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ホロビタセカイデバケモノノタビ  作者: ウラエヴスト=ナルギウ(のペンギン)
28/51

其の十五 第三調査開始 六

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


……と言うか文句はペンギンに言って下さい

 そこには、元々は人間だったとは大凡思えない程に、巨体で異形な怪物がいた。

 背中には何層もの甲羅が鎧の様に連なっており、白い雪が積もっていた。

 屈強な四肢は不気味にも人間だった頃の名残を僅かながらに残しており、五指と小麦色の肌が見えた。

 首は五つあり、その内四つには頭が無い。むしろただの棒の様にも見えた。

 だが、その四つの首は空を向いており、穴から黒い煙を発していた。

 そして、一つの首の先の頭には、多数の口がぱくぱくと動かしていた。そこから意味不明な言葉の羅列を一つ一つ異なる声で呟いていた。


「豁サ縺ュ豁サ縺ュ」

「縺薙%縺ッ莠コ髢薙′譚・縺ヲ縺ッ縺ェ繧峨↑縺」

「蜉ゥ縺代※縺頑ッ阪&繧」

「髮ェ繧呈ュ「繧√k縺ェ」

「譏溘?邇九?蝎ィ繧」

「繝溘Η繝シ繝ャ繝ウ繧呈?縺」


 踏み込む度に地面が大きく揺れ、冷たい空気が押し出され強風となって俺達を襲った。


 あまりにも巨大だ。周りのビルと大体同じ位の高さを持っている亀の様だ。


「流石にこれは……デカすぎるな」

「そうか? 大型の変異種なら此位だろう」


 フラマの冷静な答えに、フィリップは苦い顔をしていた。


「……あー。さて、一旦やってみるか。その後作戦会議!」


 フィリップの脳筋具合が悪い方向に働いてしまい、何も考えずに取り敢えず特攻していった。


 フラマの静止も最早意味も無く、フィリップは視界が不良の中大型の変異体の右前足を大鎚で殴り付けた。


 鈍い音と共に衝撃がここまで届き、僅かに雪が吹き飛んだが、肝心の変異体の小麦色の皮膚には僅かに赤い痣が残っているだけで大した傷は負っていなかった。


 そして、変異体はまた一歩踏み出した。フィリップは急いで俺達の下へ戻ったが、変異体はまた一歩踏み出した。


 俺達に気付いて敵意を向けているのか、それとも何も考えずに歩みを進めているだけなのか。だが、ここにいては踏み潰されるだけだ。俺達は、一旦この場を離れ大型の変異体の進路の反対側に回り込んだ。


「……さて。どうした物か」


 フラマが重々しい声色でそう言った。


 あの亀を橇で追い掛けてはいるが、傷を付ける方法が俺の頭だと思い付かない。


「フィリップ、あれは全力だったか?」

「一応。あの機能は使って無いが」

「……それであの程度の傷か。もう治っていそうだ」

「首を狙おうにも高過ぎる。どうする」


 フラマは橇の上で熟考をした。そして再度、不良な白い視界の所為で掠れてしまう変異体の姿を一瞥した。


 すると、フラマはテミスに視線を向けた。


「……テミス、君は確か……飛べる、はず」

「ええ、そうですね。確かに飛べますが」

「……あの亀の上にまで飛ぶことは出来るか?」

「容易でしょう。……私だけでは無く、姉妹達も。最愛の人の言葉さえあれば容易いはず」


 そう言えばレトも大型の変異体との戦いで空を飛んでいた。あれかぁ……。


 フラマは作戦を話し始めた。


「あれの脆い所は恐らく、背中の甲羅の隙間だ。守られているからこそ内側は脆い。もしくは首。彼処を切り落とせば確実に絶命する。現実的にやるなら、甲羅の隙間から行動不能にする程の傷を付け、動きを止めた所で頭を切断する。これが一番だ」

「成程、良い作戦だな。俺は反対だが」


 俺の意見にフラマは首を傾げた。


「自分で言うのもあれだが、これ以上の作戦が思い付かない。もっと良い策があるのか?」

「いや、その作戦は辞めた方が良いってことだ。あの黒い煙あるだろ? 四つの首から吹き出してるあれだ」

「ああ、見える」

「あれはヤバい。吸ったらまあ……俺でも不味いかも知れない」

「何故そう思う。根拠の無い予想は最初から除外しなければ話が進まない」

「ただの勘」


 フラマは頭を抱えた。


 まあ、当たり前だ。本来フラマは理論派。汎ゆる予想を理論で導き出し、そして予想を組み立てる。そんな組み立てた予想を破壊しようとする意見の理論が、「ただの勘」だ。


「……馬鹿にしているのか、それとも本気でそう思っているのか……」


 すると、テミスがフラマの頭を鷲掴みにしながら眉を顰めた顔を近付けた。


「貴様、最愛の人の意見を信じられないと?」


 ……テミスはもう、俺でも止められない気がする。


 いや、一度命令すればきちんと手を止める辺りまだ大丈夫なのか?


 テミスはフィリップに止められたが、未だに険しい顔をしながらフラマを睨んでいた。出来れば双方仲良くして欲しい。


「……もし、もしもナナシの意見が正しいとするなら、あの甲羅の上に乗ることは不可能だが……やはり私の作戦を強行する方が――」


 その言葉を遮る様に、鳥の死体が数十匹上空から地面に落ちて来た。その全てに嘴から赤い液体を垂れ流しており、上空を見上げれば黒い煙に触れた鳥が落ちて来ているのが分かった。


「さてフラマ。何か言うことは?」


 俺は高らかに鼻を鳴らした。無論嘲笑の意を顕にしているのだ。


「……大変申し訳無い」

「よーし良く言えました」


 フラマは無愛想に俺から顔を逸らした。


「……で、どうするんだ結局。上空から甲羅に飛び乗ろうにも黒い煙を吸えば即死。あの足にはまず攻撃が通りそうにも無い。詰んでるぞ」


 フィリップの言葉に賛同する様にエイミーが何度か頷いていた。


 すると、今まで押し黙っていたジークリンデが口を開いた。薄ら笑いは不気味な物に変わり、やがては狂気に染められた。


「要はあの黒い噴煙が邪魔何でしょ? じゃあ僕が壊してあげる。あの黒い煙吐き出してるあの器官を、ね」


 背筋が凍り付く様な恐ろしい薄ら笑いだった。


 そんな薄ら笑いはすぐに溶けた。何時も通り腑抜けた薄ら笑いに変わると、俺の方を向いた。


「た、だ、し、条件がある」


 ジークリンデは俺の前髪を撫でながら言葉を発した。


「僕と、親友になってよ。ナナシ君。それともルーラッツ・ゲブニーって呼んだ方が良い?」

「そんなことで良いのか? と言うかルーラッツ・ゲブニーって俺の名前なのか?」

「まーそうとも言えるし、そうじゃ無いとも言えるって言うか、何と言うか。とにかくナナシ君! 僕と親友になるかならないのか! どっち!!」

「まーなってやっても良いが」


 ジークリンデは今日一番の笑顔を向けた。


「言ったね!? 言った言った!! これはただの約束事じゃ無いよ!! これは()()であり()()だからね!!」


 橇の上で何度か腕や足を伸ばすと、彼女はまた俺に向き合った。


「そうだねー……丁度一分。丁度一分経ったら、戦える皆で背中に乗って」


 そう言ってジークリンデは橇から飛び降りた。


 直後に雪が吹き飛ぶ強風が吹き荒れたかと思うと、ジークリンデの体は遥か上空に浮かんでいた。


 彼女の愉快な笑い声が白い空に響いた。


 その長髪は金色に輝き、その二つの瞳は無垢金色に輝いていた。懐かしく思うその姿は、大型の変異体の背の甲羅に飛び乗った。


 そのまま揺れる甲羅の上を難無く走り去り、あっという間に首にまで到達した。


 黒い煙を吐き出している四つの内の一つの首に触れると、瞬間、フィリップでさえも痣しか付けられなかったその皮膚に切り傷を刻んだ。


 だが、この巨体からしてみればその傷は植物の葉で切った程度の傷。それが致命傷になるはずも無い。


 しかし、ジークリンデは何が面白いのかまた大きく高らかに笑った。それと同時に切り傷は更に深く刻まれた。


 やがてその首の半分を切断させると、思い切り首を蹴り飛ばした。


 骨もここまで切断されれば簡単に折れてしまい、筋肉さえも支えにはならず肌が千切れ、折り曲げた枝の様にぽつりと落ちた。


 ジークリンデは両腕を突き出し手を合わせると、言葉を口ずさんだ。


「"半獣の射手の長弓""自然の豊穣の化身扱う長弓は""火を塗り油を注がれる"」


 右手を弓の弦を引く様に後ろに下げると、左手に赤い炎で形作った弓幹が浮かび上がった。その右手には炎で形作られた弦を掴んでおり、炎で出来た矢を摘んでいた。


「"南の弓は最も輝き""海の印は次点の輝き""南に輝く六つの光""火を放つ半獣の射手の長弓は""今、我の手に""顕現する"」


 その炎の弓はそこにあるだけで亀の上の雪を全て溶かしていた。そこから白い水蒸気を音を発生させ、辺りの白い景色の理由は、降り続ける猛吹雪からそれが蒸発して発生する水蒸気の霧に成り代わった。


 それは太陽と同等か、それ以上の輝きを発し、黄金に輝いていた。


 ジークリンデは炎の弦を掴んでいる右手をぱっと離すと、弦が戻る勢いに乗せて炎の矢が変異体の黒い煙を発している三つの首に向けて解き放たれた。


 その矢は良く使われる物を遥かに凌ぎ、空間を全て炎の赤色に染める程の光量を発していた。


 その矢は進めば進む程、より光量を増し、より熱量を増した。


 直撃したかと思えば、真っ赤な景色が広がった直後に爆発音が響いた。辺りのビルの薄汚れた硝子を粉砕し、鉄筋を飴の様に僅かに溶かしていた。


 無論、三つの首は見事に爆散し、蒸発した血によって赤い雪が降り始めた。だが肝心の頭が付いている首は亀の様に自身の甲羅の中に仕舞い難を逃れていた。


「ごじゅーきゅー、ろーくじゅー」


 その声が終わる頃に、変異体の上に三つの影が写った。


 まず一つ、豪快な音を出しながら甲羅の上に着地したフィリップは、そのままの勢いと、大鎚から吹き出している炎の推進力を合わせた打撃を、獣の様な咆哮と共に甲羅へ落とした。


 衝撃は十二分に届いたのか、甲羅に一本の罅が走った。


「これでこの程度の罅か!! かってぇなぁ!!」


 そして二つ、音も立てずに甲羅の上に着地したフラマは、見事に甲羅の隙間に槍を突き刺した。


 今まで決して使わなかったエイミー特製のこの槍に搭載された魔法技術は、刃に高熱を伝え肉を焼き威力を増大させる物だ。


 それを使い、彼は甲羅の上を走りながら、隙間に槍を突き刺し何度も肉を切り裂いた。


「埒が明かないな……!!」


 そして三つ、ナナシが剣を構え降りた。


 同じ様に隙間に剣を突き刺し、吹き出た血に目を輝かせ口に入れた。


「まっっっず!! テミスの血と良い勝負だぞ!?」

「ナナシ!」


 フラマはそう叫んだ。


「乗ったは良いが思った以上に傷が付かない! どうする!」


 ナナシは剣を引き抜きながら、声を出した。


「多分一つある! でもあまりやりたく無い!」

「何をする気だ!」

「自爆する! 相当な大爆発になると思うからな!」


 ナナシは声色を変えずに、むしろもう決意を固めた表情で叫んだ。


「どうせ治るんだ! 好きな様に使わて貰う!」


 ナナシは先程自分で付けた傷に左手を突っ込んだ。


「フラマ! フィリップ! 離れた方が良いぞォ!!」


 彼の左腕に黒い鎖が現れると、そこから炎が僅かに吹き出した。左の瞳の周りには赤い罅が走っていた。そこから僅かに血が流れていたが、今のナナシにとっては気にすることでも無かった。


 直後に、先程ジークリンデが放った炎の矢と同程度の光量が左腕から発せられた。


 ほんの数秒だ。ほんの数秒だが、耳の鼓膜さえも破けてしまう音と、変異体の頑強な甲羅を紙切れの様に吹き飛ばし、熱気と熱風がナナシの体を酷く焦がした。ナナシの体はその爆発を直近で食らったが、自前の頑丈さと未だに謎の多い異常な回復能力で未だに体の原型を留めていたが、焼死体の一歩手前の状態になっていた。左腕は爆発の爆心地だったからか、弾け飛び失っていた。


 その代わり、その厚く頑強な甲羅を強烈な爆発で吹き飛ばし、変異体の肉を抉り取った。彼の犠牲で大きなダメージを与えられる場所が出来たのだ。


 彼は弱々しく倒れたが、その体を何時の間にか背後にいたレトが抱き締めた。


「……ああ……こんなに酷く……。……さあ、ここから離れましょう……ここからはきっと……私の姉達が……貴方の代わりに戦って……くれるはずです…………」


 そう言いながらレトは甲羅の上からナナシを抱え飛び降りた。


 すると、その自由落下中の二人が一対の白い翼に包まれた。その翼は暖かく、清らかな風が舞い散っていた。見ればスティの背からその白い翼が生えており、その翼を羽撃かせ空を飛んだのだ。


 飛行能力はテミスだけの特権では無いのだ。七人の聖母は全員、彼の命令と彼の命が掛かっている時には、すぐに駆け寄り舞い降りることが出来るのだ。


 スティは自らの主であるナナシと、妹であるレトの体を掴むと、翼を羽撃かせゆっくりと降下した。橇の上に僅かな息を繰り返しているだけのナナシを橇の上に寝かせた。


 彼のその酷い有り様を見ながら、レトは右の目頭から涙を浮かべ、スティは左の目頭から涙を浮かべた。


「貴方は……私達の気持ちさえも……分からないんですか……!!」


 珍しくレトが強い口調でそう言った。


 手首を何とか噛み千切り、溢れ出た血をぽかんと開いているナナシの口に垂らした。呑み込むことも出来ないのか、呼吸に合わせ吐き出していた。


 レトは口元を抑え、血を吹き出さない様にしながら、彼の頭を動かし喉に血を流そうとした。上手く血が喉を流れたのか、火傷の痕は徐々に治り、焼け付き開かなかった瞼は右側だけ動き、金色の瞳が動いた。その後の血は、何度も咳き込みながらも飲み込んでいた。


 レトとスティは御主人様の為に血を捧げ、自らの軽んじた犠牲を払った傷痕を治していた。


 その間にも、彼等は変異体の歩みを止めようと躍起になっていた。

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


いいねや評価をお願いします……ペンギンの自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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