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ホロビタセカイデバケモノノタビ  作者: ウラエヴスト=ナルギウ(のペンギン)
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其の十八 バプテスマのバケモノ 二

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


……と言うか文句はペンギンに言って下さい。

『実験開始だ。――備は良い――ナナシ』

「ああ、問題無い。……が、寒い。レトとか連れて来て良いか?」

『死なせたいな――』

「……じゃあ辞めておく」


 俺は雪が降る寒い山の上に立っていた。距離にしてメルトスノウから70km程の場所だ。


 ここまでどうやって来たかって? 数時間掛けて全力で走って辿り着いた。


 事前に渡されていた通信機は余り高性能では無い様だ。さっきから音飛びが酷い。フラマが話しているはずだが、彼の声には聞こえない。


『――えるか。聞こえるか』

「今は比較的大丈夫だ」

『此方は観測の準備が――った。何時でも大丈夫だ』

「そうだな……三十分休ませてくれ。疲れた」

『……分かっ――。三十分たてば此方から連絡す――』 


 ここに来た理由。それは、俺が故意的にバプテスマを発生させることが出来るのか。それの実験の為だ。


 念の為メルトスノウから70kmも離れたこの地点でやることになったのだが、何せ寒い。防寒着は着てきたが、それでも寒い。やはりレトを呼ぶべきだろうか? いいや、何が起こるか分からない以上、呼ばない方が良いだろう。


 ……うーん、暇だ。とは言っても疲れた体を休ませた方が良いだろう。


 魔法技術の基礎的な物はエイミーからある程度教わった。俺が読んだ本にもそれに近しい記述があった。出来るかどうかはまた別だが……。


 すると、俺の体に一つの影が落ちた。見上げると、どうやら一体の変異体が俺を狙っているらしい。何だか久し振りに見た鳥の様な翼を持つ変異体だ。


 背負っている剣を投げ飛ばすと、飛んでいる変異体の胸辺りに突き刺さった。


「よっし命中」


 変異体は石によって撃ち落とされた鳥の様に落ちて来た。


「丁度腹減ってたんだよな。まあ変異体の血なんて不味いだろうが……まあまあ、多分食えるだろ」


 落ちて来た変異体の血を啜ってみれば、俺はすぐに吐き出した。


「まっっず!? おえぇまっず!! こんなに不味かったか!?」


 帰ったら誰かに血を頼むか……まさかこんなに変異体の血が不味いとは。


 幾らか時間が立つと、通信機から音が聞こえた。


『ナナ――ナナシ、聞こえるか』

「聞こえるぞ。もう三十分経ったのか?」

『ああ、三十分だ。体は休まったか?』

「一応な。……良し、やるか」

『魔――測器、正常。やってくれ』


 息を整え、俺は立ち上がった。


 ……体の奥に駆け巡る何かを可視化して、手から可視化したそれを外に出すイメージ。要は力の流れを何とかこう……可視化して……。……適切な言葉が思い浮かばない。


 待てよ? 多分俺は何度かそう言う力、俗に言う魔力と言う物を使っていたことがあるはず。あの炎を出すのは、多分魔力だ。つまり感覚的にはもう掴んでいるはずだ。


 意識的にそれを奥から引き摺り出す。


 ……体の奥から熱い感覚が湧き出す。炎の様に吹き出すそれを、手から出す。自然と左腕に黒い鎖が巻き付いた。


「ふぅー……落ち着けぇー……」


 手を合わせ、それを一気に放出する。大丈夫、大丈夫だ。多分大丈夫だ。


 体の奥に溜まっていた熱は、一気に掌から発せられた。それと同時に合わせた手から真っ赤な炎が吹き出した。


 その炎は厚い雲に覆われた空高くにまで届いた。


 熱と風と光が、俺の体を包み込んだ。


 通信機からフラマの声が聞こえた。


『ナナシ! ――めろ!! もう充――だ!! ――値が120――fsを――えて――!!』


 通信機は熱に溶け、彼の声は消えてしまった。


 簡単に言ってくれるが……!! 止め方が分からない……!!


 赤い炎に黒く穢れた色が混じり始めると、周辺の雪を溶かし始めた。空気には熱と灰が混じり、それと同時に木々は自然発火を始めた。


 地面は黒く炭となり、汎ゆる生は灰へと変わった。


 最早再現も出来ない鉄の建造物は溶け始め、そして赤みを帯びた。


 止めないと……! 本当に……!! 全部が燃える……!!


 両手を離し、それを止めようとイメージしても、どうにも止められない。


 背に違和感があった。燃える腕で背中を触ってみると、何かが焼ける音が聞こえた。


 蹲っている体で何とか視線を後ろに向けると、見慣れない黒い翼がゆっくりと羽撃いていた。どうやら俺の背から生えているらしい。


 何だこれ。何なんだこれ。落ち着け、思い出せ。確かフラマ達が言ってた……!! ああ、そうだ。俺が暴走した時に黒い翼があったって言ってたな……!!


「……スティ……リュノ……!! 来い……!!」


 ……あぁ!? 何で呼んだ……!?


 ……落ち着け、出来る限り落ち着け……大丈夫……。


「……はぁぁー……落ち着けぇ……何回でも落ち着けぇ……ふぅぅー」


 ……少しずつ、少しずつではあるが、熱が収まってくる。少しずつ、火が小さくなっていく。


 大丈夫、大丈夫だ。……ルミエール、ああ、アヴェ・()()()()()……聞いて欲しい……俺の祈りを……この堅くて険しい岩から、俺の祈りをお前の御許へと漂わせよう。


 ……例え人間がどんなに残酷でも、俺は朝まで安らかに眠るから……ああ、生神女よ、俺の憂いに目を向けて欲しいだけなんだ……。


 ああ、聖母よ。聞いて欲しい。一人の子の願事を。……お願いだ……。


 アヴェ・()()()()()……。


 どれだけ経ったのか、もう分からない。


 只、優しく暖かい白が俺の視界を包み込んだ。


「……旦那様、もう、大丈夫です。火はやがて消えるでしょう」

「我等が主よ、もう、大丈夫です。力はやがて収まるでしょう」


 見上げてみれば、スティとリュノがそこにはいた。二人共白い翼を背中から生やし、それを羽撃かせていた。


 二人は俺の頬を何度か撫でると、雪の様な冷たさが俺の体の中に染み込んだ。


 俺の体の中から吹き出す炎は小さくなり、そして消えてしまった。


 少しだけ、気が楽になったが、まだ体の奥が熱い。もう少し時間は必要そうだ。


「……気分は如何ですか? 酷い物だとは、思いますが」


 スティが俺にそう話し掛けた。


「あのフラマと言う男……! 旦那様にこんな……!」

「リュノ、彼は悪くありません。まあ、帰ったら一回叩きましょう」

「ああ、旦那様……大丈夫です……レトから旦那様があたし達を呼んでいると聞いてすぐに駆け付けましたから、もう大丈夫です」


 そう言いながらリュノは疲弊している俺の体を抱きしめた。リュノに体の力を預けた。


 ……ああ、暖かい。羊毛みたいな髪の毛の所為だろうか。


「……スティ、フラマを叩かないで欲しい……。フラマにとってもこれは予想外だっただろうから……」

「……我等が主は、大きな慈悲の心を持って居られる様で」


 ……二人が俺を止められたのは、多分権能が関係してるのだろう。


「……このままメルトスノウまで運べるか?」

「旦那様一人抱える位なら、大丈夫かと」

「なら頼んだ……」


 このまま自分の足で帰れそうにも無い。


 すると、二人の白い一対の翼が大きく羽撃いた。何度か羽撃かせると、二人の体は宙に浮いた。リュノは俺の体を抱き締めながら飛んでいるからか、少し重そうだ。


 それから、何度かの休憩を挟んで数時間経てば、ようやくメルトスノウに帰ってこれた。


 疲労は少しだけ緩和された。体の奥の熱も、大分冷えて来た。火は多くの水によって鎮火されたはずだ。


 メルトスノウの中に入れば、真っ先にレトが俺の体に抱き着いて来た。


「ああ……良かった……!! ……貴方からの連絡が…………途絶えて……あぁ……良かった……本当に…………ああぁ……」

「……通信機が溶けた。……そろそろ離して欲しいんだが……」

「……もう無理です……」

「……ああ、そう。……ならそのままで良いか……」


 俺は自分の足でフラマの下へ行った。レトが補助してくれたから難無く歩けたが、俺の足はもうがたがたと小刻みに震えている。疲労の所為だろうか。


 フラマは司令室で呻いていた。俺に気付くと、まず頭を下げた。


「無事で良かった。それと、一つ。緊急事態の対処を忘れてしまっていた。申し訳無い」

「……まあ、大丈夫だ。こうやって無事だからな」

「……座ったらどうだ。疲れているだろう」


 レトの助けもあってソファーに深く座ると、レトが俺の胸に頬を擦り付けた。


 そんな中でもフラマは話を始めた。


「まず、観測結果だが、驚きしか無い。ナナシに付けておいた魔力計測結果から話せば、あの一瞬で120000000fsまで到達した。それが最高になって数時間掛け半分以下の約49000000fsにまで低下した。そして、恐らくスティとリュノが到着した直後に、正常値に戻った」

「……俺に付けてるのに、そうなるのか?」

「君から発せられている魔力を測っているからな。内包している魔力はああ言う機器でしか計測出来ない」


 フラマは冷静に、淡々と話を続けた。


「近くの観察塔からの情報によれば、ナナシがいた周辺地域の平均気温が一時的に67℃にまで上昇。ナナシの近くなら、まあ、分かるだろう?」

「……鉄が赤くなって、所々溶けた」

「だろうな。あの周辺地域では雪が止み、しかし異常気象が襲っている。詳しく言えば風速72m/s、局所的豪雨、今の気温もまだ40℃前後を漂っている様だ」

「……雪は溶かせるが、被害が尋常だな」

「そうだ。そして分かったことが一つ。どうやらあの枯れた木は雪を溶かすのでは無く、雪が降る直接的原因に作用している様だ」

「……何で、そうなる」


 すると、こんな大事な時に俺のお腹の虫が鳴った。


「……何か、ごめんなさい……」

「……疲れているのだろう。啜りながらでも聞いてくれ」


 レトはすぐに包帯を解き、首筋を露出させた。それに噛み付き、血を啜った。……ああ、やっぱり美味だ。癒やされる。


「……さて、話を続けよう。私がそう思った理由だが、今回はナナシの魔力の放出による人為的なバプテスマ。そこから発生した熱が雪を溶かした。だが、あの木はどうにも違う。あの木から熱が発生している訳では無く、周辺地域の気温自体が上がっている。どうやら根本的に違うらしい」


 まず疑問に思うことがある。あの木は何だ。


 そうだ、そうだよ。あの木が何なのか分からないまま、俺達は探して、雪を溶かすと信じて回っている。まあ、今の俺の目的はそれだけじゃ無いが、少なくともフラマ達はそうだろう。


 何故雪は降った。誰が降らせた。何故銃を担ぐ彼等彼女等はそれを守ろうとし、俺がいればその先へ通す。


 俺が目覚めた頃から、一歩か二歩進んだだけで、まだ殆ど分かっていないんだ。


「……今は、休んでおけ、ナナシ。第四調査の時期はまた此方から伝える。もう、夜も遅い」

「……分かった」


 今日は散々な日だった。せめて良い夢が見れる様に、願っておこう。


 自室に戻ると、どう言う訳かレトの姉妹達が集まって、何やら真剣な表情で話し合っていた。


「……ああ、最愛の人よ。申し訳御座いません、すぐに駆け付けられなくて……」

「別に良い。それに呼んだのはスティとリュノだったからな。……それで? 何を話してたんだ?」


 絶対どうでも良い話だけど。


 テミスは話を始めた。


「この大きさの寝具だと、全員で寝れないでしょう? しかし私も最愛の人と同衾したいのです」

「つまり?」

「あの槍使いの男に頼みましたが、断られてしまい、ならば姉妹達が順番に眠ろうと思ったのです。……そうなると、今日寝具を共にするのを誰にするかを言い争ってしまって……」


 ……ほーらやっぱりどうでも良い話だった。


「……もうじゃんけんで良いだろ」

「……五人のじゃんけんですか。時間が掛かりそうですね」


 俺を支えていたレトも参戦し、五人はじゃんけんを始めた。何だか呑気にも見える。


 勝ったのは、レトだった。無表情で、しかし嬉しそうに腕を高く掲げた。


 公正で平等なじゃんけんによって決まったことだ。各々若干の妬み嫉みをレトに向けたが、すぐに諦めて部屋から出て行った。


「……さて……御主人様。寝ましょうか……」

「……疲れた……」

「そうでしょう……ゆっくり、ゆっくり……静かに……休みましょう……」


 灯りを消し、冷たくなった体を毛布と、レトで温まった。


 レトは相変わらず俺に深く抱き着いている。


「……貴方の……眠りを妨げる様で……申し訳御座いませんが……」

「……どうした」

「私を……愛しておられますか……?」

「当たり前だ。……どうした?」

「……いえ……やはり……私は……深く、貴方を愛しているのです……」


 ……レトの様子が何時もより不自然だ。


「それを知って……貰いたいとも……受け入れて貰いたいとも…………思っているのです……」


 レトのゆっくりとした声の所為で力が抜ける。それでも不快感無くすらすらと入って来るのだから、透き通る声だと言う印象がある。


「……だから……お願いします……。……私を……使って下さい……。私を……愛して……下さい。……貴方の全てを……受け入れ……そして……愛していますから……お願いします……」


 レトの顔は、無表情のままだ。だが、暗い中でも分かる程に、頬が赤く染まっていた。それに息も少しだけ荒く、汗がべた付いている。


 ……ああ、そうか。


「愛しております……御主人様……」

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


いいねや評価をお願いします……ペンギンの自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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