4話 車で
千香が珍しくおねしょをしてしまった今日は、一泊二日の家族旅行に出かける予定の日だった。
目的地は高速道路を使い車で4時間ほどのところにある温泉旅館だ。
私は車に乗り込もうと、いつも座っている助手席のドアの前にいく。
「千香も助手席すわってみたいなあ」
千香が私のところにやってきて、私を見上げながらそういった。
私は千香と目線を合わせるためにしゃがむ。
「いいよ。今日はお姉ちゃんと交代だね」
「うん!」
おねしょをしてしまい、つい先ほどまでしょんぼりとしていた千香に笑顔が戻ったので、私はとてもうれしかった。
結局私は、お母さんと後部座席に座った。
それから私は、家族と談笑しながらゲームをして、車中を過ごす。
私はゲーマーとまではいかないが、結構ゲームにのめりこんでしまう性格だった。
すると、突然車中のETCが機械的な単音をあげた。
私は一度ゲームを中断し、窓の外を眺める。私の視線の先には高速道路の出入り口の門があった。
私は本来、高速道路に入る前に、コンビニのトイレに行き、おしっこを出し切るつもりだった。
しかし、もう時すでに遅く、車はどんどんと高速道路を走っていく。
でも大丈夫なはず。遠出するときは必ずといっていいほど、お母さんがおむつを持ってきてくれてるから、もしトイレに行きたくなった時に、お母さんにこっそり頼めば何とかなるはず。
私はそう自分を落ち着かせ、ゲームを再開した。
高速道路に入り30分ほどが経っただろうか、私の尿意もだいぶ増してきて、我慢するのがきつくなってきた。私はゲームを中断し、お母さんの肩を軽く2回たたく。
「お母さん、おしっこしたくなっちゃった。おむつちょうだい」
私はお母さんの耳元で、千香には聞こえないように、小さな声で言った。
するとお母さんは驚いた顔で私の方を見る。
「持ってきてないよ。だって去年の旅行の時に、おむつ恥ずかしいからもう使わないって言って、結局おもらしもしなかったから、いらないかと思って」
そうだった。私がおむつを日常的に使っていたのは中学三年生までで、それからは私の心の中で、おむつに対する羞恥心が生まれてきたせいで、高校生になると同時にやめたのだ。
もう私には、次のサービスエリアまで我慢するしかおもらしを回避する方法が、なくなったのだ。
「お父さん、次のサービスエリアまであとどれくらい?」
「あと20分ぐらいでつくと思うよ」
20分、その時間はかなりのグレーゾーンだった。何度も限界おもらしをしている私には、あとどれくらい我慢できるかが大体でわかる。
私は股間に両手を挟み、尿道付近をスカートの上から強く抑える。
5分がたった。私の息遣いがとても荒くなり、お母さんがそれに気が付く。
「里穂、大丈夫?」
お母さんの優しい声が耳元で聞こえる。しかし、私は唇をかみしめたまま、何も反応できない。
”ジョロッ”
少しおしっこが漏れてしまい、ショーツが私のおしっこで濡れていく。
私は一度、前押さえしている手をはなし、スカートの様子を見る。
前押さえをしていたせいか、スカートにまでもおしっこの小さいしみができていた。
「え、ちびっちゃったの? 我慢できる?」
お母さんに、そのスカートにできた小さな円を見られてしまい、また耳元で尋ねられる。
おもらし後の服や、水たまりを見られるのには慣れたが、している最中や、それまでの過程を見られるのは恥ずかしい。私はかすかに頬を赤らめた。
さらに5分がたった。我慢に我慢を重ね、私の体は時々震えていた。
「もう、駄目かもしれない」
私は隣にいるお母さんにこっそり告白した。すると、お母さんは私の前押さえしている両手に左手をそっと乗せた。私はそれだけでかすかに尿意が引いた気がした。
「あと7分ぐらいでつくから頑張って」
普通に計算すれば残りは10分のはずだったが、私の危機を察知したお父さんが、少し車のスピードを速めたらしい。
さらに5分がたった。とうとうサービスエリアが見えてきて、私には少しの希望が見えてくる。
お父さんがサービスエリアの方にウィンカーを出した。
”ガタッ”
私のおしっこを間に合わせるために、早いスピードで走っていたせいか、車がスピードハンプを通り大きく振動する。
その振動が私の膀胱をとても圧迫する。
「だ、だめぇぇ」
私の口から小さく声が漏れる。その声を聞き取ったお母さんが私の方を見る。
私のおしっこがスピードハンプの振動を機に一気に膀胱からあふれ出る。
黄色いおしっこはどんどんと私の前押さえしている部分を濡らしていく。私の両手の中でおしっこがうずまき、両手がどんどんとおしっこで濡れていくがそんなことは気にしていられなかった。
そして、座っておもらしをしているせいで太ももよりも先にお尻が、おしっこで包まれていく。
私の重みで座席のくぼんでいる部分に、黄色いおしっこが吸収されずにたまっている。
とうとう、おしっこはそのくぼみも超えてあふれ出し、座席の際から滝のように流れていく。
その間もお父さんは運転を続け、サービスエリアの駐車場に車を止めた。
するとお母さんが突然私の下半身にブランケットをかぶせた。この時私は混乱した。
こんなおもらししている人にブランケットをかぶせれば、間違いなくブランケットまで汚れてしまう。なぜ私の下半身にブランケットをかぶせたかは、すぐには理解できなかった。
「お姉ちゃん! サービスエリア着いたよ!」
突然千香が助手席の背もたれから乗り出して、私にしゃべりかける。
見られちゃう。私がおもらししている姿が見られて、千香に幻滅されてしまう。
私は、”お姉ちゃんがおもらししてる”といわれるのをとうとう覚悟した。
しかし、千香は私の方を見たまま何も言わないし、表情もニコニコしたままだ。
私はそこでやっとお母さんが私の下半身にブランケットをかぶせた理由を理解した。
こころの中で私はお母さんになんどもありがとうという。
「うん。サービスエリアついたね」
私は千香に反応を返すが、今もブランケットの中ではおしっこの滝が流れ続けている。
「お姉ちゃん、一緒に行こ!」
「う、うん」
私はおしっこを出しながら応答しているせいで、少し曖昧な反応しかできなくなっている。
徐々におしっこの勢いが収まり、滝の流れも穏やかになってくると同時に、私の受け答えもちゃんとしたものに戻っていく。
「ごめんね、ちょっとお父さんと先に行っててくれないかな?」
「そうなの? わかった!」
千香が一瞬曇った顔をしたせいで私は少し不安にもなったが、そのすぐ後に輝いた笑顔を見せてくれたので私は安心した。
千香がお父さんと一緒に先に車を降りた後、私はブランケットを取った。
スカートはもちろん、座席も車内シートも、ブランケットまでもが私のおしっこで濡れている。惜しかったのに、あとちょっとのところで我慢できなかったなんて……
私はギリギリだったせいか、いつものおもらしよりとても悔しくなり、私の目には悔し涙が溜まっていく。するとお母さんが私のその涙に気が付き、私に声をかける。
「惜しかったね。でも里穂はよく頑張ったよ。えらいえらい」
お母さんはそう言いながら、私の頭を優しくなでてくれる。
「私、もう頭をなでられるような子供じゃないから……」
私はもう子供でないことを否定したかったが、おもらしという子供っぽい失態をしてしまい何も言えない。私は失敗していたことにさらに悔しくなり、とうとう私の目にたまっていた涙は流れ出した。
すると、お母さんが私の頭を抱き寄せる。私の頬にはお母さんの胸があたり、遠い昔に置いてきてしまった柔らかさとぬくもりを感じる。
とうとう、私は抑えていたものをこらえきれなくなり、お母さんの胸に顔をうずくめたまま声をだして泣き出してしまった。
「うわあああああん……」
車内には私の幼い泣き声が響いていた。そんな私の背中を、お母さんが無言でさすってくれている。私はその時だけは赤ちゃんに戻るつもりで、お母さんのぬくもりと優しい匂い、そして心臓の鼓動を聞きながら、落ち着くまで存分に泣くことにした。