天使たちの帰る場所
短編です。
一気に書いてしまったお話です。
ご理解のある方に読んで頂ければ幸いです。
足元は、パステルカラーの綿菓子の様な地面が広がり、辺り一帯がピンクや黄色、水色でフワフワ、モコモコとしている。
軟らかな光が注がれ、遮蔽物はない。
どことなく話し声が聴こえてきた…
『おかえりなさい』
『女神様~ただいま~』
『暑くて、苦しかったでしょ?本当にありがとう。これで、また変わるわ』
『うん。暑くて飲み物も無くなって、頭ガンガンして痛いし気持ち悪くなって吐いちゃったけど、私、頑張ったよ』
女神と呼ばれた人が膝を着き、天界に戻ってきた一人の天使をギューギューに抱きしめた。
そう、ここは女神の神殿の一角にあるエリア。
泉の周りにはキレイな色とりどりの花が咲き誇る。
よく見ると蕾の花もいくつか見える。
風は吹いていないが、その蕾だけがユラユラと揺れていた。
先程、女神に元気良く挨拶をした3才くらいの女の子は、泉に注がれる小さな滝から滑り台で遊ぶかのように滑り走ってきた。
こちらから登るための階段は見えない。
この滑り台を使う方法は、時々現れる下界に広がる光の梯子【天使の梯子】からしか登れない。
光の梯子から、女神のいる神殿へとたどり着く。
女神は、この女の子の頭を…背中を…ぽっペタを…撫でなでしギューギューに抱きしめた。
女の子は、嬉しそうに『えへへ』と幸せいっぱいに見える
撫でられていた女の子が、ポンと光の塊になった。
女神は両手でそっと包み込み…
『ありがとう。ゆっくり休んでね』
そう声をかけると女神の手の中にあった光が、ふわりと浮かび一つの花に向かっていった。
花の真ん中でフワフワ浮かんでいると、光を包むように花びらが静かに閉じて蕾になった。
ユラユラ…ユラユラ…揺りカゴの赤ちゃんをあやすように優しく動いている。
よく良く見ると、そこには辺り一面が蕾の花だった。
女神は、いくもの蕾を慈しむように見守る。
後…何回…同じような天使を、下界から迎え入れなければいけないのかと悩んでいた。
先日も、スマホを片手に歩いている母親の後を、兄弟仲良く手を繋ぎ横断歩道をチョコチョコと歩いていた天使たちが帰ってきた。
その前は…親戚たちと河原でバーベキューをしていて、静かに溺れてしまった天使が…
チャイルドシートを装着したまま、車内に放置されそのまま…
夜、いつものお留守番をしていて、妹が寒いとストーブを付けてあげたら、火事になってしまいそのまま…
まだ世の中に産まれる前に、アルコールとタバコにより帰ってきた天使も…
アト…ナンカイ…
あと何回、子供たちが我慢すれば、下界の人々は気が付いてくれるのか…
あと何回…同じ事を繰り返し…子供たちが犠牲になるのか…
まだ救いなのは、少しでも世間が、世論が変われと動いてくれる人たちがいる事。
何も能力を持たない子供たちが、体を…命をかけて【間違い】を示している。
その失われた命により、やっと意識が変わろうとしている。
この広い天界の花畑が、『蕾でいっぱいにならないように…』と祈りながら。
今日も女神は、起きてしまった事件を悲しみ怒るよりも、精一杯短い人生を生きて頑張ったけど帰ってきてしまった天使たちを、優しく労っている。
光に戻った天使は、花のゆりかごでユラユラと癒されながら…
次に無事に産まれられるまで…
ゆっくりとその時を待っている
それが何年、何十年後かなのかは…
誰もわからない…
そして…子供たちを犠牲にした大人は、次に親になる事は出来ない。
どんなに、望んでも…
どんなに、お金や時間をかけても…
そのペナルティーは消えない
私の【天使】が二十歳になります。
おめでとう。
私が、向こうに行ったら絶対に見つけるからね!
それまで待っててね。
あなたに恥じない様に、途中で投げ出さず育児…介護…人生を楽しむから。
勢いで書いて、投稿してしまい…
申し訳ありません。