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ホロビタセカイデバケモノノタビ  作者: ウラエヴスト=ナルギウ(のペンギン)
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其の十七 海洋

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


……と言うか文句はペンギンに言って下さい。

「……役立たずで済みません。合流が遅くて済みません。あたしはずっとここにいるので……」


 リュノが俺の部屋の端っこで白い毛玉の怪物になっている。うん。平常運転だな。


 俺は、黙々とスティの為にリボンを作っていた。どう言う訳かスティは前髪だけが凄く長い。視界が遮られているし、何より邪魔だろう。それに、夜に偶にモシュネの無機質な悲鳴が聞こえるし、フィリップとエイミーの絶叫が聞こえる時がある。


 ならば、リボンでも付ければ幾許か怖さが失くなるのでは無いかと思って、次いでに手作りを渡そうとしている。


「なあリュノ」

「……何でしょうか旦那様」

「ちょっとこっちに」


 小さく手招きをすると、リュノは白色の毛玉の怪物のままもぞもぞと此方に動いていた。


「ちょっと脚に乗ってくれ」

「……また、おかしな要望ですね……。……まあ、良いですが……楽しくは無いと思いますよ」

「まあまあ」


 白い毛玉の怪物が俺の脚の上に座ると、癖の強い髪の毛を掻き分け、ようやく見付けた包帯に隠れた首筋に牙を突き立てた。


「あぅぅ……」


 腑抜けた声が聞こえた気がするが、まあ気にせずに血を啜った。小腹が空いた。


 リュノの血は……うーん。何と言うか、こう……辛い。胡椒に近いぴりっとした辛さが若干混じっている。偶に啜るならまあ、味変みたいな感覚で。


「……あのー旦那様……。……いえ、やはり何でもありません……」


 血を啜りながら、スティの為のリボンを作る手を止めずに動かしていた。


「……やはり何でもあります」

「なんは」

「……これまで、他の皆さんの血も……?」

「もひろん」

「……そうですか。……食料としての価値も無いですね……どうせあたしなんて……」


 ……やはり面倒臭い。


 口を離し、リュノを脚に乗せたまま、布を裁ち続けた。


「……あのー……旦那様。何故まだあたしは膝の上に……? 何時降りれば宜しいでしょうか……」

「羊毛みたいに温かいからもう少しだけ頼んだ」

「あぅぅ……はいぃ……」


 リボンと言うのは案外簡単に作れるらしい。何せ一枚の布にちょっとした装飾を付ければ完成みたいな物だからな。これが似合うかどうかは……まあ、大丈夫だろう。


「……旦那様」

「今度は何だ」

「……愛しております」

「急にどうした」

「いえ、急に言いたくなっただけですので、深く考える必要はありません」

「そうか。俺も愛してる」

「……あぅぅ」


 今更ながら、何だ「あぅぅ」って。口癖か?


「……旦那様はあたしの心を誑かし堕落の道に誘う獣です」

「悪口か? それとも嫌味か?」

「事実です」


 リュノを脚から降ろそうと思った瞬間、三回のノックの直後に、誰かが勢い良く扉を開けて入って来た。


 スティだった。……ただ……少々、と言うか、大分、問題がある格好だ。


「我等が主よ。命令は遂行しました。凍り付いた川の底に泳ぐ魚を何十匹か。私の力を使えば簡単な作業です」

「……なあスティ。まず言いたいことがある」

「何でしょうか。お誉めの言葉でしょうか」

「まあ、それは後にして、何で服を着ていないんだ」


 スティは一糸纏わぬ全裸だった。産まれたままの姿と言うのはこれのことを言うのだろう。それに合わせて変な髪型の所為で更に意味不明さを増している。


「お前……それで外を出歩いたのか」

「誰にも見られておりません。裸を他人に見せる程、私の体は安くはありませんので。この全てが主の所有物なのですから」

「……それでも外をそれで闊歩するのはちょっとぉ……」


 スティって七人の聖母の中で一番ヤバい奴何じゃ無いか? 露出癖がここまで来ると問題……いや露出癖、しかも外でもそれが発症すること自体がもう問題なんだが。……後でフラマから苦情が来るかな……。


「……まあ良い。いや全く良くないが、今は良い。取り敢えず服を着て欲しい。しっかり体中に包帯巻けよ」

「ここで、で御座いますか? ……ええ、主の命令ならば、喜んで」


 スティは無表情のまま顔を紅潮させた。此奴やっぱり何かおかしいぞ。全裸になることには恥じらいが無いくせに、服を着ることに恥じらいがある。痴女と言うか変態と言うか変人と言うか、世に出したら駄目なタイプの女性だろ。


 ……まあ、人目が無い所でって考えると実害はそんなに……そう言う問題じゃ無いよなぁ……! 今度テミス辺りに相談してみるか。……テミスもテミスで、色々あれだが。


 何処に隠し持っていたのか、彼女は慣れた手付きで体に何時もの包帯を巻き付けていた。今の状況と関係は無いが、彼女達の包帯の長さは同じらしい。俺より背が高いテミスの包帯でさえも、小柄なレトの包帯と同じ長さだと言うのだから驚きだ。


 包帯が破れることもあるが、新しい包帯でさえも同じ長さにするとサラから聞いている。何か意味でもあるのだろうか。……いやーそこまで深い意味があるとは思えない。


 ようやく巻き終え、一応、何故か、俺の部屋に保管されてある服を手渡せば一瞬でそれを着た。


「……良い趣味をお持ちで」


 リュノがぽつりとそう呟いた


「違うからな!? 勝手に此奴が脱いでただけだからな!?」

「……確かにスティはそう言う節がありますが、最後までじっくり見ていたではありませんか……。包帯を巻く時も、服を着る時も、じっくり、舐め回す様に……」

「いやっ……けどっ……それは否定出来ない……!!」

「……モシュネと……レトにも同じことを?」

「だからリュノが勝手にやってるだけであって、俺が命令した訳じゃ無い!!」

「……良いですよ。……見るのがお好きだと言うなら……御自由に……むしろ脱がせたいのなら……あたしは旦那様の膝にいるので……」

「スティ! スティも弁明!」


 スティは特に何も言わず、相変わらず表情さえも変えずに、俺の隣にやって来た。


「そんなに私の体が好みでしたか?」

「何でそう言う方向になるんだ……!!」

「どうぞ。私一人だけなら不満と言うなら、モシュネやレト、テミス様も御呼びしますが」

「……お前等そう言う方向に考えが進むよな……」

「……少し心配なので御座います」


 ……何を心配しているのかはこの際置いておこう。


 俺の脚の上にいるリュノの膝の上にスティの長い前髪が垂れていた。それを一纏めにして、作っておいたリボンを巻いてみた。


 黒い布で出来たちょっとした装飾で飾られた質素なリボン。……うーん、まあ、似合ってるか。


「……あの、我等が主よ。これは?」

「前髪が鬱陶しそうだったからな。切るつもりも無いんだろ? ならこれで纏めておいた方が色々便利そうだ。もう夜に見掛けて悲鳴を上げられることも失くなるぞ」

「……ああ……主よ……最愛の人よ……」


 スティは俺の頬に触れると、愛おしそうに小さく優しく撫でた。


「有難う御座います……しかし……わざわざ御手数を御掛けしてしまっ――」

「あー煩い煩い。俺が勝手にやっただけだ。だからそう言わないで欲しい。分かったな?」

「……分かりました。我等が主よ」

「大事にするか?」

「それは勿論。むしろ劣化しない様に、今すぐ取り外したい位に」

「ちゃんと付けてくれよ?」

「……努力します」

「努力しますじゃ無い。命令だ。毎日付けること」

「……分かりました」


 そのままスティは何故か俺のベッドに飛び込んだ。


「……あのー……何時まで、あたしはここに居れば……」

「もう少し、な? 良いだろ?」

「あぅぅ……」

「……髪の毛から良い匂いがするな」

「あぅぅぅ……」


 すると今度はジークリンデが扉を蹴破り入って来た。


「やあやあ僕の親友ナナシ君! さいきょーでかわいー僕がやって来たよ!! おやおや、スティ君とリュノくんもいるんだ。仲良いねぇ君達。まあそれはそうか」

「扉を蹴破るのは辞めて欲しいな。何回目だ」

「私の前を遮る扉が邪魔なんだよ! エイミーちゃんも居ないし、暇だ。さあ僕の親友ナナシ君、僕の暇をぷちぷちと潰してくれよ」

「とは言ってもな……」


 気不味い沈黙が俺達の間に流れた。


「……え、本当に何も無いのかい?」

「面白そうな物は特に」

「えぇ……下ネタもOKだよ? レト君の胸は以外に揉み心地抜群だとか、テミス君に目隠ししたまま脇を擽るのが趣味だとか」

「お前の中の俺ってそんな奴なのか?」

「え? うん」

「……テミスを呼ぼっかなー!」

「……それだけは御勘弁を。さっきのことをテミス君に聞かれると僕が殺されちゃうよ……」


 俺の脚に座っているリュノの表情は依然として変わらないが、怒りの気配が漂っている。後ろから抱き締めているから何とかなっている物の、手放せば今すぐジークリンデに攻撃をする一歩手前だろうと言うことが良く分かる。


「……ジークリンデ様、幾ら旦那様の親友と言えど、礼儀が欠けています」

「けれどそうされたい、むしろそれを望むのが君達だろう? 彼にその身を捧げ犯されることさえも正当化するのが君達だろう?」

「議題がずれています。それが礼儀が欠けているのと何の関係が御座いましょうか」

「……負けそうだから撤退!」


 そう言ってジークリンデは全力で部屋から走り去った。


「せめて扉は直していけー!! ……くっそ行きやがった」

「なんて無礼な方なのでしょうか。あんなに下品なことを旦那様が仰る訳が無いのに」


 ……ようやくゆっくり出来る……。傷も完全に治ってる訳じゃ無いし、調査の為の旅路も過酷な物だった。何せ人数が増えた所為で馴鹿の休憩時間も増えてしまい、帰宅により長い時間掛かってしまった。


 それに加えてエイミーがいた。これが一番大きい。エイミーはあくまで鍛冶師であり、戦闘が出来る訳では無い。つまりあの調査において役立たずだった。一人守る人物が増えて変異体と戦うのは実に困難だった。


 まあ、何とかなったが。


 だから、少し位休ませてくれ……頼むから。


 メルトスノウ内の人物は実に親切だ。俺を快く迎い入れたことにも感謝しているし、命を張って変異体と戦い、度々雑務も熟す。数ヶ月もいれば好感度も高い様で、親しく話す友人も増えた。


 だからこそと言うか、何と言うか、五人の女性、まあつまり、上の奴から並べるとテミス、スティ、モシュネ、レト、リュノの五人に好かれていると、嫉妬の目で見られることが多い。


 ……例えば、壊れた扉の影に隠れながら、部屋の中の俺を眺めるあの二人みたいに。


「……やあナナシ、元気か」


 二人の内の一人の男性がそう言った。


「ああ、元気だ。体調に異変も無いしな」

「……コロしてやる」

「何でそんな物騒何だ」

「……そんなに可愛い子を膝に乗せて、しかも美人さんをベッドに寝かせている。……男として羨ましィィッッ!!」

「ならお前も頑張れ」

「畑管理の僕がモテると思うかァ!? フィリップさんとかの方がモテるんだよォ! お前メルトスノウ内の女子にも結構モテるんだからな!」


 すると、もう一人の女性も叫び始めた。


「独占反対! 独占反対! 可愛いこは平等に愛でる権利があるはずです!」

「独占も何も、此奴等は全員俺の物だ。全部、俺の物だ。この綺麗な髪も柔らかい肌も銀色の瞳も、中に眠る心さえも俺の物だ」

「此奴ヤバいです! 無理矢理女の子従えてます!」

「まさか。此奴等の自由意志だ。なーリュノ」


 リュノにそう笑顔で問い掛けると、彼女は俺に頬を擦り付けた。そのまま体をもぞもぞと動かしたかと思えば、俺と向かい合って抱き締めた。


「ええ、リュノは旦那様の物です。この体も、この心も、全て、全て、旦那様の所有物です。愛しております、大海の大きさをも上回る程に、愛しております」

「な?」


 二人は言葉にならない声を発したかと思うと、全力で駆けていった。何だったんだ彼奴等……。


「……なあ、リュノ、そろそろ離してくれないか?」

「……愛しています……愛しております……ずっと、ずっと……」


 胸部の辺りに冷たい感触が広がった。見れば、リュノが海水が目に沁みた時の様に涙を流していた。


「……ずっと、探していたのです。旦那様、あたしは……ずっと、ずっと……旦那様のことだけを考え、白い雪の上を歩き続けていました……だから、今はとても幸せなのです。旦那様が、あたしが触れられる場所にいるのです。……何と、幸せなことなのでしょうか……リュノは幸せです、旦那様」

「何回同じこと言うんだ」

「それ程までにあたしは幸せで、旦那様を愛しているのです。……勿論、他の姉妹達も、同じでしょう。無論あたしが一番旦那様を愛しているのですが」


 その言葉を聞いてか、スティが突然ベッドの上から起き上がった。


「リュノ、貴方、先程何と言いましたか?」

「……あたしが一番旦那様を愛しているのです。スティの愛とは所詮旦那様に拒絶される程度の物」

「後からやって来たと言うのに、大層烏滸がましいことを言いますね」

「それならレトが一番旦那様を愛していると言うことになりますが」


 ……ここに他の奴等がいなくて良かった。ややこしいことになる所だった。俺は深く安堵の息を吐き出した。

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


いいねや評価をお願いします……ペンギンの自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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