぶがぶ飲まされた。結果的に滅茶苦茶気持ち悪くなって夜通し吐いた思い出がある。
まあ俺の胃の中に吐ける程の物は無いんだが。あったとしても血液だ。
兎に角、その一件があって酒には苦手意識がある。……最悪フィリップにでも飲ませるか。
「はいどうぞ、ワイン」
「ワインか……これどっちだ?」
「透明だから白だ。それも忘れたのかい?」
「赤と白があるのは知ってるんだがな。どれがどれかは知らん」
「見ればある程度分かると思うんだけどね」
「良いだろ別に」
一口飲んでみると、やはり美味しく無い。今にも吐き出してしまいそうな不愉快な味だ。甘さはあるのだが、妙に口に合わず、酒特有のこの苦さ? 苦さかこれ? それを体が受け付けない。
「……フィリップ、俺の奢りだ」
「残飯処理じゃねぇんだぞ俺は」
「だって不味いこれ……」
「そんなにか?」
フィリップが一口飲むと、少しだけ目を輝かせた。
「うまっ。これで1200なら丁度良いだろ」
「おー分かってるねぇフィリップ君。サービスでもう一杯あげよう」
……うーん、これはあれだな。俺の味覚がおかしいみたいだな。
その後、俺達はひっそりと外に出た。人が少ない内に大量に落とそうと言う魂胆である。
一応レトは置いて来た。死ぬことは無いのだが、それでも傷付く姿は見たくない。テミスはまあ、うん。強いし。
「ああ、何かいっぱいいるな」
「分かるのか?」
「音と匂い。あくまで微かにだけどな。えーと、ここはゲッセマネから――」
「西に40km先だ。夜も活動すると言うならこのまま進むが、どうする」
「それは勿論司令官殿の意思のままに」
フラマは僅かに思考すると、すぐに答えを出した。
「このまま進もう」
「本当に資金に困ってるんだな……」
「あのバプテスマの影響でな」
「……怒ってる?」
「まさか」
おー怖い怖い。
二時間、もしくは三時間。そろそろ日が沈みそうだ。
厚い雲の所為で太陽は見えないが、まあ仕方無い。
……俺がバプテスマを起こした時に見えたあの太陽の輝き、そしてレトと出会って数日の旅に見た太陽の光。とても美しく広大な温かみ。
それはきっと、生命が歓喜する大昔の輝き。嗚呼、もう一度見たい。せめて今度は、彼等人間達と共に。
……自分が変わっていくのを感じる。恐ろしくは無い。……おかしいな。あんなに怖がってたのに、今は……。
「……フラマ、俺の、名前を覚えてるか?」
「名前は無いはずだが」
「……ああ、そうだ。思い出した。ナナシだ」
「……どうした。体調でも悪いか?」
「いや、大丈夫だ。大丈夫、うん。……やっぱりだいじょばない。テミス背負ってくれ」
テミスは喜んで俺の体を背負った。テミスの背は収まりが良いんだ。揺れも少なく快適に運んでくれるから重宝している。
夜が訪れた頃、俺達は天井が雪の所為で抜けた廃屋の中から厚い雲に覆われた夜空を眺めていた。それを更に隠すかの様に動く、羽根の大軍が移動していた。
一体何の為なのか、もしくは理由を遠に忘れたのか、雲の隙間から僅かに差し込む月光を反射させる銀色の翼を素早く羽撃かせながら飛んでいるそれは、俺達が求めた変異体であった。
頭部は人の様であったが、眼球が異常に膨張しており、まるで昆虫であった。
腕は最早壊死しており、黒い灰を撒き散らしながらその軌跡を残していた。
銀色の翼はバッタの様な形で、やはり昆虫の様に四枚あった。
足の関節は逆に曲がっており、そしてそれを何度か痙攣させていた。
それが大体二百や三百。雌雄問わずに何処かへ向かっていた。速度は余り無い。迎撃手段さえ整えれば一網打尽に出来るだろう。
「行けるかフラマ」
「作戦通りに。ナナシとテミスが私達を空へと飛ばして、そして襲い掛かって来た所を各個撃破。数匹程度ならすぐに殺せる」
「手放して回収して、それを繰り返せば良いんだよな?」
「ナナシはフィリップを、テミスは私だ。最悪フィリップは落としても問題は無い」
まあフィリップだから落ちても大丈夫そうだな。
「じゃあ一撃入れるぞ? 良いんだな?」
「ああ、ナナシの戦闘魔法技術も見ておきたい」
「りょーかい」
俺は両手をその大軍に向けた。掌に熱と黄金の光が灯ると、それに黒色の焔が混じり始めた。
収束、圧縮、そして放出。最近の俺ならそれも楽勝だ。
「"星光"」
一言だけで良い。
それは一閃の黄金の輝きだった。世界を両断するかの様な一閃が一体の変異体の体を貫くと、黄金は輝きを増し、そして一気に広がった。
降り続ける雪さえも一気に溶かす爆熱と爆光が夜空に広がった。それは変異体を雪の代わりに一気に地上へと落とした。
「たーまやー」
「何だそれ」
「知らん。突然思い出した」
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
いいねや評価をお願いします……ペンギンの自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……




