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【Web版】町人Aは悪役令嬢をどうしても救いたい【後日談のみ連載中】  作者: 一色孝太郎


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後日談第9話 元町人Aは突破口を知る

「ロー様。迷宮とは造れるものなのですか?」


 驚いたアナが変態に思わずといった様子で聞き返した。


「当然です。迷宮とて造られたものです。自然に形作られたわけではありません」

「迷宮は人の手によって造られたのですか?」

「いいえ、違います」


 驚くアナに変態はすまし顔のまま表情一つ変えずにきっぱりと否定した。


「では、誰によって造られたのですか?」

「多数は神々の手によって造られました」

「え?」

「は? 神の力で造られたのなら、それを俺たちがどうにかすることは無理なんじゃないのか?」

「そうですね。今の二人では難しいでしょう」


 んんん? どういうことだ? 自分たちで造ればいいと言っておきながら、俺たちでは造れないと?


「迷宮を作り出すには、人知を超越した力が必要となります。そうでなければ、地下に空を作り出すようなことはできません」

「それはそうだとは思うが、そうすると問題の解決にならないんじゃないか?」

「そうでもありませんよ」


 変態はそう言って、したり顔で俺のほうを見てきた。今はアナがいるから大人しいが、きっと二人きりだったなら「プークスクス。アレン(うじ)はこんなことも分からないのかおっ」などと言いながらからかってきたに違いない。


「どういうことだ?」


 そう尋ねた俺を変態は再びじっと見つめてくる。それからしばらくの沈黙が流れ、変態がおもむろに口を開いた。


「迷宮を作り出すには、神の力を降ろして行使することが必要となります」

「神の力を降ろす?」

「そうです。ですが、二人の魔力はまるでその域に到達していません。だから、『今の二人では難しい』のです」

「ロー様。それではどのような修行をすれば、そのような魔力を得られるのでしょうか?」

「アナスタシア。いい質問です。魔力を得る方法はいくつもありますが、通常の修行をするだけでは必要な水準まで辿りつけないでしょう。神より最高レベルの加護を授かったうえで数十年もの長きにわたって努力をし続けられればあるいは、といったところでしょうか」

「では、他の方法というのはなんでしょうか?」

「自身の魔力で足りないのであれば、他から魔力を借りればよいのです」

「他から借りる?」

「はい。かつてロリンガスが行った方法と同じです」

「ロリンガス様が!?」

「そうです。月の魔草(まそう)の種を食べるのです。そうするとかなり高い確率で命を落としますが、命を落とさなければ人の枠をはるかに超えた魔力を得ることができるでしょう」

「命を、落とす!?」

「そうです。命を落とすかどうかは食べてみなければ分かりません。ですが使命のある二人であれば、きっと神がお救いになることでしょう」


 いやいや。ほぼ最後の手段じゃないか。そもそもアナにそんなリスクを取らせるわけにはいかない。もし食べるにしても、俺が種を食べるほうがいい。


 そう申し出ようとしたとき、俺が言葉を発するよりも早くアナが口を開いた。


「私がやります」

「アナ!?」

「アレンはラムズレット王国にとってなくてはならない人間です。ここで命を掛けるような真似をさせるわけにはいきません」

「そんなこと! アナこそ必要だ! 俺はラムズレットの血を引いているわけじゃない。それに、アナがいるからラムズレットの一員になったんだ。アナのいない世界なんて!」

「ですがアレン。あなたがいなければラムズレットは――」

「嫌だ! 俺はアナと一緒に生きる。そうじゃなければ意味がないんだ!」


 俺はアナの手を握ると、アナも俺の手を握り返してくれた。


「アレン……」

「アナ……」

「二人とも。気持ちはよく分かりましたが、二人の世界に入るのはもう少し後にしてください」

「「あ……」」


 急に指摘され、恥ずかしくなった俺たちはどちらからということもなく手を離す。


「いいですか? 命を落とす可能性が高いのは一人で食べた場合です。一度に食べる量を適切な量に減らせば、命を落とすことはありません」


 それを先に言え。


 そう口元まで出かかった言葉を俺はなんとか飲み込む。


「それに、そろそろ月の魔草が花を咲かせる季節のはずです。月の魔草のある森まで案内しましょう。私も、その森には訪れなければならない用事があります」


 なるほど。森の魔女の口ぶりからして変態とは何やら因縁がありそうな様子だったし、変態なりに何か理由があるのだろう。


「それではアナスタシア。ミリィを連れ出すことを女王に伝えてきてください」

「はい」


 変態の言葉にアナは素直に従って部屋から出ていく。


「あー、疲れたんだお」

「お前は相変わらずだな」

「アレン(うじ)も相変わらず口が悪いんだお。それにボクチンが教えなかったら、アレン(うじ)は手掛かりもなくあちこち行く羽目になっていたんだお」

「あ、ああ。それはまあ、感謝しているよ」

「感謝しているなら、早く娘を作って連れてくるんだお」

「……お前、本当に気持ち悪いよな」


 おっと、しまった。つい本音が漏れてしまった。


「し、失礼なんだおっ! ボクチンは単に愛でたいだけなんだおっ! 大体、アレン(うじ)はボクチンの同志なんだおっ!」

「いや、絶対違うから」

「そうは言っても、アレン(うじ)は娘を授かってその子を溺愛すること間違いなしなんだおっ! 光の精霊の予言なんだおっ!」

「……大体、どうして女の子が生まれる前提なんだよ。男の子の可能性だってあるだろう?」

「娘なんだおっ! 光の精霊の予言なんだおっ!」

「呪いの言葉の間違いじゃないのか?」

「あ、相変わらず失礼なんだおっ!」


 変態はそういって少し引きつった笑みを浮かべた。


「ま、まあ。呪いは言い過ぎたかもしれないが、どっちが生まれるかは分からないからな」

「そんなことないんだおっ! 絶対娘なんだおっ!」


 そう言って変態はなぜか勝ち誇ったような表情を浮かべるのだった。

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