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ホロビタセカイデバケモノノタビ  作者: ウラエヴスト=ナルギウ(のペンギン)
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明るい炎の小火の記憶

注意※分かりにくい表現、誤字脱字があるかもしれません。そして唐突な戦闘などがあります。「そんな駄作見たくねぇよケッ!」と言う人は見ないでください。


……と言うか文句はペンギンに言って下さい。

 私は、妹と共に雪掻きをしていた。きちんと金属のマスクを着けて。


「ねーおにーちゃーんー」

「どうした」

「つーかーれーたーつーかーれーたー」

「そうは言っても、雪を退かさないと邪魔だ。俺も疲れた」


 言われた場所の雪掻きを終わらせると、近くを通った大人が話し掛けた。


 薄ら笑いを貼り付けている男性だ。黒い髪に、金色の瞳が良く目立つ。


 そして何より目立つのが、この男性はマスクを着けていなかった。


「やあやあ君達。朝早く雪掻きとか関心するね」

「……不審者だよお兄ちゃん」

「待ってくれ君。お兄さんが君達にキャラメルをあげよう。親には内緒にしてくれ」


 妹は、両手を挙げて喜んだ。


 すぐにキャラメルを受け取り、屋根の下に走ってマスクを外し口の中に放り込んだ。そのまま頬を撫でながら甘い味を楽しんでいた。


「さ、君もどうだい?」


 そう言われて出された銀色の紙で包装されているキャラメルを受け取りはしたが、食べる気にはならなかった。


 明らかにこの男性は不審者だったからだ。不審者から貰う物を食べる気にはならなかった。


「……まあ、仕方無い。それじゃあお兄さんはここで」

「ばいばーい不審者のおじさーん!」


 不審者はそのまま苦い顔をしながら何処かへ行ってしまった。


 帰路につきながら、色んな人と出会った。その顔には、必ず黒い金属で出来たマスクがあった。


 私はそれが、煩わしかった。


 ずっとずっと煩わしかった。


 大人は何も言わなかった。今なら分かる。受け入れたく無かったのだろう。


 だからこそ、私は何も知らなかった。ただこれを着けなければ怒られると言うことだけしか知らなかった。


「お兄ちゃん、これ邪魔だね」


 妹も、同じ理由だった。同じ理由でこのマスクが邪魔だった。


 俺達は今日の食料を買い取り、自分達の家に帰った。


 母親は、その食料をしっかりと熱した。熱さなければ僅かに付着している雪で汚染が広がる可能性があるからだ。


 俺達は、ようやくこの煩わしいマスクを外せた。屋内なら雪は降らない。


 この暗い雲に覆われた空に、人工的に天井を作りその下で暮らすことが出来るのだろうか。


 そして、私達は昼食を済ませ、また妹と一緒に外に出た。必ずマスクを着ける様にと何度も言われて。それが嫌だった。


 とにかく走り回った。子供だからだろう。動き続けて私は、足が鉄で固められたと言える程に走り回った。


 結局は、子供ながらに不自由を嫌っていただけ。


 我儘なだけだ。子供は不自由を嫌う。何でも出来ると勘違いして、それを夢見て将来に向けて歩む。


 私達は雪が降り積もる山を登っていた。妹とは毎日ここで遊んでいた。


 ただ、その日だけは妹の様子がおかしかった。


「……ねぇお兄ちゃん。やっぱり邪魔だよこのマスク」

「怒られても俺は知らないからな」

「ここだと誰もいないよ?」


 妹のその発言に、私はある種の納得をした。雪が降る空を見上げながら、妹の言葉を理解していた。


 確かにここだと誰もいない。遊んでいる間だけマスクを外しても、決してバレない。私達が誰かに言わない限りは。


 そうだ。最初こそ、そう思っていた。


 妹は、マスクを外した。だが、どうにも私は僅かに残った灯火の様な良心がマスクを外すことを躊躇った。


 だが、妹は無邪気だった。悪意も、他人を困らせる様な感情は一切無くただ邪魔だったから、マスクを外した。


 子供は不自由を嫌う。何でも出来ると勘違いして、それを夢見て将来に向けて歩む。それはつまり、避けられるはずの悲劇さえも子供は知らずに首を入れてしまうと言うことだ。


 何でも出来ると勘違いするから、不自由を嫌うから。


 私は妹と隠れん坊をしていた。妹が隠れる。


 一時間程、ずっと山の中を探していた。だが、一向に見付からない。


 私は半ば諦めていた。そして疲れの所為か当たり前の思考が出来なかった。だからこそ、まだ持っていたキャラメルのことを思い出した。


 そのキャラメルを食べようとマスクを外すその時、その手を誰かに止められた。


 あの時の不審者だ。


「ここで食べるのは辞めた方が良い」


 その不審者は、未だに薄ら笑いを貼り付けていた。そして、僅かな香水の香りが私の鼻を通っていた。


「君の妹は?」

「隠れた」

「……そうか。……着いて来てくれ。君の妹が何処にいるかを知っている」


 私はその言葉を聞き、その不審者に;着いて行った。


 確かに妹がいた。降り積もった雪の下に、隠れていた。


 だが、様子がおかしい。その眼球を前へ押し出して、その口角から涎を垂らしていた。


 妹に近付こうとすると、不審者が私の体を後ろに下げた。


「離れた方が良い。もう変異は始まってしまった」


 妹は、突然獣にしか聞こえない絶叫を吐き出した。それと同時に体を仰け反らせた。


 そのまま、服に隠された腹部から何かが噴き出した。

 真っ赤な果汁。それはただ、生臭い。

 そのまま、その腹部から四本の腕が突き出された。その腕の先にある手は地面を触ると、妹の体は持ち上げられた。

 その腕は、突然刃物で切られた様に切断された。


 妹の絶叫が未だに耳に残る。見れば不審者が手を前に突き出している。


 誰が妹の腕を切り落としたのかはすぐに分かった。


 妹の姿が変わった衝撃よりも、私は妹を守る為にその不審者の前に立ち塞がった。


「辞めろ! 俺の妹だ! それに――」

「ならその忌まわしい体のまま生かし続けるかい?」


 不審者はただ薄ら笑いを貼り付けたまま言葉を発していた。


「自分で殺すかい? ああ、その方が良いだろう。マスクを外そうとしたのを、何故君は止めなかった? 君の無知で! 君の業で! 君が! 君の妹を! あんな姿にした。可哀想だとは思わないかい? あの姿になってしまえば、もうキャラメルは食べられない。ただ人の血肉でしかその欲を満たせない哀れな獣に成ったんだ。さあ、どうする。君の手で殺すか? それとも見逃すか?」


 不審者は私の顔を覗き込んだ。


 私は一体、どんな顔をしていたのだろうか。それは思い出せない。きっと、酷く醜く穢らわしく歪んだ物だったのだろう。


 まだ、この不審者が言っていたことを理解することは出来ない。ただ、私は兄として許されないことをしたのだと自覚した。


 その自覚を受け入れたくなかった。だから私は不審者の足を蹴った。


 それさえも意味は無いのだと理解していたのに。


 そして、不審者の顔はより一層口角を上げた。


 それと同時に妹は、いや、妹だった獣は、悲鳴をあげて体を縮ませた。それは更に圧縮され、人の頭程になった。


 骨が砕け、肉が潰れる音が、気持ちの悪い音が、何度も何度も、嫌になる位に聞こえた。」


 私は瞼を閉じることなんて出来なかった。私は目を逸らすことなんて出来なかった。


 そして、赤い果汁が妹だった獣から大量に吐き出された。


 その肉の塊は地面に落ちると、私はようやく理解出来た。


 妹は、死んだ。


「君は何を望む。フラマ君」

「……あ……あぁぁぁ……」


 私は、ただ、自分を傷付けた。


 全て自分が悪いのだと、勝手に決め付けて。


 そして、やがて一つ、決意した。


 赤色に染まった視界で、錆びた鉄を舐める様な味がする舌を動かして、言葉にした。


「……俺の所為で、もう誰も化獣にしたくない……」


 食べたキャラメルは甘かった。

最後まで読んで頂き、有り難う御座います。


いいねや評価をお願いします……ペンギンの自己評価がバク上がりするので……何卒……何卒……

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