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22話 おしっこ我慢できないお姉ちゃんでごめんね

最終話です!

 カッカッと音を立てながら私たちは千香と春香ちゃんが待つ方へと向かう。

そこにはさっきまでの暗い表情とは違う千香と、春香ちゃんが立っていた。

千香はオレンジの、春香ちゃんはピンク色の浴衣を着ていて、とても可愛らしい。

ちなみに私は黄色、麻衣ちゃんは青色だった。


 私たちは浴衣が多少着崩れてしまうかもしれないが、少し小走りで花火大会が行われる会場まで向かう。会場は学校から数分歩いたところにある河川敷だった。

点々としか街灯がない暗がりの中、私たちは着々と河川敷まで走る。

河川敷に近づくとともに、少し騒がしい音が聞こえてくるようになってきた。


 「もうすぐだね!」

若干麻衣ちゃんが息を切らしながら楽しそうにそう言った。

「うん! 麻衣ちゃん、私すっごく楽しい!」

「私もだよ!」

徐々に音だけでなく、祭りならではの暖色系の光も見えてくるようになった。


 とうとう私たちはたくさんの人混みの中に紛れ込んだ。

私たちははぐれないように、四人でギュッと手をつなぎ合わせる。

さっきまでは学生たちが屋台をしていたが、今度は町の大人たちがさまざまな屋台を開いていた。さっきとはまた違ったいい匂いが私たちの鼻をくすぐる。


 「りんご飴食べたい!」

千香が、そう言いながら私の浴衣を引っ張る。

私たちは千香の引っ張る手に導かれてりんご飴の屋台まで向かった。

屋台につくとりんご飴の甘そうな匂いが私の食欲をも刺激する。


 おいしそうにりんご飴を食べる千香を連れながら私たちは再び人混みの中を歩いた。

すると突然、ピピッと誰かの腕時計が鳴る音が聞こえる。おそらく切の良い時間になったのだろう。それとともに星が輝く夜空に一筋の光が昇って行く。

ひゅーっと音を立てながら昇っていったそれはある程度の高さで止まり、大きくはじけて一輪の花を咲かせる。


 「わぁ! 綺麗!」

私の口から思わずそんな言葉が出てきた。

「ほんとだね! 私、里穂ちゃんと出会えて本当に良かったと思ってるの!」

麻衣ちゃんが花火の破裂音にかき消されぬように少し大きな声でそんなことを伝えてくれる。そうだ、私も麻衣ちゃんと出会えて本当に良かったと思ってる。

だって、麻衣ちゃんと出会う前は私みたいにおもらししちゃう高校生なんていないと思ってた。そして、麻衣ちゃんと出会えたことで、今、こんなに楽しい思いができる。


 たくさんの花が色とりどりに咲いては散って落ちていく。

千香と春香ちゃんも、大きな花火を前に大きな笑顔を咲かせている。

私たちが花火を見始めて10分が経った頃だった。

突然、猛烈な尿意が私の膀胱を刺激する。私は思わず花火から目をそらし、浴衣の上から股間を抑える。私が我慢に苦しんでいると誰かが私の浴衣の袖を二回引っ張った。


 はじめは千香かと思ったが、その手をたどっていくと、正体は麻衣ちゃんだった。

「里穂ちゃん、私、おしっこしたい……」

里穂ちゃんが少し恥ずかしそうにそんな告白をする。

「う、うん。私もおしっこしたい。一緒に行こっ」

私も頬を赤らめながらそう言った。


 「ねえ千香、春香ちゃん、私と麻衣ちゃんはおトイレ行きたいの。でも二人をここに置いていくわけにはいかないから、一緒についてきてくれる?」

「うん! お姉ちゃんと一緒ならどこでも行く!」

そ、そういうことは聞いてないんだけど……

千香は賛成、そして春香ちゃんもこくりこくりと頷いていた。


 おしっこを我慢しているせいで、少し前かがみの姿勢で、ゆっくりとしか前に進めない。その上トイレまでの道にはたくさんの人が並んでいてなかなかたどり着けそうにない。そして、未だに咲き続ける数々の花火が大きな音を出し、私たちの膀胱を刺激する。


 おしっこを漏らしてしまうのではないかという緊張により汗ばむ手を私と麻衣ちゃんはつなぎ合わせる。

さすがに片手はおしっこを我慢するために必要だったので私たちは浴衣の袖をそれぞれの妹たちに握らせた。


 おしっこを漏らさないように注意しながらとうとう私たちは花火会場の仮設トイレにたどり着いた。しかし、そこには長く伸びる長蛇の列ができている。

「な、なんで…… まだ花火は終わってないのに……」

「り、里穂ちゃん。こっち!」

麻衣ちゃんが私の手を引っ張り歩いていく先は屋台が立ち並ぶ通路からは少し離れた場所だった。舗装されていないただの土の地面。


 「ま、麻衣ちゃん?」

「私、もう我慢できないかも……」

麻衣ちゃんはとてもつらそうな顔をしていた。

正直、私だってとてもつらい。もう何度も何度もちびってしまっていてパンツはもうぐしょぐしょだ。

「里穂ちゃん。ごめんね」


 その言葉のすぐにぴちゃぴちゃと水の音が聞こえてきた。その音は私の尿意を増加させていく。

「ま、麻衣ちゃん、私も……」

じゅわっと私のパンツの中が温かくなる。おしっこがショーツの中で渦巻き、生地を超えて地面へと落ちていく。二つになった水音は花火の破裂音と破裂音の間だけ私たちの耳に届く。足元にできた水たまりには夜空に咲く花火が映って見えた。


 私は麻衣ちゃんと手を握りながらもおもらしをし続ける。

ふと顔を上げると、千香も春香ちゃんも私たちのことをじっと見ていた。

だめ、これでもう私は千香のお姉ちゃんでいられなくなってしまうんだ。

いやだ。そんなの嫌だ。でも私は高校生のお姉さんなのにも関わらず妹の前でおもらししてしまった。


 しばらくしておしっこは止まり、あとは浴衣にしみこんだおしっこが水たまりへぽたぽたと落ちていくだけになった。

「千香、お姉ちゃんおもらししちゃった…… こんなお姉ちゃん嫌いだよね?」

あたりがシンとして花火の音すら小さくなった。




 バン! という大きな破裂音とともに大きな赤い花火が広がった。

それと同時に千香が私の目をじっと見て言った。

「そんなことない‼ お姉ちゃんは何があってもお姉ちゃんだし、私は優しいお姉ちゃんが好きなの!」

ドカンと再び大きな花火が打ちあがる。

その花火の光のせいか、私の心をまとっていた不安が取れたせいかわからないが、私の視界はぱっと明るく輝いた。


 これからも私はおもらししてしまって千香やいろんな人に迷惑をかけてしまうかもしれない。だけど、私たちの友情はきっと変わらないような気がした。

私はぎゅっと麻衣ちゃんの手を再び握りしめる。

その瞬間花火の目玉である滝のように火花が落ちるナイアガラ花火が打ちあがった。

その瞬間あたりは明るくなる。私は麻衣ちゃんんと目を合わせてから千香や春香ちゃんの方へ視線を向け、声を合わせて言った。




「「おしっこ我慢できないお姉ちゃんでごめんね!!」」









読んでいただきありがとうございました!

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