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5話 久しぶりのおむつ

 私は落ち着きを取り戻し、お母さんの胸から顔を離す。

「お母さん……ありがと……」

私はすすり泣きつつもお母さんにお礼を言った。

まだ少しすすり泣いたり、嗚咽をあげたりしている私を見て、お母さんが背中を強くさする。

「ほら、着替えに行くよ。それにおむつも買っておかないとね」

「もう漏らさないもん!」

私はそう言いながらつい笑ってしまっていた。私の顔からは涙が消え、涙の通った跡だけが残っている。私は一瞬にして私を元気づけることができるお母さんがすごいと思った。


 私とお母さんは車から降りてサービスエリアの多目的トイレに向かった。

たってみて気が付いたが、私は座席に座った上に、前押さえまでしていたせいで、スカートの前後両方がびっしょりと濡れていた。

ブランケットも濡れてしまい、ほかに私の下半身を隠せるものはなかったので、私は恥ずかしいがそのままトイレに向かうことになる。

お母さんが私の後ろに密着して、私のお尻のしみは隠してくれていたが、前はどうしても隠せず、周囲の人にじろじろ見られていた。


 「ねえ母さん、あれ見て! あの姉ちゃん、おもらししたのかな?」

「こら、祐樹だっておねしょすることあるでしょ」

私の左前辺りにいる、千香と同い年ぐらいの男の子が、私のことを指さしながらその子のお母さんに尋ねる。私の耳が真っ赤に染まっているのがわかる。

それから私が余計に周りの目を気にしてびくびくしていると、お母さんが私のそんな様子に気が付き、私を安心させるように声をかけてくれる。


 私たちは多目的トイレの前に到着した。

「じゃあお母さん、里穂のおむつ買ってくるから、鍵閉めてまっててね」

「うん。ありがとう」

私は言われたとおりに、多目的トイレに入り鍵を閉める。


 私はトイレの中の鏡に映る自分をよく見た。

赤ちゃんのように泣いたせいで私の目元は赤くなっている。それに、目じりから頬にかけて涙が流れた跡ができている。

私は多目的トイレ内に設置されている洗面台で、一度顔を洗う。

すると、朝の準備をしているときのいつもの私の顔に戻った。


 お母さんがなかなか戻ってこない。私は便器に腰かけてお母さんを待つことにした。

確かあの時も、鍵を閉めて待っててと言われて、お母さんが着替えを持ってくるのを待っていたんだ。あの頃から私、何も成長できてないかもしれない。

むしろ今からおむつを履くなんて、余計に退行している気がする。


 高校二年生の乙女が車内でおもらしして、サービスエリアでおむつを買って、おむつを履くなんて……

それに、おもらしして、赤ちゃんみたいに泣きじゃくって、お母さんの胸の中で泣き止ませてもらうなんて……

「もう私、ほとんど赤ちゃんじゃない!」

私は独り言を言いながら頭を両手で抱える。車内での出来事を思い出せば思い出すほど恥ずかしくなる。


 トイレのドアが二回ノックされる。

「里穂、開けて。おむつ買ってきたよ」

いつも聞きなれたお母さんの声だったので、私はすぐさまトイレのカギを開けた。

ドアを開けた先にはもちろんお母さんがいたが、その少し奥に先ほどの男の子がたっていた。

「ねえ母さん。あの姉ちゃんおむつ履くんだって!」

男の子は明らかに私のことを指さしながら言う。すると周りにいたほかのサービスエリアの客までもが私のことを見る。

顔から火が出るほど恥ずかしい。


 私はお母さんの右手を取り、すぐさま多目的トイレに引っ張る。

そして私は多目的トイレのドアと鍵を急いで閉めた。

「もう、おむつって言わなくていいじゃん」

私は頬を膨らませながら、お母さんを軽く怒鳴る。

「里穂は、ちっさいときからずっとその怒り方よね。おむつも似合うかもしれないわよ」

お母さんは私のことをからかいながら、私の膨らんだ頬を人差し指で押す。


 お母さんの言う通り、私はいつも怒るときに頬を膨らませる。そんな時はいつでもお母さんが私の頬を人差し指で空気を抜き、元気を取り戻させてくれる。

そんな子供っぽいしぐさをする私が、子供っぽくおもらしをして、子供っぽいおむつを履かされる。わたしはまだまだ子供なのかもしれないな。


 「ほら、おむつつけてあげるから、そこのおむつ交換台に横になって」

「え、横になるって、もしかしてテープタイプのおむつなの!?」

「もちろんよ。だって里穂は一回のおもらしでの量が多いんだから」

おむつからおしっこが漏れ出して、せっかく着替えた服がまた濡れてしまうのも嫌だったので、私はしぶしぶ了承する。


 「じゃあまず、スカートとパンツ脱いで」

私はうなずき、自分のスカートに手をかける。スカートは私のおしっこを吸ってだいぶ重くなっている。スカートを下すと、私のもともとは真っ白だったはずのショーツが現れる。

私はショーツにも手をかけた。おしっこが外気にさらされ、ショーツはとても冷たくなっていた。私はぐっしょりと濡れたスカートとショーツを洗面台に軽く掛ける。


 私はとうとうおむつ交換台に横になった。お母さんがおむつをつけやすいように、私は両足を開く。股間がとても寒く感じる。しかし、次の瞬間、ふんわりとした感触が私のお尻を丸ごと包み込む。お母さんは的確に私のおむつをつけていく。

寝る前にはいつもおむつを付けてもらっているが、昼間におむつを付けてらうのはとても久しぶりだった。

「できたよ」

お母さんがそういいながら、いつものように私のお尻をおむつの上から二度たたく。


 私はおむつ交換台から降りて、お母さんが持ってきていたロングスカートを手に取り履いた。ロングスカートがあって本当に良かった。もし普通のスカートしかなければ、いろんな人におむつを履いているということがばれてしまうだろう。

私はおしっこで濡れた自分の服を水で洗い、水分を落としてから、ビニール袋に入れた。


 私は鍵をあけて多目的トイレをでる。

車に戻ろうと、歩いていたが、不自然なお尻のふくらみのせいで、おむつを履いていることがばれてしまうのでないか気が気でなかった。

今度は、周囲の人に何も言われることなく、車にたどり着くことができた。

後部座席のドアを開けると、お父さんが私のおしっこでびしょびしょになったシートを拭いてくれていた。


 ありがたかった。けれども、私はおむつしているとはいえ、高校二年生の乙女なのだ。

お父さんにおもらしの処理をされるのは、少し恥ずかしかった。

だけど私は、おもらしの処理をしてくれたお父さんに、小声でお礼を言う。

聞こえていたか分からないが、お父さんは私のことを一度見た後、運転席に戻っていった。


 私は後部座席に座り、あることに気が付いた。それはお父さんと一緒にいた千香が、私のおもらしの処理を見ていたのではないかということだ。

私は座った状態から、少し立ち上がり、助手席に座っているはずの千香を見る。

すると、千香はシートベルトに取り付けられた枕に頭をのせて、ぐっすり眠っていた。


 車は再び動き出し、サービスエリアを出発した。

このままおもらしすることなく、旅館につければいいけど……


 

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