8話 サウナで
しばらくして、私の放尿が終わると、いっぱいの人に見られている気がした。
すると、私の背後から、もう一人の仲居さんがやってくる。その女性は私をトイレに案内してくれようとした仲居さんよりも、年上で、ベテランのようだった。
「お客様、ここは掃除しておきますので。どうぞ着替えてきてください。ほら、麻衣ちゃん、お客様のお着替えを手伝ってあげて」
その仲居さんは一枚の雑巾を手に取り、すぐに私の黄色い水たまりを拭きながら、同い年の仲居さんに指示を出す。
「は、はい!」
麻衣という名の、私をトイレに案内してくれた仲居さんは、威勢よく返事をした。
私は、黄色い水たまりと、ぐっしょりとおしっこを吸ったおむつをその場に残して、手を引っ張られるままに麻衣さんについて行った。
そのまま歩いていくと、麻衣さんは館内の一つの部屋の前で立ち止まった。
「ちょっとまっててね」
麻衣さんがスライド式の戸を開けて、先に中に入って、部屋の中で何かものを探している。
数分後、私は手招きをされたので、恐る恐る中に入った。
入った中には、おむつ替えシートが敷かれていた。
「ここは?」
「私の部屋だよ。おむつ付け替えてあげるから早くここに寝て」
私は言われたとおりにおむつ替えシートの上に寝転んだ。
そういえば、麻衣さんから、お客さんと仲居さんといったよそよそしい態度がなくなっている。私は新しい友達ができたようでとてもうれしかった。
麻衣さんの手元にはおむつや、濡れタオルなどおむつ替えに使うものがたくさんあった。
「じゃあ脱がすね」
麻衣さんはそう言いながら、私のびっしょりと濡れたロングスカートに手をかけた。
おむつがさっき破れてしまったせいで、ロングスカートを脱がされると、私の下半身がすぐにあらわとなる。
「えっ、つるつる……」
麻衣さんがとても驚いた様子で、私の下半身をまじまじと見る。
そう、今の私の下半身には、全く毛が生えていないのだ。
今でもおねしょをするせいで、日々おむつをしていて、おむつかぶれを防ぐためにお母さんが剃ってくれたのだ。
「あなた、日常的におむつしてるんだ……」
「うん……」
私は恥ずかしくて小さい声で反応した。
すると、突然におむつ替えをしてもらうために横になっている私の上に、四つん這いになりながら麻衣さんが覆いかぶさった。体と体は接触していないものの、麻衣さんの吐息があたり、長い髪が私の頬をくすぐる。
こんなのはたから見たら、女の子同士でエッチなことをしているように見えるだろう。
いやいや、当事者の私ですらも少しエッチな気分になり、拍動速め、呼吸を荒らげてしまう。
「ま、麻衣さん! どうしたの!?」
私は思わず、麻衣さんの肩に手を当てながら聞いた。
すると、麻衣さんの呼吸がもとに戻り、我に戻ったかのように、私の上から離れていく。
麻衣さんは元の体勢のように、私の寝転んだ体のすぐ横で正座をした。
「里穂さん、おむつを今から替えますね」
私はまだドキドキしているせいで、こくりと一度うなずくことしかできなかった。
麻衣さんの手つきはとても慣れているようで、見る見るうちに私の下半身がおむつに覆われていく。
その後、私は旅館の浴衣を着ることになった。
「おしっこで濡れた服は、洗っておくね。それと、11時に温泉の脱衣所に来てくれないかな?」
「ありがとう。ところで11時って入浴禁止なんじゃ……」
「いいの、実は私はこの旅館の女将の娘で、ここに住んでるから」
驚いた。まさか、麻衣さんが女将さんの娘だっただなんて。
でも確かに言われてみれば、私たち家族を案内してくれていたおかみさんの面影があるような気もした。
「ダメ! そろそろ戻らないとお母さんに怒られちゃう! じゃあ、また11時に脱衣所ね!」
麻衣さんは、とても慌てた様子で部屋を出ていった。
私は、トボトボと一人で、エントランスまで歩いて戻った。
するとちょうど今、お母さんたちが紹介を終えて帰ってきていた。
私の姿を見たとたん、千香が私に抱き着きに来る。
「なんで、お姉ちゃん着物着てるの?」
「これは浴衣だよ。えっとね、ちょっと早く浴衣着たくなっちゃって……」
私は苦し紛れの嘘をついた。お母さんと、お父さんがふたりして私のことを見ている。
「似合ってるわよ。さあお部屋に行きましょうか」
お母さんがとお父さんが私のもとに来て私の頭を一度なでる。
2人は私を励ましてくれているようだった。
私たちは部屋によって、荷物を置いた後、早速温泉に入ることにした。
この旅館の温泉は女湯、男湯、そして混浴の三つに分かれていて、うちの家族は女ばかりの家族でお父さんがかわいそうなので、混浴することにした。
しかし、私にはまだ一つ心配事がある。
それは着替えるときに千香におむつが見られてしまう可能性があることだ。
私はみんなに先に行ってもらうことにして、部屋でおむつを外してから脱衣所に向かった。
混浴があるとはいえ、もちろん脱衣所は男女別々で、私は少し安心した。
私はすぐに、浴衣を脱ぎ、タオルで隠しながら、混浴風呂の扉を開く。中でお父さんとあって、私たち家族はまず体を洗う。
この時、私と千香は、お父さんとお母さんに挟まれていて、周りの目を心配する必要はあまりなかった。
しかし、体を洗い終わり、温泉に浸かろうとした時だった。すでに温泉に浸かっている私と同い年ぐらいの少年が私のことをじっと見てきている。
そしてその視線は私がおもらしをしているときに感じた視線と同じもののような気がした。
私は恥ずかしくなり、より一層タオルで神経質に隠した。
私は少年の目を避けるためにも、少年から少し離れたところでお湯につかることにした。
湯船につかるときはタオルを外さなくてはいけないため、より恥ずかしいかと思っていたけど、お湯につかればかえって見えなくなり、私の心から恥ずかしさは消えていった。
しかし、しばらくしてまたさっきと同じ視線を感じる。
私はとうとう恥ずかしくなって、視線から逃れるためにもサウナに向かうことにした。
すると、千香が私の右手首をつかむ。
「千香も、お姉ちゃんと一緒にサウナ行く!」
「いいよ、いこっか」
私は背後からの視線にも気を付けながら、サウナにたどり着いた。
このサウナも混浴風呂の中にあるので、男の人がいてもおかしくなかったが、幸いサウナの中には誰もおらず、私と千香だけだった。
むわっとしたサウナ独特のスモークが私達の体を包み込む。
私と千香は木の段差の上に敷かれたマットに腰かける。
それから、私たちは姉妹仲良く話し込んでいた。
すると、突然サウナの扉が開いて、私たちの体をサウナの外の空気が少し冷やす。
誰かが入ってきたのだと思い、私は開いたドアの方をを見た。
すると、そこにはさっきの少年が立っていた。
少年は立ったまま私の方をじっと見る。
しかし少年は決して私の胸や下半身に目を向けることはなかった。
私は目を合わせれば、襲われてしまうのではないかと思い、私は俯いたままだった。
サウナの中は湿気と、静寂で包まれていて、そのせいかさっきまでは元気に話していた千香も、黙り込んでいた。そろそろ熱くなってきたので、千香を連れてサウナを出ようと思ったその時、少年が静寂を破った。
「あの、さっき廊下でおもらししてましたよね?」
やっぱりさっき私がおもらししているときに感じた視線はこの人のだったんだ。
駄目、こんなところで言われたら、千香に私のおもらしがばれちゃうよ……