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ホロビタセカイデバケモノノタビ  作者: ウラエヴスト=ナルギウ(のペンギン)
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其の十八 バプテスマのバケモノ 三

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


……と言うか文句はペンギンに言って下さい。

 サラは何度かナナシの自室の扉をノックした。だが、何時もすぐに帰って来る返事が、今日は帰って来ない。


 昨日の疲れがまだ残っているのだろうと思っていたが、それはそれとしてさっさと起きろとサラは内心思っていた。


「……まあ、良いか。念の為全室の合鍵を持っていて良かった」


 彼女は若干の好奇心のまま、部屋の鍵を勝手に開けて中に入った。同時に押し寄せて来るのは、充満した生臭い匂いと熱気。


 サラはすぐに扉を閉めた。深く息を吐き出すと、そのままへたり込んでしまった。


「……友人のそう言う瞬間を見る程嫌な思いは無いな……きっと……。……そうか……遂に……」


 すると、アルバートが小型の機器を運んでナナシの自室の前にやって来た。


「どうしたんですかサラさん」

「……いや……何でも無い。……何故来たんだ?」

「司令官からの頼みです。もしかしたら魔力が駄々漏れしている可能性があるからって」

「……そうか。……今は、入らない方が良い」

「何でですか?」


 アルバードは純真な気持ちでそう聞いた。


「……いや……その……何だ。……とても、尊い行為の痕跡が目立つ」

「それって――」


 サラは小さく一度だけ頷いた。その意味を理解した純真なアルバードは、顔を林檎の様に可愛らしく真っ赤にさせた。


「いやっ……ほんとっ……あ……あぁぁぁっっ……あぁぁぁぁ!!」


 アルバードはその場から走り去ってしまった。


「……それでも医療従事者候補か」


 サラは再度頭を抱えた。すると、一周回ってアルバードが帰って来た。


「あぁぁぁぁぁ! あぁぁぁぁ……はぁ……」

「おかえり」

「……どうするんですか。このまま放おっておくんですか」

「そのつもりだ。ああ言うのはそっとしておいた方が良い。まあ数時間掛かるのなら問答無用に叩き起こすが」


 すると、今度は考え得る中で最悪な人物がやって来た。モシュネだった。


 二人はほぼ同時に頭を抱えた。


「……何故、部屋の前で座り込んでいるのですか?」

「……いや……まだ、寝ている様でな。君達聖母達も、御主人の快楽を妨げられるのは憚れることだろう?」

「ええ、そうですね。しかし、このまま寝過ごさられると、それはまた健康に悪いので。御気遣いには感謝しますが。退いて貰えますか?」

「……いや、駄目だ」

「……何故?」

「……説明は出来ない。君に説明すれば、また厄介なことになるのが見て取れる」


 モシュネの機嫌が悪くなっていくのが、無表情なのに分かる。


「退きなさい」

「……駄目だ」

「退け、と言っているんだ。何だ? 貴様はモシュネから御主人様を突き放そうとしているのか?」

「……通すわけにはいかない。気に障るのは理解している。だがこれは双方の為だ。モシュネにとっても、君の御主人様にとっても」

「退けろ。邪魔だ」


 彼女のそれは憎悪へと、そして殺意へと変わった。流石にこれ以上引き止めるのは無理だと、サラは扉から離れた。


「最初からそうすれば良いのに、そこまでして隠す理由は何ですか」

「……まあ、見れば分かる」


 サラとアルバートは互いに絶望していた。


 そのままモシュネが再度その扉を開けた。同時に彼女の挨拶を唱えるはずの口元が固まった。


「……その……分かっただろう?」

「……」

「……おーい? 大丈夫か?」

「……」

「……気絶しているのか?」


 何度かモシュネの頬を叩くと、モシュネは膝から崩れた。


「……これは酷いな。アルバード、一旦運ぶぞ」

「は、はぃ!!」


 その瞬間、モシュネが勢い良く立ち上がったかと思えば、そのまま部屋の中に突撃し、裸体のまま眠っているレトを引き摺り出した。


「レト! 起きなさいレト!! 色々説明しなさい!! レト!!」

「……み…………」

「何が『み』ですか!! 起きなさい!!」


 汗だくになっているレトの頬を何度か叩くと、ようやくレトが瞼を開いた。


「……何ですか……モシュネ……。……あぁ……そう言うことですか……。……あーあー……腰が痛いですねー……」

「一発本気で殴りますよ」

「……理解していない様ですが……良いですか……? 私は……あの方に……御主人様に……求められたからこそ……そして使われたのです…………。……今殴ってしまえば……それはあの方の……意思を……自由意思を……否定することになりますが……?」

「……一体何処でそんな煽り方を覚えたのですか」

「さあ……? 何処でしょうね……? 口喧嘩は強い方……だと……思っていますが……」


 その騒ぎの所為か、疲れで熟睡していたナナシが上体を起こした。まだ眠いのか瞼を擦っていると、突然「おぅっ」と声を出した。


「……使ったこと無い筋肉が凄い痛い……!!」


 ナナシは辺りをきょろきょろと見回すと、ある程度の状況は理解出来たのか、頭を抱えた。


「……あー……ははは……は……取り敢えず、服着て良いか……?」

「……ああ、一旦退出しよう」


 ナナシの若干青ざめた苦笑いに、サラは気不味くなったのか早々と部屋から退出した。


 直後に、何やらどたどたと部屋の中が騒がしくなったが、十秒かそこらで音が鳴り止んだ。その更に二十秒後に、再度扉は開かれた。


 良く嗅いでみれば、まだ生臭さは残っている物の、まあ気にならない程度にまで落ち着いていた。そしてナナシもレトもきちんと服を着ていた。


 ナナシは申し訳無さそうに、そして顔を僅かに紅潮させていた。


「いや……本当に、何か……ごめんなさい」

「……まあ、別に悪いとは言わない」


 またもや気不味い空気が流れた。


「……検査を始めよう。何時も通り食事しながらでも良い」

「……はい……」


 ナナシはベッドに座り、何時も通り検査の為の準備をしているサラを見ながらレトの首筋に牙を向けた。すると、膝の上に乗っているレトを押し退け、モシュネが座った。


「乱暴だぞモシュネ」

「……モシュネは少し、冷静さを欠いています。ええええ、御主人様と妹の所為で」

「……何も言えない……!」


 ……血でも啜れば機嫌も直るか。


 モシュネの首筋に牙を突き立てると、砂糖の様な甘みに僅かな苦みがある癖のある血が溢れ出した。個人的には、やはりレトの血の方が好みだ。


「……あぁ……求められている……良かった……」


 ……やはり気不味い。


 サラは出来る限り俺と目を合わせずに、黙々と検査を始めた。何だか方法も変わっている。見るだけで悍ましい道具まで使っている。それに、余り検査に立ち会わないアルバードまでやって来ている。


 アルバードは体温計に似た棒状の物を思い切り何度も振っていた。アルバードはその先端を俺に向けた。


「そろそろお腹もいっぱいですよね? はい、これ咥えて下さい。……食べないで下さいよ? 水銀が入ってるので最悪死にます」


 物騒な言葉が飛んだ。水銀って言ったらあれだよな? その名の通り液体みたいな金属。体の中に入れれば中毒を引き起こすとか。


 モシュネから口を離すと、彼女から不満の呻きが僅かに聞こえたが、まあ今は良いだろう。少し血が溢れている口でアルバードが持っている棒の先端を咥えた。


「……なんらほれ」

「小型の魔力総量計測器です。発せられている魔力を計測します。精度は酷いしすぐにオーバーフローするので使い物になりませんけど、まあ一般的な魔力総量ならそうはなりません。まあ貴方の場合――」


 すると、その魔力総量計測器とやらに熱が灯り、沸騰した水から浮き上がった気泡が破裂する音まで聞こえ始めた。


 即座にアルバードは引き抜くと、首を傾げた。


「おっかしいな、0fsだ」

「どうしたアルバード」

「サラさん、0fsです。魔力を排出していません」

「……そう言えば、自然排出はしなかったな。ナナシ、バプテスマを起こした時に、どうやって魔力を放出したか覚えているか?」


 そんなこといきなり言われても……。頭を捻っても、特にそれらしいことはしていない。それに此処で魔力を出そう物なら、バプテスマがメルトスノウで発生して大惨事になる可能性もある。


 ……あ、そうだ。丁度良くモシュネが居る。


「なあモシュネ。お前の力で思い出させることって出来るよな?」

「ええ、記憶を想起させることは出来ます。それが何か?」

「俺の役に立てるぞ」

「何でしょうか早く仰言って下さい幾らでもモシュネに命令を」

「お、おぉ……食い気味だな……。昨日の記憶、特にバプテスマを起こす直前の記憶だけを想起させることも出来るよな? じゃあ頼んだ」

「……御主人様、モシュネの権能は、その時の痛みと感情さえも想起させるのです。……いえ、断る訳では無いのですが、それに関してはしっかりと留意して下さい」

「分かった」


 モシュネは俺の体に向かい合って、俺の顔を恍惚とした見詰めていた。そのまま愛おしそうに頬を優しく擦った。


 その顔が一瞬で真剣な顔になると、とは言っても表情は相変わらず一切変わらないが、俺の頭の中の奥が僅かに痛んだ。


 同時に体の奥からあの時の熱が燃え上がった。そのままあの時の、苦痛と焼ける痛みがもう一度襲って来た。


 向かい合っているモシュネの体をついつい抱き寄せてしまう程に、思い出されたその苦痛と痛覚は酷い物だった。


 それが収まり、ふと違和感があり左腕を見ると、あの黒い鎖が巻き付いていた。


「アルバード」

「分かってますサラさん!」


 アルバードは俺の鎖に魔力計測器を近付けて、巻き付けた。


「……オーバーフローしました。此処から魔力が出てます」

「一つ進展だな。今日はフラマに良い報告が出来そうだ。……さて、ナナシ」


 そう言ったサラの顔は何だか恐ろしい笑みだった。


「もう一度魔力総量を測ろうか」

「……魔力はもう測っただろ?」

「違う、魔力()()だ」

「……つまり?」

「あの椅子に座って貰う」

「……いーやーだー!!」


 何でまたあんな激痛が伴う拷問みたいな検査をしないといけないんだ! 俺は実験体用マウスじゃ無いんだぞ!


 そんな心の叫びがサラに響くはずも無く、俺はまたあの椅子に座らされた。硝子の向こうではモシュネとレトが待っている。


 ……事前に止めないで欲しいと言ったが、やっぱり今すぐサラの頭をぶん殴ってでも止めて欲しい。思い出すだけで身の毛も弥立つ。


 だから! 嫌だ! 昨日の疲れがまだ……いやちゃんと寝ずにほぼ一晩中あんなことしてた所為もあるけど! それでも! 嫌だ!


『それでは始めるぞ。さーんにーいーちぜーろ』

「まっ――」


 静止の声も届かず、襲って来たのは肋の奥の心臓に毒でも掛けられた様な、鈍く大きな痛み。悲鳴を発することも出来ずに全身が麻痺する位には巨大な痛み。


「あゔぁゔぁゔぁゔぁゔぁゔぁゔぁゔぁゔぁ!! あぶぶぶぶぶぶぶぶぶ!!」


 おかしな声が出る。自分でもこんなに情け無い声が出るとは思わなかった。二回目だからだろうか。


 ……こんな無駄な思考しないと本気で精神がブッ壊れる位に痛い!!


 ようやく終わった頃には、抜け切っていない前日の疲労感と重なってより酷く重い倦怠感が俺の腹部と胸部と、多分右頬も殴って来た。左頬に殴り返してやる。


 拘束を外して貰い、レトとモシュネの助けを受けながら歩いて、フラマと共に結果を見ていた。


「……若干魔力総量が高くなっているな」

「……何でだ……?」

「それが分からない。……所で……」


 フラマは俺達の方を見た。レトは俺の胸に何時も通り猫の様に顔を擦り付けており、左手でその隣の胸部を撫でていた。喉からは本当に猫の様にごろごろと音が鳴っている。


「……何だか、距離感が近い気がするのだが……いや、何時も通りなのはそうなんだが」


 サラの気不味そうな顔が見える。ついでに隣のモシュネから不機嫌そうな気配も感じる。当人のレトは、少しだけ頬を紅潮させている。まあ、隣のモシュネに見せ付ける様にじわりじわりと顔を俺に近付けて来るのだが。


「……何か、あったのか?」

「……まあ、今は関係無いだろ? な?」

「……ああ、そうだな。話を続けよう」


 ……隣のモシュネの視線が俺に突き刺さる……。


「魔力総量の微量な増大、まあ微量と言えど59000fsの上昇だ。一般的な成人の数十人分。これを微量と言ってしまえる程ナナシの総量は文字通り桁違いだ」

「魔力総量の上昇って事象は……確か成長期なら現実味があるのか」

「そう言うトレーニングが無い訳では無いが、一番大きく増大するのは第二次性徴期だ。ナナシの総量から考えるにその比率から自然と増大した可能性もあり得るが……他の要因があると考えた方が良いだろう」


 そうは言ってもなぁ……。何も心当たりが無い。魔力が増えそうなことと言えば……うーん……。


 駄目だ。一切心当たりが無い。むしろ昨日の所為で現在の魔力総量が減っている感覚さえもある。


「そう言えば、あの場所は大丈夫なのか? バプテスマの後、ちゃんと収束したんだよな?」

「ああ、問題無い。あの地点の魔力は68000fsにまで低下した。平均よりも遥かに多いが、まあ問題は無い。次第に収束するはずだ。ああ、だが、予想だが明日にはメルトスノウ付近に影響が届いて雪が溶ける前に存在していたとされる、()()が訪れると予想される」


 ……え?

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


いいねや評価をお願いします……ペンギンの自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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