其の二十 魔法 一
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
……と言うか文句はペンギンに言って下さい。
「主よ、もう朝です」
「……体中が痛い……」
「……昨晩は、その……何と申すべきか。妹達もいた所為で、その……えと……はい……」
「……最近眠れてない気がする……」
俺は右手を動かしベッドに手を置いて起き上がろうとすると、右手に柔らかい感触とレトの小さな声が聞こえた。
「んぇ……」
「……あぁ、そうだった。……うぉっ筋肉痛……!」
レトの太腿辺りに手を置いてしまったらしい。今度は左手を動かすと、また柔らかい感触と、今度はモシュネの小さな声が聞こえた。
「……ああ、お早う御座います、御主人様」
「おはようモシュネ。……それと……ごめんなさい……」
まだ寝惚けていたからか、俺の左手はモシュネの胸に置かれていた。
「何故謝罪を? 昨晩散々触ったではありませんか」
「それはそうなんだが……そうじゃ無いだろ?」
「それとも、モシュネの胸では不満でしょうか?」
「そう言う問題でも無い! ……はぁ……取り敢えず、服を着て欲しいんだが……」
俺達が脱ぎ捨てた服は乱雑にそこら辺の床に落ちている。レト達の包帯が一番悲惨な状況だ。
……と、言ったが、実は見えていない。昨晩の記憶を思い出すと、多分床に散乱していると思う。
俺の背中にはスティが乗っており、右にはレト、左にはモシュネ。身動きが取れない。
「と言うか狭いから皆で寝るのは辞めようって言う話で順番に寝ることになったんじゃ無いのか!? これだと意味無いだろ?! 狭い!!」
「我等が主よ、まだレトが寝ているので、お静かに、お願い致します」
「ああ……ごめん……。……まず、スティ、降りて欲しい」
「……まだ、サラと言う医者は来ません。大丈夫で御座います。三人で、一回ずつ、まだ出来るはずです」
「ヤスマセテ……ヤスマセテ……」
スティはため息を吐くと、渋々と俺の背中から降りた。ほぼ同時にモシュネもベッドから降りた。
「ほら、レト。お前も起きろ」
「……んぅ……ああ……」
「おーきーろ! レト!」
「……あぁ、御主人様……昨晩は、ふふっ……」
「はいはい。服を着る」
「……あの……申し訳無いのは重々承知なのですが……起こしては……頂けませんか……? 何だか……力が入らなくて……」
相変わらずレトはゆったりと話している。まあ、それがまた可愛いんだが。
取り敢えずベッドから降りて服を着てから、裸のレトを起こした。まだ眠そうだ。
「……申し訳……ありません……ああ……包帯も巻いては……くれませんか……?」
「はい腕上げてー」
レトは俺の言う通りに、腕をだらんと上げた。巻き方はスティが巻いている姿を何度も見ているから覚えている。まず左の腰に先端を押し当てて――。
「ひゃぅ……」
「……どうした?」
「……いえ……何でもありません……ええ……何でも……」
レトは変わらず無表情だ。だが、何処か頬が赤い。
巻いていくと、何度か小さく甘い声色で短く呟いていた。……こう、何と言うか……いや気にするな。
「はい完了。服は着られるか?」
「……ええ……大丈夫です……御主人様は……その間に食事でも……」
何故か部屋の端っこで立っているスティに手招きを一度すると、何故か顔を僅かに紅潮させながら遠慮しながら俺の膝に座った。
首筋の包帯を解き、スティの柔肌に牙を突き立てれば、容易く肌が破れ鮮やかな赤色が溢れ出した。
「あの、我等が主よ。……大変不躾で、申し訳御座いませんが、その……主の腕を、こう、私の体を包み込む様に、こう……ご理解頂けましたでしょうか?」
「あぁ……はいはい」
スティの薄い腰に腕を回し抱き寄せると、彼女の体温が仄かに暖かくなった。
……あ、ヤバいこれ。理性がギリギリ吹き飛びそうだ。前まではこんなことは無かった……か?
すると、俺の背中にレトが抱き着いた。
「……姉妹サンドイッチ……」
急に抱き着いて来て何を言っているのだろうか。
その直後にサラが来たが、もう何も言わなかった。何時も通りの検査と、ついでの魔力総量検査、その他諸々を終わらせ、何時も通りの日が始まった。
今日はまだ暑い。昨日よりかはマシではあるのだが、氷の近くにいなければ額に汗が浮かぶ位にはまだ暑い。
「あーつーいーあーつーいー!」
スティのつめたーい体に抱き着きながら俺はそんなことを叫んだ。
「……我等が主よ。その、何でしょうか。朝からずっと私の胸の奥が変なのです。……触れられることに歓喜するのは、当たり前なのですが……。……あぁ……違うのです。この、今の状況が嫌なのでは無いのです。決して……あぁ……」
スティにしては妙に塩らしい。露出癖がある奴とは到底思えない。モシュネとは違い、自分から引っ付いて来る性格だと思っていたのだが、今日は俺からスキンシップを多用している。それともスティとの距離が離れているのだろうか。
「……なあスティ。俺にこうやって抱き締められるのは嫌か?」
「いいえ、何故その様なことを?」
「何と言うか、距離を感じる」
「……先程も言った様に、自分でもまだ困惑しているのです。体を重ねたあの夜からずっと、ずっと、千言万語を費やしても表現が出来ない、妙な不安感と言いますか、妙な……あぁ……分からない。分からないので御座います」
スティは言葉を続けた。
「ええ、勿論愛しております。心の奥底から、はっきりと言えます。愛しております。好いています。この身この心、魂の一片まで捧げ、主の為ならば汎ゆる御言葉だろうと受け入れ遂行する程に。……ああ……分からない、分からないので御座います。胸が、胸が苦しい……」
「……多分、と言うか俺の妄想だから特に納得もせずに聞いて欲しいんだが――」
スティは足を止め、俺の顔を見詰めた。
「昨晩俺達の関係性は一歩踏み込んだ。だからその先が分からなくて困惑している……と、思う! 実際は知らん!」
「……私が、我等が主にあれ以上の愛情表現が出来ないからこその、不安感と?」
「そこまで言った覚えは無いが……自分の心情にそう結論付けたならそれで良いんじゃないか? 他人の正解は俺が決めることじゃ無いからな」
「……いえ、正解に、限り無く近い様な気配を感じます。……それともう一つ、私が主に対して不躾ながら心理的な距離を取っていた理由は恐らく……その、何と言うべきか……昨晩の、ことを思い出して……きゅぅぅ……」
何だかリュノみたいな声を出し始めた。そのままスティは顔を隠しながらその場に蹲ってしまった。
「……快楽と肉欲に支配された……あの……昨晩は……少々……いえ……かなり……今思い返すと、中々に……含羞の念が……」
「お、おぉ……何か……ごめんなさい?」
「……きゅぅぅぅ……」
スティは床にうつ伏せで寝転んで、偶に奇声を小さく発する怪異に変わってしまった。
「ほら、立つんだ。俺はスティを愛してる、スティは俺を愛してる。それで良いだろ? な?」
「……ええ、そうですね。……次に、寝具を共にする時は、もっと精進致します」
「そこまで気負わなくても良いんだけどな」
「いえ、精進します」
「……お前って偶に頑固だよな」
「まさか。主を第一に優先しているだけで御座います」
うん、こいつはこう言う奴だ。
「つまり、都合良く使って下さい。私は貴方だけに都合の良い女なので」
「言い方考えて欲しいんだが」
「何か不都合でも?」
「……俺のイメージが著しく下がってしまう」
スティを、昨日のモシュネの様に抱き締めながら歩き、訓練室へと向かった。フィリップとエイミーに呼ばれていたのだが、どうやら魔法技術の会得の為だとか何とか。フィリップにそんなことが出来るとは到底思えないのだが。
だって彼奴バカだし。
向かってみると、何やら涼しい空気が流れて来た。同時に不可解な感覚で、テミスの気配を感じた。テミスが何の用かと訓練室を覗いてみると、テミスとフィリップが互いに本気で戦い合っていた。
テミスの銀色の剣の突きはフィリップの胸部の中心目掛けて真っ直ぐ進むと、フィリップの右脚の膝が素早く、剣を握っているテミスの手を突き上げた。
剣先はフィリップの右肩よりも上、首元を掠めた。彼は両手に力を入れ、その大鎚を大きく薙ぎ払った。
無論テミスに直撃するはずが無い。テミスは僅かに飛び上がり、体を空中で逆様にしたかと思えば、左手を大鎚に置き、腕を一瞬で曲げた。直後に勢い良く伸ばすと、テミスの体は更に跳躍した。
空中でくるりと姿勢を整え、テミスは剣を持っている右腕を後ろに下げ、勢い良くフィリップに向けて突き出した。確かな悪意を持っての攻撃なのは明白だ。
だが、フィリップはむしろ前進を始めた。彼は笑みを浮かべて前進を始めた。やはり馬鹿だったか。
テミスの剣先がフィリップの頭部に突き刺さる直前、彼は僅かに頭部を右に動かした。フィリップの頬を僅かに切り裂いたが、彼はそれよりも両手に握った大槌を思い切り振り上げたのだ。
今度こそその大鎚がテミスの体に直撃した。鈍い音が響くことは、無かったのだが。どう言う訳か、大槌はテミスの服に触れると同時に、彼女の体から広がった氷に閉じ込められていた。
「……ふぅぅぅー……。……殺す気ですか」
「てめぇーが言うな!! 徹底的に頭ばっかり狙って来やがって! 模擬戦闘だって言ったのに真剣使いやがって!」
テミスはそんなフィリップから顔を逸らし、凍っている部分を素手で殴り壊すと、俺と目が合った。
「おや、最愛の人よ。私に何か用でしょうか」
「テミスに用は無い。フィリップと、多分ここにエイミーもいると思うんだが――」
見渡してみれば、部屋の端っこで保管されている武具の影に隠れているエイミーの姿があった。
「……終わった? いやー死ぬかと思った……ああ、ナナシ。来てたんだ」
エイミーは持っていた鉄パイプでフィリップの頭を何度か小突きながら俺と会話を始めた。
「さて、呼ばれた理由は分かるね?」
「魔法技術の習得、だよな?」
「そうそう。何時か教えよう何時か教えようと思って、今まで忘れてたの。ああ、実験台はフィリップがやってくれるから安心してね」
「確かに安心だな。壊れないし」
フィリップから憎悪の目を向けられている気がするが、気の所為だろう。気の所為にしよう。
「えーと、確か、鎖から魔力を放出出来るんだっけ? 私があげた剣は持ってる?」
「それは勿論。多分ここの何処かにある」
すると、何時の間にやらスティが俺の剣を両手に抱えていた。
「ありがとスティ」
「感謝のお言葉恐縮です」
スティはその長い前髪を誑して頭を下げた。これだけ見れば恐ろしい幽霊か何かにしか見えない。
柄を握ったが、俺の手から魔力は出ない。出るのは鎖から。じゃあ……えーと……どうすれば良いんだ? 柄に鎖を巻き付けるか?
左腕に鎖を出現させ、その鎖の先端を剣の柄に巻き付けた。多分これで大丈夫。
「元々この剣には色々搭載したんだけど、魔法技術を使えないし、有意義に使える総量も無いって聞いたから教えなかったんだよね。魔力を出す感覚は覚えてる?」
「なーんと無く。使えるかどうかは別として」
「簡単な放出は出来るってこと?」
「多分」
「うーん……火も出せるなら多分使えるかな? ちょっとやってみて」
言われた通りに、あの時の感覚を思い出す。魔力の放出は未だに慣れない所為か、熱風が辺りに吹き荒れる。
「わぁぉ……バプテスマは起こさないでよ?」
「……大丈夫、な、はず」
「まあ、大丈夫なら続けるけど……。その剣に魔力を流すと、刀身が物体に直撃するととすっごい衝撃が飛ぶよ」
「……それ意味あるか?」
「……まあ、うん……ロマンだよロマン、分かるかいナナシ君」
「分からん。実用性を詰めて欲しいんだが」
「まあまあ、まあまあまあ、取り敢えずフィリップに剣を投げてみてよ」
まあ、フィリップなら容赦無くやれば良いか。黒い鎖を手で振り回し、遠心力を加えて強烈な衝撃をぶつけてやる。
「おい待てナナシ、何でぶんぶん回してるんだ」
「テミス、スティ、フィリップを抑えてろ」
「やめッ!! ヤメロォッ!! お前まで殺す気かナナシィッ!!」
テミスとスティがフィリップの両腕を掴み、そのまま拘束を始めた。
例えフィリップの怪力だろうと、テミスを簡単に解ける訳では無いだろう。
「実験台となれぇ! フィリッッッップ!!」
鎖を放り投げ、その剣が投げ飛ばされた。腕を横に薙ぎ払うと、その鎖は、そしてその先の剣はフィリップの頭部に吸い込まれる様に向かった。
最後までフィリップは悲鳴を発していた。偶然にも剣の鞘が直撃すると、直後にハンマーで木材を叩き割った様な音が聞こえた。
同時にフィリップの体は吹き飛んだ。どうやら本当に衝撃が放たれるらしい。
壁に叩き付けられたフィリップは鹿に踏み潰された蛙の死体の様に倒れていた。だが気を失ってはいない様だ。大した傷も負っていない。本当にこれ変異体相手に使えるのか?
「……ナーナーシィィ……!」
「悪かった。尊い犠牲だったよ。未来永劫フィリップと言う名の英雄を忘れないだろう。らーらーらららーらー――」
「歌うなッ!! 勝手に俺が死んだことにするなッ!!」
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
いいねや評価をお願いします……ペンギンの自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……




