其の十九 夏日 三
注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。
……と言うか文句はペンギンに言って下さい。
「……疲れた」
少し傾いた太陽を眺めながら、俺はそう呟いた。
涼しくはなった。フィリップの言う通り肝が冷えたからな。だがそれ以上に疲れた。子供達をあやすのはあんなに疲れるのか……。
ジークリンデは木陰で寝転んでいる俺の腹に頭を乗せてのんびりとしている。
「……なあ」
「何だいナナシ君」
「暑いんだが」
「良いじゃないか。こんな美人が、こんな絶世の美人が、君の腹に頭を乗せているんだ。こんなこと中々無いよ」
「お前よりテミスとスティとモシュネとレトとリュノの方が美人だぞ」
「聖母達大好きだねぇ……。少しずつ、無意識的にも過去を思い出しているのかな」
「……なあ、ジークリンデ。前の俺も、彼奴等を愛していたか?」
「勿論。それはもうラブラブだったよ。ルミエール君に、テミス君に、スティ君に、モシュネ君に、レト君に、セレネ君に、リュノ君。君は彼女達を愛して、彼女達も君を愛していた。特にルミエール君はね」
……少しだけ胸を撫で下ろした。案外この関係は昔と変わらないのかもと知れただけで、気が楽になる。
「もう一つ、良いか?」
「何だい何だい畏まって。親友だろ?」
「そうだな。だからこそ、知っていると思って聞く。俺に、家族はいるか?」
ジークリンデの顔色はがらりと変わった。先程まで貼り付けていた薄ら笑いは彼女の奥深くに隠れ、レト達の様な無表情に変わった。
だが、今度は不気味に薄ら笑いを浮かべた。
「僕は君の家族さ。そして七人の聖母も君の家族。君にもし子供がいるならその子も家族だね」
「それ以外は?」
「……一体何処で、知ったのか。漠然とした確信かい? 確証のある勘違いかい? それとも……状況からの鋭い推理?」
「最後のそれ。まあ俺の予想を聞いてくれ」
木の葉に遮られて、そして雲に遮られている太陽から発せられている光を眺めながら、俺は話を続けた。
「まあ、まずはこの夏日だな。なーんかおかしい。雪って、つまり雨だろ? こんな暑い日でも雪が降るなら、それは雨になって降り続けるはず。にも関わらず、どう言う訳か雨は降らない。しかも俺のバプテスマの直後に。雪を降らせている何者かが、それを止めた。俺の魔力を感じてな」
「ふんふん、それで何でナナシ君の家族ってことになるのかな?」
ジークリンデは俺の胸の辺りに顔を乗せながら興味深そうに俺の話を聞いていた。
「あの銃を持っている奴等。最初は彼奴等だと思っていた。だが、彼奴等は俺の魔力を知らない……はず。それ以外なら、この場にいないルミエール、もしくは……俺と親しい、それこそ、親族みたいな」
「……うーん、中々興味深い。想像力と考察力が凄いねえ。目覚めた頃とは大違い。どんどん賢くなってどんどん理知的になってしまう。作家にでもなってみたら?」
「答えてくれジークリンデ。親友だろ?」
「……そうだねぇ。まあ、良いかな。勘違いしないで欲しいのが、別に隠してた訳じゃ無い。言わなかっただけ」
「分かってる。もうそんなことで文句も言わないさ」
「なら良かった。まず一つ。雪を降らせているのは、これから僕が教える君の家族では無い。そして二つ。彼女が雪を止められるのは、その雪を降らせ、変異を広げている原因に直接影響を与えられる数少ない人物だからだ。僕はそれが出来る人物を自身含めて四人しか知らない。僕と、君と、テミス君、そして、君の妹だ」
妹……か。しかし、俺は分かる。テミスもまぁ……分かる。あの木を生やす力があり、聖母もそれに関わっているからな。だがジークリンデが雪の原因に直接干渉出来ると言うのに驚きだ。
「君の妹は、それはそれは可愛らしくてね。僕とも良く遊んでくれた」
「……生きてるのか?」
「多分ね。今の君と出会う前に何回か会ってたし」
「……そう言えば、前に何処にいるのかは聞いたことが無かったな」
「君を探してた。ずっとずっと、君を。まあ君が生きてたとは思わなかったし、基本的に僕達の目的の為に動いてたけど」
「何だ、俺が死んだと思ってたのか」
「まあ色々あったんだ。回復にも時間が掛かって、僕達も最近になってようやく動ける様になったんだから」
「……何があったのかは、聞いても答えてくれないか」
ジークリンデはそう言う奴だ。何が楽しいのか、何が面白いのか、大体俺の過去を隠している。いや、自分の過去も含めて全部、隠している。隠していると言うよりかは何も言わないのか?
「……僕は、僕達は、君を探していた。……ルーラッツ=ゲブニー、それは最も穢れ、罪に手を汚し、そして最も名を言ってはならない者。生きとし生ける物全てが忌避し、そして嫌悪し、そして恐れる。汎ゆる魂が彼に恐怖し、汎ゆる鼓動が彼に怖気付く。だけど、僕達は違う。七人の聖母も違う。家族だからね」
答えになっていない様な……?
ジークリンデは俺の頬に触れながら、顔を少しずつ近付けた。
「……だが、君は、こうやって生きている。だが、意味を忘れ、己が何を為したかも忘れた。むしろその方が良かったのかも知れない。僕はそう思っているよ。まだ昔に戻りたいかい?」
「出来るなら。どうなるかは知らないが」
「……そうか。なら僕は止めないよ。それは君の自由意思だ。僕は君の自由を尊重する。好奇心のまま自由に生きよう。そして何時か、そのヴェールを自らの手で取ろう」
すると、俺の顔に見慣れた白い長髪が降りた。何やら黒いリボンも俺の俺の顔に乗っている。
「少々、距離が近い様ですね。ジークリンデ様」
スティの透き通る様な声が聞こえた。スティの長い前髪が俺の顔に被さっているらしい。……スティの髪の毛から仄かに川の匂いがする……。
「おやおや、スティ君。これは違うよ。決して君達から獣の王を奪い取ろうなんて画策している訳では無いんだ」
「まず頬から手を離して頂けますか?」
「ああ、そうだね。確かにそうだ」
ジークリンデはぱっと俺から手を離した。だが変わらずに俺の胸に頭を置いている。
「……我等が主よ。不躾ではあると思いますが、少々頭を上げてはくれませんか」
疑問が浮かんだが、まあ悪い様にはしないだろう。快く頭を少しだけ地面から離した
スティは俺の頭と地面の間に膝を入れ、そのまま正座で座った。俺の頬に触れながら頭を降ろす様に促し、俺は力を抜き、スティの膝に頭を乗せた。
「……何故でしょうか。どうにも私は、この方が落ち着く様です。我等が主の顔が近いからでしょうか。それとも鼓動が僅かにも感じるからでしょうか」
「……そうだな。俺もただ寝転ぶよりもこっちの方が好きだ」
「……成程、女の口説き方も、学習された様で」
そんなことを学んだ覚えは無い。そんなことを学ぶ位なら熱力学でも学んだ方が実用的だ。
「まあ、それでときめいてしまうのが我等聖母なのですが。全く、何時からこんな女誑しになってしまわれたのか」
「何だと。俺はずっとお前達を誑しているらしいぞ」
「ええ、そうでしたね」
スティは相変わらず無表情だ。だが無愛想では無い。最近はそう思える様になった。まあテミスはまだ無愛想に見えるが。
すると、スティは俺の顔を覗き込みながら、また口を開いた。
「どうやら、モシュネとレトを、抱いた様ですが」
「……二人から聞いたのか」
「ええ、自慢気に、それはそれはもう事細かに」
スティは無表情のまま、しかしその奥に嫉妬の感情を揺らしながら、何時もは見えない目を俺に見せてくれた。
「ただ、今日は私なので。覚悟はしておいて下さいとは、言っておきましょう」
「……はい」
……まだ昨日と一昨日の疲れが……。
「そう言えば、フラマからの頼み事はもう終わらせたのか?」
「ええ、原因が分かりました。恐らくではありますが――」
――フラマが司令室に帰って来たと同時に、テミスが疲れ切って椅子に座ったフラマに話し掛けた。
「最愛の人の魔力総量を高めた要因、恐らくこれが一つでしょう」
そう言ってテミスが机の上に置いたのは、桜の木の枝だった。淡い紅色の花を咲かせる桜の木の枝、それは七人の聖母の長女、そしてナナシが探しているルミエールの力の断片である。
「……ああ、成程。確かにこれも原因の一つかも知れない。……一つ、と言うことは、他にもあるのか?」
「ええ、我等七人の聖母です」
フラマはテミスの表情が読み取れない。彼女だけでは無く現状ナナシの周りにいる聖母全員に言えることだが、表情を表に出さないからだ。それに加えテミスは目を隠している。
だが、フラマは良く知っている。聖母達はナナシの為なら決して冗談は言わないと言うことも。
「あくまで仮の話ではあります。実際私さえも、過去の記憶を持っていないので、これは漠然とした予想としか言えないのです」
「……分かった。その仮説を聞こう」
「まず、最愛の人の主食は私達の生き血。血液の接種による影響により、魔力総量を高めた。こう考えれば、まあ納得は出来るのでは?」
「……何とも、証拠に欠ける仮説だな。それではただの筋だけが通った空想だ。机上の理論とも言える」
「証拠といえる物が一つだけ。七人の聖母の魔力総量をサラに頼み調べて貰いました」
フラマは興味深そうに、次の言葉を待っていた。表情は変わっていないが、その奥には子供の様な好奇心と探究心が燻っているのだ。
「五人の平均魔力総量約500000000fs、最愛の人のおよそ五分の一です」
「……偶然、では無いな。そこまで一致すると。残りの300000000fsは誤差と、何時もの食事行為による増幅分か」
「最初はレト、そしてモシュネ、そしてスティ、そして私、そしてリュノ。徐々に増幅したその力は、長女の力の断片によって引き出された、気がします」
「気がする、か……。……まあ、それでも充分だ。徐々に増幅、確かにそうだ。元々その兆候はあった。それが当たり前だと思って大した調査もしていない私のミスだな。情け無い」
またフラマは思考の海を泳ぎ始めた。すると、テミスはフラマの沈黙を破る様に鞘に収まっている剣を剥き出しにし、剣を机に突き刺した。
「貴様、私の最愛の人の異常だ。だが貴様は己の好奇心と探究心を優先している。優先順位を見誤るなよ、小僧」
「……そうだな。……一つ良いか?」
「何ですか」
「この机高いんだが、どうしてくれる」
「……あー……そのー……スミマセン……――」
――あっちぃ……夜になってもまだあっちぃ……。
ベッドに横たわるのもあっつい。何せ寒さを凌ぐ為の毛布しか無い。全部壁に投げ飛ばした。それでも暑い。
……あー……あっちぃ……あっちぃあっちぃあっちぃ……。気温は俺の所為だが……暑い……。
すると、扉から三回叩く音が聞こえた。あのジークリンデの所為で何回ぶっ壊されて治したのか分からない扉の向こうにいる誰かは分かる。多分スティだ。
少しの沈黙が両者の間に交わされた直後、スティが扉を少しだけ開けて顔を覗かせた。
「……どうしたスティ?」
「……いえ、本当に、申し訳無いのですが、今になって日和ってしまいまして……」
……何だこいつ。露出癖ある癖に変な所で初心だな。
「やはり初めての出来事で……その……いえ、ずっと望んでいたことではあるのですが……何と言うか……ああ……もう、駄目ですね」
スティはようやく俺の部屋の中に入った。
最早見慣れたスティの裸体。こいつの露出癖はもう駄目だ。治らない。
「変ですね……何時も見られているのに、何故こんなに胸が高鳴るのでしょうか」
そんなことをぶつぶつと言いながら、スティは寝転んでいた俺の隣に寝転んだ。
「……モシュネもこんな気持ちだったのでしょうか。ああ、勿論レトも」
「……なあ、スティ。ちょっと待っててくれ」
俺はそう言ってベッドの下を覗いた。すると、銀色の二つの光がベッドの下から俺を見詰める人物がいた。モシュネだ。
「……おいモシュネ」
「違いますベッド下の掃除です」
「嘘は吐かないで欲しいな。しかも御主人様に」
「……いえ、スティだけだと満足出来ないかと、思っておりまして。実際昨日はモシュネを壊れるまで使ってくれましたので」
「……お前なぁ。それ言ったらレトも連れて来ることになるぞ」
モシュネは俺から顔を逸らした。
「……おい、何だその顔は。……まさかいるのか?」
「……モシュネは何も言いません。ええ、別に、モシュネの後ろにいるなんて、口が避けても言いません」
ベッドの右側から見てモシュネが見付かった。つまり左側から見ると……。
「よお、レト」
「……こんばんわ……今日は……暑いですね……」
「お前もか?」
「……はい。……立案者は……モシュネですが……実際御主人様は……最近私達を…………容赦無く使うので……まあ……歓喜の心が……勝って……心の中を満たして……幸福感と充実感がありましたが……」
……こいつ等ってこんな奴だったか? ……いや俺が変わっただけか。
「スティ、どうする。俺は別にどっちでも良いが」
「……我等は姉妹、故に共に、我等が主の苦痛を出来る限り無くし、出来る限りの快楽と幸福を齎すことが役目。……と、長々と言いましたが、実際私一人では不安なので、私から頼みます。モシュネ、レト」
スティの言葉と同時に、レトとモシュネがベッドの上に這い上がった。しっかしこのベッド四人で寝られる程広く無いぞ。広く無いから順番に一人ずつ順番に同衾しようって言ったんじゃ?
……まあ良いか。
レトは俺の左腕に腕を絡ませ、頬を猫の様に擦り付けながら囁いた。
「ああ……御主人様……愛しております……。私は貴方の為だけに……生きています……。愛して下さい……レトを、愛して下さい……」
モシュネは俺の右腕に引っ付き、俺の胸に手を置きながら囁いた。
「御主人様、力を抜いて下さい。緊張が体中に広がり縛っております。……おや、もう……」
スティは俺の腰の上に、失礼ながらも腰掛けた。
「不束者ですが宜しくお願い致します」
最後まで読んで頂き、有り難う御座います。
いいねや評価をお願いします……ペンギンの自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……




