1章1A 新天地
「は、はじめまして。山田和哉です。よ、よろしくお願いします。」
ざわめく教室の中、自己紹介をした。続けて先生が、
「みんな、仲良くしてあげてね。さて、どこの席にしようかな。」
と言い、教室をぐるっと見回した。
なんとまあ、ちょうど計算したように、縦5列、横7列で、綺麗に並んでいるのだ。
そのまま、30分(体感)ほどたって、適当なところに座らされた。
まあ窓際の一番後ろの席だったから、授業中に寝るにはちょうどいい。
そんなことを考えていると、前の席の子が話しかけてきた。
かなり体が大きく鍛え上げられているようだ。いかつい感じがするし、正直、あまり関わりたくない。こんな人とつきあっていたら、可愛い子が逃げてしまいそうだ。
ちなみに、僕の今年の目標は、モテモテになることだ。(去年も一昨年もずっと同じ目標だ。悲しいかな。)
しかし!今年の僕は一味違う!
シャンプーのメーカーを変えたのだ。これでモテモテ間違えなし!
しまった。熱が入りすぎてかなりの行数を使ってしまった。
そろそろ話を元に戻そう。
で、その子に、
「俺は、佐藤正邦、よろしくな、転校生。」
と言われたので、適当に笑ってごまかした。
しかし、立て続けに
「ねえ、どこからきたの?」とか
「ねえ、身長何センチ?」とか
「ねえ、風呂ではどこから洗う?」とか
「ねえ、東京特許許可局って言って。」とか訊いてきたので
「出身は川橋市、身長は169センチ、風呂では頭から洗う、東京特許きょきゃきょきゅ。」
と、素っ気なくいった。一つ後悔していることは、東京特許許可局を噛んでしまったことだ。
「はあい、それでは春休みの宿題になっていた、ムカデを集めまーす。」
先生が急に言った。え?ムカデってあの虫のムカデ?
まさかそんなもの学校に持ってこないだろう。
仮にムカデを捕まえてくる宿題があったとしても、女子とかが、キャーって言って集められないだろうし。
そうか、ムカデって名前のワークかなんかなのかな。変わった名前のワークだな。
などと考えていると、その考えを否定するかのように、みんなが鞄から虫かごに入ったムカデを取り出した。
僕は驚いた。月のウサギが地球にやってきた時と同じくらい驚いた。
男女問わず持ってきていた。
僕の口がリンゴ3個分くらい開いているのに気付いた佐藤が、
「この学校じゃムカデも捕まえられないような奴は2年生として認められないんだぜ。」と、説明してくれた。
しかし佐藤の机の上にはムカデの入った虫かごはなかった。
僕が、どうしたの?と訊くと、
「だってえ〜ムカデなんて気持ち悪い虫、捕まえられるわけないじゃない。」
といった。
いやいや、2年生として認められていない人が言っても…。
それと、佐藤のようなガタイのいい人がそんな口調で話すと気持ち悪い。
で、想像通り佐藤の元に先生がきた。
「佐藤、お前は1年生からやり直しだな。」
そう言って、佐藤を引きずっていった。
本当に連れて行くのにも驚いたが、ガタイのいい佐藤を引きずれる先生にはもっと驚いた。結構歳いってそうなのに。
でも、佐藤がいなくなったのはちょっと嬉しい。
僕のモテモテプロジェクト…略してMMPが少し進行した気がした。
〈続〉