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【Web版】町人Aは悪役令嬢をどうしても救いたい【後日談のみ連載中】  作者: 一色孝太郎


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後日談第12話 元町人Aは月の魔草の種を食べる

2025/02/15 誤字を修正しました

 最初のほうこそ防戦一方の絶望的な状況ではあったものの、少しずつその攻撃に慣れてきた俺たちはダークフェンリルの攻撃を防ぎつつも決定打を与える方法を探している。


 まずわかったことは、ダークフェンリルは月の魔草を狙っているのでそれを背にしていると黒い電撃を牽制目的でしか使ってこないということだ。


 こうすればダークフェンリルの攻撃は咆哮(ロア)と直接攻撃がメインとなるので、相当戦いやすくなった。


 卑怯かもしれないが、俺たちだって負けるわけにはいかない。


 この森に眠っているメアリーという人物に何らかの因縁があるらしい変態と森の魔女、そして導きの杖をどうにかするために是が非でも月の魔草の種が必要な俺たち。


 それぞれの目的を果たすためにも、手段は選んでいられない。


 なお変態はというと、今はミリィちゃんの入っている段ボールの上でダークフェンリルの攻撃を防いでいる。


 なんでもダークフェンリル相手となるとあの段ボールだけでは足りないらしく、変態が直接守る必要があるらしい。


「ウォォォォォォォォォォン!!」

「聖氷鎮静」


 再び咆哮が飛んできた。しかしアナがすぐさま魔法で状態異常を解除する。


「こいつ!」


 俺は咆哮を撃ったあとの硬直を目掛けてサイガを放つが、それと同時にダークフェンリルは黒い雷のようなものを纏った。


 すると俺の放った弾はその黒い雷のようなものに弾かれてしまい、ダークフェンリルにダメージを与えることはできない。


「ダメか……」


 サイガの弾速は音速を超えているというのに、すさまじい反射神経だ。


 単に銃口を向けるだけでは防御してこないので、ダークフェンリルは明らかに発射された銃弾に反応して防いでいるのだ。


 堕ちたとはいえ、さすが神獣だ。


 そんなわけでやられはしないものの、撃退できるわけでもない。


 そんな攻防を続けていると、徐々に木々の間から見える空が明るくなってきた。


「……夜明け?」

「アレン! 早く月の魔草を!」


 段ボールの上にいる変態の鋭い声に反応し、俺は月の魔草を確認してみた。するとなんと先ほどまで花が開いてたその場所に一粒の青い大きな種が実っている。


「早くそれを半分にして食べなさい!」

「あ、ああ!」


 俺は急いで月の魔草に駆け寄ると、その種をむしり取る。


「グォォォォォォォォォォ!!」

「させません!」


 ダークフェンリルが雄たけびを上げながら突っ込んできた。だが変態と森の魔女が魔法でその勢いを削いでくれ、そこにアナが剣で攻撃を加えることでダークフェンリルを押し返す。


 俺はその隙に持っていたナイフで月の魔草の種を二つに割った。


「アナ!」

「はい!」

「グォォォォォォォォォ!!」


 再びダークフェンリルが突っ込んできた。


「アレン! アナスタシア! 早く!」


 いつの間にか段ボールの上からこちらにやってきていた変態と森の魔女がなんとかその突撃を食い止めてくれている。


「ああ!」


 俺はアナに種の半分を手渡すと、残る半分を口に入れた。


 硬くてものすごく苦いが、今はそんなことを言っている場合じゃない。


 急いで咀嚼し、苦いのを我慢してそのまま飲み込んでしまう。


 すると次の瞬間、体中の血が逆流するかのような不快な感覚が襲ってきた。しかもどんどん周囲の様子が分からなくなり、まるで何もない空間に漂っているかのような錯覚を覚えるほどだ。


「あ、ぐ……あ、アナ……」


 俺は思わずアナの名前を呼んだ。


「アレ……ン……」


 するとどうやらアナも同じような感覚に襲われているらしく、苦し気な返事が聞こえてきた。


 アナが立っていた場所を思い出して手を伸ばすと柔らかな温もりが手に触れ、その温もりが伸ばした俺の手を握ってくれる。


 ああ、これはアナだ。


「アレン……」

「アナ……」


 俺たちはお互いの名前を呼んだ。真っ暗闇に漂っているかのようで、ともするとこのまま消えてなくなってしまいそうな錯覚にも陥りそうだが、この温もりが俺たちを繋ぎとめてくれている。

 

 そうしてアナの温もりを頼りに不快な感覚に耐えていると、突然全身の感覚が戻ってきた。


「あ、これは……」


 急に視界がクリアになり、そして恐ろしいほどの魔力が体中にみなぎっていることがありありと感じられる。


 そして目の前には目を閉じて眉間に皺を寄せて苦しんでいるアナの姿がある。


 握っている彼女の手を少し強く握ってあげると、苦しそうなアナの表情が突然安らいだものへと変化した。


「アナ? 大丈夫?」

「あ……アレン……はい」

「ああ、よかった」

「アレンこそ……」


 俺たちはお互いが無事であることに安堵する。


「ウォォォォォォォォォォン!!」


 しかしそんな俺たちにダークフェンリルは咆哮を放ってきた。


「そうだ! くそっ!」


 おかげで今が戦闘中であるということを思い出し、変態と森の魔女、そしてミリィちゃんの隠れている段ボールを確認する。


 するとなんと! 森の魔女は膝をついており、変態は段ボールの上に戻っているもののボロボロになっている様子だ。


「大丈夫ですか?」


 俺は近くにいる森の魔女に声をかけた。


「……無事に成功したようですね。その様子なら、お二人の魔力はダークフェンリルを上回っていることでしょう」

「え?」

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― 新着の感想 ―
[一言]  書籍を改めて読み直していたのですが、ウェスタデールのクロード王子について、退学後の様子が書かれてない気がします。  ぜひこのウェブ版で、クロード視点なども読みたいですね。
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