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ホロビタセカイデバケモノノタビ  作者: ウラエヴスト=ナルギウ(のペンギン)
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其の二十 魔法 二

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


……と言うか文句はペンギンに言って下さい。

 どうにもこうにも、役に立つとは思えない。フィリップに直撃して、吹き飛ばされただけで気絶しないのは、威力として不甲斐無い。


「なあエイミー、ちょっと威力不足じゃ無いか?」

「いやフィリップが頑丈なだけだとは思うけど……まあ元々ナナシの魔力量は一般的な物だった聞いたからね。あんまり大きな威力じゃ無いのは仕方無いよ」

「威力を上げることは?」

「可能ではあるよ。やってみる?」

「じゃあ頼んだ」

「今の魔力量なら色々詰め込んでも問題無さそうだし、全知識を持って改良してみるよ! お楽しみに!」


 エイミーは俺の剣を抱え、鍛冶場へと向かった。


 すると、エイミーが出て行くことを待っていたのか、足音が完全に聞こえなくなったと同時にテミスが口を開いた。


「最愛の人よ、それでは魔法技術の習得に勤しみましょう」

「……で? 何でエイミーが行くまで待ってたんだ」

「……多分ではありますが、ここがブッ壊れる可能性があると、言えば伝わりますでしょうか?」

「あーはいはい。だからフィリップを残していると。巻き込まれても多分大丈夫だし」


 またまたフィリップが俺を睨んだ気がするが、気の所為だと言うことにしよう。


「まず一つ、あの女は魔法が何たるかを一切理解していません。その根源も、源流も、全てを。あれはより豊かになる技術では無く、世界の真理へ一歩近付く手法であるのです。……ご理解頂けましたか?」

「何となーく。つまり何で火が燃えるとか何で水が凍るのかとか、そう言う原理を解き明かすってことだな」

「……多分そうです。情けないことではありますが私は最愛の人の真意を正しく理解出来る気がしません。……そう言う共感能力と言うのか、それはやはり姉様とレトの方が得意なのでしょう」


 そうか? まあテミスがそう言っているならテミスにとってはそうなのだろう。


「お手を」


 俺は手を開き腕を突き出した。


「……ん」

「ん?」

「……ん……!」


 テミスはそう言いながら……いや言葉かこれ……? まあ兎に角そう言いながら自分の手を何度も開いていた。


「……ああ、そう言うことか」


 テミスが開いている掌に指を絡ませ手を繋ぐと、テミスの堅苦しく愛想も無い表情は僅かに綻んだ。


「……なあ、これに意味があるのか?」

「……特にありませんが」

「じゃあ何で手を握ってるんだよ!?」


 テミスの手を振り解こうとしても、思っていた以上に彼女の力は強かった。そこら辺の変異体よりも強いんじゃ無いかこいつ!?


「はーなーせー!!」

「……冗談ですよ、関係があります」

「……なら良かった。で、何だ。これから何をするんだ」

「……考えてませんでした」

「はーなーせー!!」

「冗談です。これは決して、最愛の人と手を繋ぎたいと言う訳では決して……いえ、それが五割、と言うか九割九分九厘それが理由ですが、きちんと一厘だけ魔法技術の訓練が理由ですので」

「個人的な理由が大き過ぎる!」

「私が今から、理解している技術を伝授します。モシュネがいればもう少し簡単に伝えることも出来たのでしょうが、今はこれで充分でしょう」


 そう言ってテミスは、握る力を強めた。互いの僅かに滲んだ手汗が重なり合いながら、少しだけ早まる鼓動と、額に浮かぶ小さな汗に体を強張らせながら、テミスの顔をじっと見詰めた。


「……それでは、目を瞑って下さい。少しずつではありますが、頭の中に私の声が聞こえると思います』

「……確かに。……それに、何だか頭の中がぽわぽわする」

『ええ、分かっております』


 頭の中に響く雪の様に透き通るテミスの声は、頭の中を心地良くさせる。レトの血を啜っている時の多幸感にも近い。


『……そろそろ、目を開けて貰っても大丈夫です』


 テミスの言葉の通りに、俺は瞼を開いた。広がる視界は、一面に広がる雪景色。


 今日は見れない雪の景色。そこにテミスは立っていた。銀の剣を両手に持ち、綺麗な唇から白い息を吐き出していた。


「……ここは、言わば幻想の空間。互いに共通する確かな光景と、一致する認識の場。私と貴方様では、外の雪景色の様ですね。ええ、理解は出来ます。何せ私からは、最愛の人が最も美しく最も輝いている様に見えるのですから。それ以外の全ては、色褪せた灰か、我々の様に白い雪しか見えないのですから。故に私は、貴方様か、姉妹しか見えないのです」


 俺はふと掌を見た。俺の指の末端は黒い小火が揺れており、だが決して熱くは無い。火傷も無い。それと同時に、俺の体には黒い鎖が巻き付いていた。左腕だけでは無い。体中に、俺から溢れ出すその全てを制限していた。


 巻き付いているだけだ。自由に動ける。まあ少し邪魔ではあるが。


「ここと現世は時間の進み方が違います。原理としましては……そうですね。長い話になりますが、聞きたいですか?」


 テミスは子供の様に首を傾げた。


「……あー……じゃあ、聞かせて欲しい」

「了承しました。まずこれは、私一人では不可能です。貴方様の力と、私の力。二つが混じり、ようやく作られる異質な世界。世界の中に世界があると思えば、想像し易いでしょうか」

「遠回りだな。結局時間の進みが違う理由は何なんだ」

「先程も申した通り、ここは最愛の人、貴方様と私が作り上げた世界。故にこれは、時間と運命が歪められた場であるのです。……貴方様は、全てを歪めるのです。法則も、時間も、運命も、世界も。歪に捻じれ、やがてそれは正常と認識される。そしてこの場は、私の権能である絶対的な()が、その掟の中にある時間が捻じれ歪められた場。これは私の所為でもあり、貴方様の所為でもあるのです。ご理解頂けましたでしょうか」

「ああ、何と無く。つまりお前の力に俺が干渉、いや、この場合は俺にお前が干渉して、俺に干渉する様に導いて、結果として時間が歪んだ幻想空間になったと」

「深いご理解流石で御座います」


 少々理解に苦しむ部分もあるが、俺にはそう言う絶対的な物を歪める力があるらしい。それが俺の力の本質なのか、将又本質から産まれた副産物なのか。それはまだ、分からない。


「最愛の人は忘れているのです。いいえ、私も、忘れているのです。ですが確かに、私の胸の奥に揺らめいている貴方様の莫大で美しい力、その、陽炎の様な記憶は、確かに残っているのです」

「……俺がやることは、テミスが覚えている俺の力の習得、いや、この場合だと思い出すってことだな?」

「ですのでモシュネがいた方が良いと言ったのです。モシュネの権能は記憶、忘れ去られ砂となった記憶はモシュネの権能により岩へと戻るのです。……彼女は、それを使うことを是としない様ですが。実際危険なのでしょう」


 モシュネは自分の力に大きなトラウマがあるからなぁ……。何だか懐かしい記憶だ。


「……さあ、早速始めましょう。幾ら時間が現世の何兆分の一だとしても、やはり時間と言うのは大切に扱わなくてはいけません」

「そうだな。何をすれば良い」

「……魔法とは真理へと手を伸ばす技術、無論科学さえもそれに等しいのですが。故にまずは思い出さなくてはなりません。その、基礎となる法則を」


 テミスは剣を両手に構え、それを天に向けた。その刃が僅かに黄金に輝くと、その末恐ろしい切れ味を誇る剣を優雅に振り、また天に構えた。


「魔法の源流、これはその黄金、また白銀がありますが、今は良いでしょう。嘗て世界にはそれしかありませんでした。言わば黒と白、火と氷、互いに互いを消し去り、互いが互いを高める、互いが無ければ互いに自己性を保てぬ哀れなその源流、及び根源であります」

「……それを出せと?」

「無論、習得して貰います。これは言わば魔力と名が付けられる以前の根源、決して魔力ではありません。ですがこれをその身から外へ出す技術があるのならば、それはより真理へ近付いたと言うことです」


 テミスとの会話は、確かな言葉で取り繕った形ある物では無く、主観的な意見を曖昧な言葉で言い表すと言う、理解に支障を来す程にまで困難な言い回しが多分に含まれてしまう。


 その度に頭を回し、何とかその真意を理解する。それを何度も強制させられるのだ。


「真理を見詰めるのです。その黄金の瞳で。我等白銀の瞳でも、共に同じ真理を見詰めましょう。それが目を背けてしまう恐ろしい物か、将又目を奪われてしまう美しい物か。それは分かりません。しかし、貴方様の隣には、我等姉妹達がおります。被せられた神秘のヴェールは過去に剥ぎ取り、雪の上に捨てました。今はそれから目を背けているだけなのです」

「……分かった。もう一度その景色を見詰めよう。……出来ればずっと、傍にいて欲しい。きっとそうすれば、俺は怯えずに前を見詰めることが出来るはずだから」

「……ええ、勿論。テミスは永遠に、そして悠久に貴方様のお隣に。それが許されるのなら、それが最愛の人の願いと言うなら、喜んで私はお隣に立ち、貴方様の為だけに、愛の為だけに、剣を振るいましょう。私は王の剣、無垢銀色の剣、しかしそれは正義を名乗る凶刃で御座います。それだけは、努々忘れぬ様に、お願い致します。正義の名の下に振り、貴方様こそが正義だと私も確信しておりますが、その正義は最愛の人の心をも大きく傷付けることを、片隅にでも置いて下さいませ」


 テミスは、静かに微笑んだ。無表情な彼女は、はっきりと微笑んでいるのだ。俺の言葉が余程嬉しく、誉れ高い物だったのだろう。


 ……分からない。俺は何も分からない。正確には思い出せないのだろう。


 俺はテミスを愛している。そこに勘違いも、虚言も、偽りも無い。より正確に言うのなら、聖母の全員を等しく愛しているのだ。その愛は、以前まで避けていた体を重ねるまでに至った。


 絶対に変わらぬ愛、何時から俺は彼女達を愛したのだろう。


 ……分からない。分からないのだが、今はこれでも、そしてずっとこれでも、きっと俺は、彼女達は、幸せなのだろう。


 俺はテミスの頬を撫でた。やはりレトの姉、手触りはレトと似ている。


「……あの、先程も申した通り、これは魔法技術の習得です。……その様な行為は、室内で致しましょう。今日は丁度、私と共に同衾する日ですので」

「……ああ、そうだな」


 さて、惚気けるのはこれ位にして、真面目にやろう。


 黒い鎖で縛られている体を動かし、俺は両手を合わせた。息を整え、テミスの剣から僅かに感じる力を、自分の中で探る。


「……その調子です。ええ、そこから、力を引き出すのです」


 まるで夜空に輝く星の様に、煌めく何かがそこにはあった。俺はそれに手を伸ばしていた。


 幻覚だろうか。それならば俺のこの感情は何だろうか。都合の良い解釈をするならば、俺は何かに近付いている。


 ああ、それを引き出せ。体中に巻き付いた鎖を伸ばし、それを締め付け、外に引き摺り出せ。


「……意外にも、我々はそれを持ち得ているのです。ですので、とても容易に扱えるはずです。そうです、その様に」

「……割と簡単何だな。魔法の原点って言うのも」

「純粋の貴方様の技量が並外れているだけだとは思いますが」

「そうか? じゃあそうだな。俺は天才ってことか」

「ええ、勿論。大天才、天に十物を与えられ……いえ貴方様の才覚を天が与えている訳がありません。最愛の人よりも天が格上だとでも? ああ、何と傲慢不遜、最愛の人よ。今から天をぶっ壊しに行ってきます」

「うん、辞めろ?」

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


いいねや評価をお願いします……ペンギンの自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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