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ホロビタセカイデバケモノノタビ  作者: ウラエヴスト=ナルギウ(のペンギン)
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其の十五 第三調査開始 二

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


……と言うか文句はペンギンに言って下さい。

「……ルミエール? 誰だ……?」

「姉です」


 困惑している俺に、テミスがそう答えた。


「我等七人の聖母の長女の名、それがルミエールです」

「……ルミエール……。そうか、ルミエールか……。ようやく、思い出せた」


 ああ、そうだ。恐らく俺が、一番思い出そうとした人の名前。それがルミエールだ。


 だが……何故だろう。違和感を感じる。ルミエールと言う名前に納得もしているが、何処か違和感を感じる。


 その違和感を払拭することも出来ずに、こびり付いている。奥に仕舞い込んだ記憶を引き出した所為なのか、もっと別の何かがあるのか。


 すると、モシュネが僅かに目を滲ませながら俺の頬を撫でた。


「何処か痛む所は御座いませんか?」

「大丈夫だ」

「……ああ……良かった……」


 俺達は一旦橇から降り、辺りの探索に動いた。


 今日はこの辺りで野営するが、早急にここが何処なのか、どうやって元の道に戻るのかを調べなければならない。


 とは言っても、フラマとフィリップとエイミーが一組でまた別の探索に行っている。


 俺はレト達と一組で探索している。


 ……少し、妙な気配を感じる。最初こそ変異体だとも思ったが、それにしてはもっと、奇妙だ。


 何も無いのに何かを感じる、そんな矛盾さえも抱く程に奇妙で不気味な何かが、俺が向かう先にある。


「……どうされました……?」

「……誰かいる。懐かしい気分が……する」


 俺は走り出した。


 向こうに、誰かがいる。その誰かが、とても懐かしく、とても、悲しくなる様な、誰かが。


 四つの静止させようとする声が後ろから聞こえた。結局それも、意味が無い位に、俺は走り続けた。


 ああ、そうだ。ずっと記憶にある。忘れてはいけない。それが彼女だ。


 それが、ルミエールだ。


 何でお前は俺から隠れるんだ。何で、俺の前から姿を消したんだ。ずっと、俺は、ルミエール、お前を愛していたのに。


『ヴェールの向こう側を見詰めると、色んな物が見えるの』

「何処にいる……! 何処にいるんだ……!!」

『鯨が空を飛んでいたり、象が海を泳いでいたり』

「ルミエール……!」

『……大好きだよ。■■■君。誰よりも、何よりも』

「ルミエール!!」


 その声は、結局雪に隠される。白い雪に埋もれ、彼女に決して届かない。


 桜の様に艶やかで、儚く、美麗に白く輝く彼女の姿が、脳裏にこびり付いて離れない。


 訳が分からない。頭の中で視界が整理出来ない。この場に満ちているのは、確かに彼女の気配だ。


 すると、背中に暖かく、柔らかい感触が密着した。それは俺の体を掴んで離さない。


「……大丈夫です……。……私達が……いますので……」


 レトだった。後ろから俺を抱き締めていた。


「……あぁ……。……済まない。冷静じゃ無かったな」

「……我等は……その寂しさを……紛らわせようと……姉様が願った結果……貴方の隣にいるのかも知れませんね…………」

 ……ルミエールのことを、少しでも思い出した所為なのか、混乱していた様だ。


 だが、やはり記憶が自然と零れ落ちてくる。この調子だと、記憶を全て取り戻すのも思っていた以上に早いかも知れない。


「……なあレト」

「何でしょうか……」

「ちょっとそのまま抱き締めててくれ」

「……分かりました……」

「……はぁ……」


 降り続ける雪を眺めながら、レトの体温を感じ心を落ち着かせていた。


「……そのまま、ずっと……あぁけどそれだと邪魔だな。……もう大丈夫だ」

「……ならもう少し」

「そうか。……俺の為か?」

「これは……私個人的な……願いですので……」


 レトは抱き締める力を強めた。


 ふと、大きな白い雪がはらはらと落ちて来たのが目に写った。


 ……いや、違う。雪では無い。それは、白い羽根だ。鳥が上を羽撃いている訳でも無く、白い羽根がはらはらと一枚だけ、俺の前々に落ちていた。


 ふと、それを抓んでみた。理由は分からない。ただ懐かしく、とても温かい。


 その白い羽根を一目見たレトは、小さく「あっ」と呟いた。


「……姉様の……」

「ルミエールの?」

「……恐らく……。……姉様の羽根だと……。……その手で、白い羽根を……包み込んで下さい」


 レトの言われた通りに、俺は白い羽根を手で覆い隠した。


 その手をレトは握り締めた。


「……"火は暖かく"……"無垢金色に輝く瞳"……"彼は僅かに熱を帯びる"……"氷は冷たく"……"無垢銀色に輝く瞳"……"彼女は僅かに冷気を帯びる"」


 すると、俺の手の中から赤い炎がちらりと見えた。黒い煙が僅かに漏れると、レトは手を離した。


 手を開けば、白い羽根は消え去り、その代わりに一本の細い木の枝があった。それは淡い紅色の花を咲かせる桜の木の枝だった。


 俺の人差し指よりも、小さく短い木の枝だった。


「……恐らく……姉様の力の一部でしょう……。……何故……ここにあるのか……それは……分かりませんが……。しかし……姉様は、貴方のことを……見守ってくれているのでしょう…………」

「……そうだと良いな」

「ええ……きっとそうです……。……私が貴方を愛する様に……姉様も……貴方を愛しているはず……ですから……」


 ……ルミエールは、一体何処にいるのだろうか。


 ……成り行きで、雪を溶かすことに協力していたが、どうやら目標が出来た様だ。


 ルミエールを探す。だって、そう約束したからな、ルミエール。


「何時か必ず会いに行く。待っててくれ、ルミエール」


 決意を言葉に、願望を口に、目標を取り決める。ああ、そうだ。


 だってそうだろう? お前は何時までも待ってると言ってくれたからな。どれだけ時間が掛かっても、どれだけ長い旅路でも、俺はお前を見付けてみせる。


 ああ、思い出した。


「五人の聖母の銀色の樹木。中心で次女が天秤を掲げ、桜舞い散り実は熟す」

「……どうされました?」

「……ルミエールはそこにいる。やっぱりモシュネに全部の記憶を想起させれば……いや、その結果がアレか。ゆっくり思い出すしか無いかぁ」


 遠い道程、と言う程では無さそうだ。特に、最初の頃と比べれば。


 俺が覚えている中で最も古い記憶、その頃と比べれば、思い出せている。大丈夫だ。


 現実を見詰めろ。あいつは夢の中にいる訳じゃ無い。あいつは今も、現実で苦しんでいる。


 ……何で、そんなことが分かるんだろうな。


「レト、これを持ってて欲しい。俺だと失くしそうだ」

「……分かりました」


 レトが桜の木の枝を受け取ると同時に、ようやく他の三人がやって来た。むしろレトが早かったのか? 偶にレトは瞬間移動としか思えない移動をして俺の呼び掛けに答えるからな。


「遅かったですね……。……いえ……まあ……仕方無いのでしょう……。……所詮その程度の……愛なのですね……姉様達……」


 レトは仮面の様に動かない表情を一切変えずに、煽る様にそう言った。


 おっと……逃げた方が良いかも知れない。


 レトもレトで即座に喧嘩を売るのは辞めて欲しいな……。


 さーてどうやって逃げようかなー。


「レト」


 スティがそう呟いた。


「我等が主に向けている私の愛が、貴様より矮小な物だと?」


 何時もよりスティの口調が強くなっている。表情は一切変えないが、激怒していることが分かる。


 ……うん! 逃げよう!


 俺はレト達に背を向け、全速力で走り出した。


 あのまま彼処にいれば、何かこう……嫌な予感がする! 嫌な気配が細い針の様に肌に突き刺さる!


 このまま俺が居なくなっても、七人の聖母は俺の場所が分かるはずだから大丈夫だろ!


 一旦橇に戻ると、どうやらもうフラマ達が戻って来ていたらしい。


「どうしたそんなに急いで――」

「四人が喧嘩しそうだから逃げて来た!」

「お、おぉ……そうか」


 橇に乗り込み、身を隠していると、突然エイミーが大きく声を出した。驚愕の声だろう。


 それと同時に、俺の背に柔らかく温かい感触が触れ合った。


 いや、もうそれが何なのか分かっている。レトだ。


「……何故、逃げるのですか……?」

「……やあレト……。……テミスとスティとモシュネは?」

「姉様達は……後から来るでしょう……。……皆……貴方に対しての愛は……所詮この程度……。……私が……私こそが……御主人様を一番愛しているのです…………」


 俺を抱き締める力が更に、腕で俺の体を縛る様に強くなった。


「……ああ……愛おしい……」


 すると、俺の体に大きな影が落ちた。すぐに上を見上げると、見慣れた白髪が靡いていた。


 一陣の剣線は、レトの横を掠めた。


 刃は木造の橇に突き刺さり、小さな舌打ちが聞こえた。


「テミス!?」

「ああ、申し訳御座いません最愛の人よ。今直ぐレトの片腕を切り落とすので」

「物騒だから辞めろ!」

「どうせ再生するので問題ありません」

「と言うか何でそんな物騒なことをやろうとしてるんだ!!」

「……彼女が私の、このテミスの、貴方様に向けている愛を愚弄した。姉妹だからこそ、片腕だけで済ませようとしているのです」


 直後にやって来たのは、モシュネだった。


 何時の間にか俺の右横に来たと思えば、その銀色の瞳を俺の顔にぐいっと近付けた。


 その瞳の奥の数多な感情が、複雑に絡まり合っていることが分かる。


 俺に向けられている感情はきっと、恋慕と愛慕と愛寵と異常なまでの忠誠心。だが、俺の後ろに向けられている感情は怒りと憎悪と厭気だろう。


「御主人様なら分かるはずです。誰が最も貴方様を愛しているのか」

「いや……その……」

「ええええ分かっております。御主人様に最も献身的に務め最も必要とされているので当然でしょう。ええ、きっとそうでしょう」

「自意識過剰にも程があるな!?」

「そうでは無いと?」

「……いや別にそう言う訳では無いんだが、決めることが難しいと言うか、何と言うか」


 すると、モシュネは俺の頬を撫でながら言葉を続けた。


「貴方様は御優しい。他の者を悲しませない為に、その様な虚偽を申したのでしょう? ええええ分かっております。何故ならモシュネが御主人様を最も愛しているのですから」


 自意識過剰もここまで来れば狂気だな!!


 すると、俺の頭が前に抱き寄せられたと思うと、スティの胸元に頭を無理矢理埋められた。


「……あぁ、我等が主よ」


 スティの言葉と同時に、俺の背に抱き着いているレトの力が強まった。


 腹部を更に圧迫し、胃の中にある物が全て吐き出されてしまいそうにな――いや胃袋の中レト達の血だけだな。


 ……それでも痛い!


「た、助けてフラマ……」

「……済まないナナシ。私は他人の惚気に介入する程世間知らずでは無い。助けたい気持ちは山々だが、山羊が今は再現不能の灰色の壁を登る様な気持ちはあるが、介入はしたく無い。……テミス、スティ、モシュネ、レト、橇から離れてやってくれ。これが壊れれば今後の移動に大きな支障が出る」

「フラマ! フーラーマー! 何で! 助けて!」

「……ナナシ。私は、他人の惚気に介入する程世間知らずでは――」

「同じこと繰り返そうとしてるんじゃねぇ!!」


 テミスが俺の服を掴み上げ、俺の体に抱き着いているレトとモシュネとスティごと引き摺りながら歩いていた。


「最愛の人よ。乱雑に扱うことを御許し下さい。ただ、じっくりと()()したいだけですので」

「はーなーせーはーなーせー!!」

「罰は後で如何様にでも受けましょう。今だけは、私を御許し下さい」


 駄目だもうこいつ!!

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


いいねや評価をお願いします……ペンギンの自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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