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ホロビタセカイデバケモノノタビ  作者: ウラエヴスト=ナルギウ(のペンギン)
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其の十五 第三調査開始 七

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


……と言うか文句はペンギンに言って下さい

「オッラァァァァ!!」


 フィリップがナナシの自爆によって弾け飛んだ剥き出しの肉に大鎚を叩き付けた。


 だが、所詮は打撃による攻撃。この巨体の肉の内側と言えど、大した傷にはならないのだ。


 同じくフラマが槍で肉を突き刺しても変わらない。大型の変異体にとっては、人間程度が付けられる傷では蚊に刺された程度にしかならない。


「あークッソ!! これ以上傷が付かねぇ!! おいフラマ!」


 フィリップの叫びにフラマは冷静に返した。


「どうしようも出来ない」

「何でお前はそんなに冷静なんだよ!!」

「お前の様に馬鹿みたいに騒いでも意味が無いと分かっているからだ」


 変わらず変異体は地を揺らしながら、歩みを進めていた。重厚な音を立てながら、何処へ向かっているのかも分からないまま、それは歩みを進めていた。


 すると、モシュネが剥き出しの肉に触れた。彼女の髪色は純白から漆黒へと変わり果てており、その体から白い冷気が放たれていた。


『"■■■■■■■■""■■■■■■■""■■"』


 唐突に、瞬間に、彼女の周りに風が巻き起こった。それは雪を齎し、それは全てを凍り付かせる風であった。


 すると、モシュネが触れている箇所が徐々に凍り付いた。その肉の凍結はより素早く変異体の体を伝播した。


『テミス様』

『ええ、分かっています』


 モシュネの横に現れたテミスも同じ様に、髪は漆黒に染まっていた。その手に握っていた剣を高く掲げると、それは彼女達の瞳の様に無垢銀色に輝いた。


 刃が凍り付いた肉に突き刺さると、その氷に罅が走り、細かく揺れる高音を発しながら砕け散った。


 それは変異体の胴体を分断させ、その巨体を地面に跪かせることには充分だった。


 だが、唐突に、分断された胴体の内臓から黒い煙が吹き出した。そこから感じる異様な死の匂いは、テミスとモシュネの恐怖を掻き立てるには充分だった。


 本来、彼女達は不死である。それは間違い無い。だが、そんな彼女達でも感じ取った死への誘いと、それに対する恐怖。すぐにテミスは二対の白い翼を、モシュネは一対の白い翼を背中から生やし、羽撃かせ同じく変異体の背にいるフラマとフィリップの腕を掴んで、背から飛び降りた。


 翼を何度も羽撃かせ、未だに大型の変異体を追っている橇に乱雑にフィリップとフラマを降ろした。


 フィリップは何時も通りそんな扱いをするテミスに文句を言おうとしたが、それよりも先に彼の肺の奥に激痛が走った。それは徐々に咳となり、それは更に吐血に変わった。


 吐かれた血は黒いマスクの内側から漏れ出てしまい、フラマも同じ症状を発症した。


 それは更にどす黒い血へと変わり、やがて黒い火傷の様な痕が彼等の頬に刻まれた。


 彼等は立つことも出来ずに、その場で蹲りながら更に血を肺の奥から吐き出した。


 エイミーがフラマとフィリップの背中を心配そうに擦っていたが、その症状が決して良くなることは無く、更に痛々しい咳を繰り返す結果になった。


 そんな状況の中で、ナナシは気を失っていた。今まで辛うじて気を保っていたが、やはり限界はあったのだ。


 突然、ナナシの焼き付いた痛々しい体の上に、白い羽根と黒い羽根が舞い落ちた。清淨で不浄な気配をそれから発し、心を温める優しい光を発し、その身を凍えさせる冷ややかな暗闇がそこにはあった。


 ナナシを見下す様に、ジークリンデがそこにいた。彼女は背から白色と黒色の翼を生やし、その翼でナナシを包み込んでいた。


「起きて、僕の親友」


 ナナシは何も答えない。


「雪を溶かすんだ。その火で、彼女の氷を溶かすんだ」


 ジークリンデの目は、右がナナシの様に金色に、左が七人の聖母の様に銀色に輝いていた。


「君は、戦わなければならない。僕達は、自由にならなければならない」


 ナナシは僅かに息を吸った。


「あの方が示してくれた自由の道を、君の勝手で閉ざす訳にはいかないんだ」


 ジークリンデは薄ら笑いを貼り付けた。


「ルーラッツ=ゲブニー、七つの無垢銀色の冠を持つ、獣の皇よ。七人の赤子を探し、雪を溶かせ。そして、僕の妹を救ってくれ。彼女は未だに、君を待っている」


 ナナシは無垢金色の瞳を顕にした。


 突然、ナナシの体は黒い羽根を残しその場から消え去った。


 この場にいる誰もが感じたことの無い、夏の突風が吹いた。いや、たった一人、彼女だけは感じたことのある懐かしい夏の風。汗が浮き出て煩わしくも感じる、懐かしい夏の風。


 ジークリンデは懐かしい風に髪を靡かせ、懐かしさのあまり薄ら笑いを貼り付けていた。


 周辺の雪は全て溶け、雲で隠れ久しく見なかった太陽の輝きがそこにはあった。その輝きを発しているのは、黒い翼を広げ空を飛んでいるナナシだった。


 彼の周辺にある太陽の如く輝く黄金の炎は、その内側にいる彼の身を焦がす黒い焔から発する小火であった。


 名も無き彼の髪は光を消し去る黒色で、彼の瞳は無垢金色に輝き、その頭には十の山羊の黒い角が生えていた。


 その角には四つの無垢銀色の王冠を被っており、その王は雪を溶かす火を持ち合わせていた。


 ルーラッツ=ゲブニー。彼は赤子であった。彼はレトと言う、母親の様な母性も持ち合わせた女性により優しさを育み、成長した。


 彼は何も知らぬ赤子であった。故に幼きその姿は、獣の王に相応しい。


 太陽の如き輝きが彼の胸の一点に集中すると、その輝きに触れた。それは形を生し、黒鉄の輝きを発した。そこから現れたのは、黒の直剣であった。


 彼の背から黒い翼が広がった。それは命を奪い、彼女の雪を溶かす生命の息吹きであった。


 火を尊べ。炎に頭を垂れよ。焔は我等の空を照らす。それは穢れを持つ黒色の醜き火。七つの聖火から産まれた聖母は、やがて獣の王と目合い実を結ぶ。


「ああ、アインが輝いている。ソフが産まれオウルも産まれた。生命の樹は――ハハッ!! 良いよルーラッツ=ゲブニー君! いいや、ナナシ君!! その調子だよ!! 火を燃やせ!! 雪を溶かせ!! そして聖約を果たすんだ!! 君の使命は果たされた!! 自由を掲げ、その身を焦がせ!! 君の自由を皆が見て!! 僕達は自由になれる!! ああ、僕達は自由だ!! 自由だよナナシ君!!」


 ジークリンデの笑い声が混じった魂の叫びは、きっと彼には届いていない。


 ナナシは空を漂いながら剣を薙ぎ払うと、火が辺りに散らされた。彼はバケモノであった。彼は怪物であり、人間では無かった。


 すると、一つの体が二つに別れた大型の変異体の内臓から溢れた黒い煙はより大きく空に広がると、彼が散らした火に着火したのか一瞬の内に爆破を繰り返した。


 爆発は伝播し、より巨大な火を生み出した。だが、その火は彼の体を焦がすには足りなかった。


 今の彼の火傷痕は、自らの火で焼かれてしまった自業自得の情け無い傷痕でしか無いのだ。


 その身の火は、今のナナシの身に宿すには余りに巨体過ぎた。


 大型の変異体は、未だに歩みを進めていた。胴体が皮膚一枚で何とか繋がっている状態でも、それは歩みを進めていた。


 すると、曝け出された内臓からナナシの背を超える大きさの黒い焦げ跡が目立つ卵が何百も落ちて来た。瞬きの次には、その卵に罅が走り、そこから粘着性の白い液体を纏いながら、蹲っている人型の何かが産まれた。


 白くのっぺりとした肌を持つそれは、背に亀の様な甲羅を背負っていた。

 右腕は大きく変形しており、巨大な刃になっていた。

 目は魚の様にぎょろぎょろと動き、敵である彼を見詰めた。


 ナナシは産まれたそれ等の中心に身を降ろした。今の彼は、自らの意思で動いているのかさえ分からない。


 黒い翼は大袈裟に、そして大胆に、一度だけ大きく羽撃くと、黒い羽根が雪の様に舞い散った。


 同時に、それ等は動き出した。


 ナナシよりも背が高い一体のそれは右腕を薙ぎ払い、彼の体を斬り伏せようとした。結局それも、無意味だと言うのに。


 それの右腕の刃はナナシの服をようやく切っただけで、その皮膚を僅かに切り微量の血を垂らす結果にしかならなかった。


 ナナシは鎖に縛られた左腕を素早く動かし、怪物の頭を鷲掴んだ。左手からちらちらと赤い小火が散らされた直後、それは辺りを照らす爆発へと成り代わった。


 それの頭部を吹き飛ばし、右手に握った剣を振り下ろし残った胴体を一刀両断した。


 彼は左腕の黒い鎖を伸ばし、それを投げ、一体の怪物に巻き付けた。直後に黒い鎖から炎が巻き上がり、熱を発し肉を焼き尽くした。


 彼は、牙を剥き出しにして、腕をだらりとさせ、正しく血を啜るバケモノの本性を顕にした。


 蔓延る怪物は彼にとっては自らの体を癒やし渇望を満たし腹を満たせる餌でしか無く、死にかけの変異体は自らの力の糧となる餌であった。


 酷い火傷が目立ち、痛々しいその体とは裏腹に、口から涎を数滴垂らし、本能のまま動いた。


 本能のまま動いていると言うのに、その動きの一つ一つは何故か理性的で素晴らしい技工が目立った。本能と理性の両方を併せ持ちながら彼は怪物の血を啜り、自らの渇望を満たしていた。


 やがて、怪物はバケモノによって蹂躙された。全てが焼き焦がれた肉となり、血飛沫は彼の喉を潤し、渇望を満たし、その身を癒やした。


 火傷痕は不思議と癒え、その翼は更に大きく広がり、山羊の様な角もより曲がりくねり醜く大きくなっていった。


 今の彼は、誰の意思で動いているのだろうか。


 大型の変異体の屈強な四肢さえも、その剣で切断し、そこから吹き出した血を喉の奥へ奥へと流し込んだ。


 彼の無垢金色の瞳は更に輝きを増し、誰もが畏怖の念を抱く程に恐ろしい輝きは、正しく星の輝きに相応しかった。


 大型の変異体は泣いていた。変異体は、仮にも元人間。感情的に、生物的に死の気配を恐れ、それを見れば目が潰れてしまう程の闇を発するバケモノの気配に怖気付くのだ。正しく彼は、獣の王。


 救世主を喰らう獣であり、王の使命を背負い七つの星と実を結び、無垢金色の瞳を持ち、不完全な体を持つ。


 それこそが、ルーラッツ=ゲブニーの正体であった。


 哀れナナシよ。その瞳何故失わぬ。輝きを失わぬその瞳の何が生か。


 哀れ名無しよ。


 哀れ■■■よ。白い彼女の愛を殺すとは。


 ナナシは、這い蹲った大型の変異体の首を踏み潰し、その頭を見下した。


 大型の変異体は、まるで人間の様に頭を垂れ、自らの保身に走っていた。


 まるで生を受けた小羊の様に、変異体は獣の王に怖気付き、身を震わせながら命乞いをしていた。


 そんな哀れな小羊を、彼は何の慈悲も無く燃やし尽くした。


 溢れ出た血は彼の内に更なる欲望と渇きと力を蓄え、そして彼の体は癒やされた。


 火傷は全て癒やされたが、彼はまだ本能のままに死体の血を啜っていた。だが、突然啜っていた血を勢い良く吐き出した。


 彼の渇望は満たされることは無く、その空虚を満たす為にまた血を啜った。また吐き出し、涎を垂らしまた吐き出し、何度もそれを繰り返した。


 すると、彼の前にレトが現れた。走ったにしては、足音も無く、彼女の体力は大したこと無いはずなのに息の一つも切らしていない。


 瞬間移動でもしたのだろうか。それとも、王の苦しみに居ても立っても居られなくなったのか。


 彼女は自らの手首を噛んだ。何度も何度も、血が出るまでその皮膚を噛み千切り、吹き出した血を地面に垂らした。


 その匂いに釣られ、彼はレトを獣の眼光で睨んだ。


 垂れている血を舌で、そこら辺に蔓延る畜生の様に舐めていた。やがて恍惚とした表情を向け、レトの手首を力強く掴み、その牙を突き立てた。


 本能のまま、彼女の体を押し倒し、その首筋に優しさ等一切無い猟奇性を顕にした牙を突き立て、溢れ出た血を啜った。


 バケモノの怪力に、レトは為すがままになっていたと言うのに、彼女の無表情は何処か満足そうだった。


「……ああ……ようやく……。……レトの……体を……欲望のまま貪り……そして……一つの銀の冠を……」


 彼女は彼を抱き締め、そして優しく背を撫でた。


「その身を、その心を……レトが…………全てを癒します……。……大丈夫……レトは貴方の……全てを愛し……レトは……この身を捧げます……」


 彼の渇望は満たされたのか、安堵の表情で気を失った。

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


いいねや評価をお願いします……ペンギンの自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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